23:生命力が爆発
慣れないドレス姿で森の中を走った私は、木の根につまずいてしまった。でも転びそうになる私の体は、ランスが受け止めてくれた。
甲冑を着ているので、抱きとめられた瞬間は「硬い!」だったが。
抱きとめたランスは、私のことをぎゅっと抱きしめた。
ガントレットをつけていない彼の手を背中に感じていたが、手以外は甲冑で硬いので、あまりぎゅうぎゅうされたくない……と私は思っていたが。
ランスは私の髪に顔を埋めている。
あ、もしかして、またジョンという飼い犬のことを思い出しているのかしら?
昨晩も私を抱き寄せた時、髪に顔を埋めていた。
そうね、眩しいほどランスは輝いているから、嬉しくて生命力が全開になっている。ジョンという飼い犬が、よっぽど好きだったのね。でも動物を愛する人は、優しい人だから。ランスらしいと思う。
今は亡き飼い犬を思い、私を抱きしめ、髪に顔を埋めているランスをそのままにしていると。
「まあ、なんてお熱い!」「おい、でもあれ、聖騎士では?」
男女の声に、ランスと私は、慌てて互いの体を離すことになる。
後ろからやってきた貴族のカップルらしき二人に聞こえるよう、私は大声で状況を伝えた。
「ランス様、転びそうになったところを助けてくださり、ありがとうございます! もう大怪我をするのではと怖くなり、つい強く抱きつき、離さないような真似をしてしまい、本当に失礼しました!」「そんな、アリー様」
「本当に、離れようとするランス様を引き留めてしまい、申し訳ありませんでしたわ!」
すると丁度横を通り過ぎながら「なんだ、転んだのを助けただけか」「ふふ。あんなに素敵な方ですもの。離れがたくなってしまったのね」と囁く二人の声が聞こえ、安堵する。
「アリー様」
「は、はいっ」
ランスの顔を見ようとして、眩しくて直視できない。
目を閉じたまま、彼の話を聞くことになる。
「……後ろから来ていたカップルに誤解されないよう、アリー様が抱きついて離れないことにしてくれたのですね……」
「! 実際そうですから。聖騎士であるランス様から、女性を抱きしめて離さないなんて、ありませんからね!」
もしかしたらまだ前後に誰かいるかもしれない。だから必死にそう言うと……。
「アリー様、あなたは……」
なんだかランスが震えるような声を出している。
薄目を開けるが、やはりランスが発する生命力の光が眩しくて、目は開けられない。
「アリー様、そんなに眩しいですか?」「はい」
しばし沈黙があり、その間、ランスが深呼吸している様子が伝わってくる。
「これで、どうでしょうか?」
ランスに促され、目を開けると。
一瞬、彼の美しい瞳と目が合った。
なんだか熱っぽく潤み、ドキッとした瞬間。
またも彼が光輝く。
「すみません! 本当に!」
なぜランスは謝るのかしら? 嬉しい感情がほとばしっているのでしょう。それは悪いことではないのにと思う。
その後、何度かランスは深呼吸を繰り返し、ようやくその輝きは収まった。
生命力が強いことで、魔物は撃退できる。でもその光が見えてしまう相手といると……苦労するわね、ランスは。
私もなんでもまた、ランスの生命力が光る瞬間が見えてしまうのかしら。
申し訳ないと思いつつ、ようやくランスが落ち着くと。
今度は走ることもなく、きっちりエスコートしてもらい、小川へ向かった。
辿り着いた小川には。
ランスと私以外にも、沢山の貴族がいた。
貴族の……カップルが多い。
小川のほとりに布を敷き、その清流を眺めている。
「我々も少し、小川を眺めますか?」
ランスの提案に頷くと、彼はほとりの様子を見て、左側の人がいない場所を見つけ、自身のマントをはずす。
ふわりとマントを草の上に広げる。そこは丁度後ろの大木にもたれることもできるようになっていた。
つまり、ベストポジションだ。
「アリー様、どうぞお座りください」
「ありがとうございます」
順番に腰をおろし、木の幹にもたれる。
落ち着くと、小川が流れる音、風が吹いて葉のこすれあう音、鳥の声など様々な音が聞こえ、森の中に身を置いていることを実感する。
小川は陽射しを受けキラキラと輝いており、その美しさは、いつまでも眺めていることができると思えた。
「アリー様、先ほどはありがとうございました。思わずあなたを抱きしめてしまったのは、自分だったのに。自分が聖騎士であることから、周りに誤解されないよう、庇ってくださったのですよね」
「ランス様、もう、それは気にしないでください。そもそも私が木の根につまずかなければよかったのですから。それにランス様が、ジョンを大好きなこともよく分かりましたから」
「え、ジョン?」
キョトンとした顔をするランスは、本当に可愛らしい。美貌の顔が、思いがけない表情をするのを何度か見ているけれど……。たまらない!
「昨晩もそうですが、さっきも。ランス様は私の髪に顔を埋め、光り輝いていました。生命力は、嬉しい気持ちが高まると、光るのですよね? 私の髪にジョンのことを思い出し、嬉しくて生命力が爆発していたと思うので」
そう私が伝えると、なぜかランスは顔を真っ赤にし、そして……またキラキラと輝いた。
やっぱりジョンが大好きなのね。
微笑ましい気持ちになった。
お読みいただき、ありがとうございます!
サクッと読める新作もよろしくお願いいたしますー。
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