↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女ではありませんでしたが、聖騎士様に溺愛されそうです  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/142

22:叶わない夢

 昼食を終えたランスは、私にこんな提案をしてくれた。


「先程、水を汲みに行った時に聞いたのですが、この森の先を少し進むと、小川があるそうです。清流で魚もいて、夏はここに寄った際、水遊びする方もいるそうですよ。まだ時間もありますから、見に行きますか?」


「そうですね。せっかくなので」


「では」


 ランスがその場明るくなるような笑顔と共に、自身の手を差し出してくれる。風に彼のサラサラのホワイトブロンドの髪が揺れた。思わずドキッとしながら、彼の手に自分の手をのせる。


 当たり前のようにランスが私をエスコートして歩き出すと、こちらを遠巻きにする令嬢の囁き声が聞こえてくる。


「見てください。聖騎士様ですわ。噂通り、お美しいですわね」

「ええ。この辺りでは、あまりにお見かけしませんが、麗しいお姿ですわ」

「あれで聖女にすべてを捧げるなんて……勿体ないと思いません?」

「「「本当に!」」」


 令嬢達の言葉を聞いた私は。

 とても励まされることになる。

 だって。

 村の修道院に私を送り届けたら。

 私とランスは、二度と会うことはないだろう。

 そもそも私とランスは、普通に生活していては出会うことはなかった。

 今回偶然にも彼と出会うことになったが、これはもう奇跡だ。


 ランスとさよならをした後。

 何度か手紙のやり取りぐらいはするだろう。

 でもそれだけ。


 もしランスが聖騎士ではなく、ただの伯爵家の次男だったら。


「アリー様。自分にも婚約者ができました。半年後に式を挙げます」


 そんな手紙を受け取ったかもしれないのだ。

 それは……おめでとうなのだろうけど。

 なぜかそのような手紙は受け取りたくない……と思ってしまう。


 でもこれは不要な心配。


 だってランスは聖騎士なのだ。聖女にその身を捧げている。結婚などしない。


 いや、もしかするともっと歳をとったら、聖騎士を止め、ただの騎士となり、結婚もするかもしれない。でも少なくとも私と手紙の交換をするような間に婚約者ができたり、結婚をしたりすることはないだろう。


「アリー様、なんだか嬉しそうですね。小川が楽しみですか?」


「あ、え、は、はいっ。そうですね」


 できれば。

 ランスは……誰のものにもなってほしくない。

 ……後で沢山、神にごめんなさいをしないといけないと思う。

 でも……。

 ランスには私だけの騎士でいてほしい……なんて叶わない夢を見てしまう。


 ダメよね、こんな風に執着をしては。

 ただ、どうしても。

 これまでランスのような男性と接したことがなかったから。

 彼が私に恭しく接する姿に、何かを期待し、求めてしまい……。


 これでは修道女失格だ。

 聖女になれなかったのも当然ね。


 そう思うものの。

 修道院に迎えに来てくれた大勢の聖騎士に対し、今みたいな感情を持ったのかというと……。


 それは……なかった。

 王都までの馬車の中で、一緒だった聖騎士は皆、本当に素敵な容姿をしていたし、ランスと同じように恭しく接してくれたはずなのに。


 なぜ、ランスだけにこんなに気持ちになるのかしら?


「アリー様、見てください。小川が見えてきました。確かに美しいですね」


 ランスが視線を向ける方角を見て、ため息が漏れる。


「なんて透明度が高いのかしら! 川床が見えているのでは?」


 思わず駆けだしそうになり、それを押さえる。それはエスコートしているランスは当然気づいて、楽しそうにクスクスと笑っていた。しかも光っているわ!


「……すみません。こんなに素敵なドレスを着ているのに。駆け出そうとするなんて」


「失礼しました。アリー様。自分が笑ったのは、決してあなたを馬鹿にしているわけではありませんよ。走りたいのを我慢する時のアリー様の表情が、とても可愛らしくて」


 可愛らしい……!


 たった一言、褒められた……褒められたのよね?

 とにかく嬉しくなり、頬が緩む。


「……少し、走ってみますか?」

「えっ……」

「実は自分も早く、あの小川のそばに行きたいので」

「!!」


 まさかランスがこんな提案をしてくれるなんて。もう全力で「はいっ」と返事をしてしまう。すると「では」と言ったランスは、エスコートしていた手を……。


 ランスと私は手をつないで、緩い速度ながら走り出していた。


 全速力で走っているわけではないのに。

 心臓がものすごく反応している。


 ただランスも、こうやって走っていることを、喜んでくれているようだ。とてもキラキラと輝いている。


 なんだかランスは、分かりやすくていいな。


 彼が光るのを見ると、喜んでいるのだと分かるから。


 キラキラしたランスと手をつないで走るのは、まさに夢のような時間。


 だがしかし!


 ここは森の中。さらに慣れないドレスを着ている。パーク男爵の屋敷の廊下も小走りしたが、あの時は平坦な道だった。でもここは違う。つまり私は……木の根につまずいた。


「きゃあ!」「アリー様」


 倒れそうになる私を、ランスが抱きとめてくれた。

 突然の出来事だったのに。

 ランスは見事に私を受け止め、そして眩しいほど輝く。


 つまり転びそうになった私を無事キャッチできて、喜んでくれている――と解釈した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページやタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』は
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。