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そんなことよりカレーが食べたい。  作者: すけさん
後日談 あなたに捧ぐ珈琲
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 後日談

おまけが本編!

そのかぐわしい香りの琥珀色の液体を前に、タリアが気遣わげに浩二の顔を覗き込んでくる。

「残念でしたね、コージ様。本当はカナ様にこれを飲んでいただきたかったのでしょう?」


だが浩二は笑顔でこれを否定した。

「まあ、佳奈に飲ませたいという気持ちもないではないが、なにより異世界の皆に一番にこれを味わってほしかったのだ。

だからみんな、どうか飲んでみてくれ。これがコーヒーだ。地球において多くの人々の心を魅了し惑わせた、悪魔の液体なのだ。」


集まった一同はめいめいに手元のカップに注がれた液体を口に運ぶ。



さて、コーヒーはもともと浩二が佳奈へ贈るサプライズとしてずいぶん以前から準備を進めていた飲み物である。

学生時代、佳奈に密かに思いを寄せていた浩二は、彼女が父親の影響でコーヒーをこよなく愛しているという話を小耳にはさんでいたのだ。

なればぜひとも彼女にこれを贈りたいと喜び勇んでこれに取り掛かったのだが、残念ながらタイムリミットまでには間に合わなかった。

彼女たちが異世界に帰る頃には計画自体が頓挫しかかっており、それから十年以上も経って今頃ようやくまともに飲める液体へとあいなるに至ったのだ。



ここまで本当に長かった。

経緯について簡単に掻い摘んで説明しよう。


まず一番に、コーヒーノキ自体は正直それほど苦労なく見つけることが出来るだろうと、浩二は最初からあまり心配していなかった。


コーヒーノキはそれなりに温暖な地域であればどこでもある程度は育つので、例えば日本の雪国でも部屋の中で鉢植えにしていたコーヒーノキが、何年か後にちゃんと真っ赤なコーヒーチェリーを実らせたなんて話はザラにある。


だから女神だかなんだかが適当に苗木を世界にばらまいたとしても、いずれかの地域で実を結び自生できる可能性は高いと予測していた。


強いて言うならば品種に若干の不安があった。味に劣るロブスタ種はとにかく遠慮したい。リベリカ種なんて出てきたらそれはそれで奇跡だが、これも出来れば味的には遠慮したい。

だがアラビカ種であれば品種は何でもよいのだ。ティピカやブルボン、カトゥーラ、カトゥアイ。別に何でもいい。それこそゲイシャでも何でも構わない。アラビカ種であれば多少評価の低い品種であってもどうとでもなる。

コーヒーノキはさび病という恐ろしい病気があるから、これに弱いアラビカ種は全滅の憂き目にあっていてもおかしくはない。けれどもそもそもさび病自体が地球での貿易が極度に発展し、各地の風土病が世界にばらまかれやすくなった条件が整って世界に蔓延したのだ。同じような理由でワインの元となるブドウもフィロキセラが流行るようになったのはここ100年の話である。

人を含めた物資の移動が著しく制限される異世界では、例え一部地域でさび病によりコーヒーが全滅しても他の地域のコーヒーノキは生存するだろうから、浩二はそんなに心配はしていなかった。


果たしてコーヒーノキは浩二がまだ都市国家のカレー屋を営んでいた時分にあっさりと見つかった。


浩二のもとに転がり込んできたのは大きなコーヒーチェリーの粒をつける立派なコーヒーノキであった。

これはもしやマラゴジッペ? いやもしかしたらパカマラやもしれぬ! 浩二は思わぬ掘り出し物に狂喜した。


だがコーヒーの栽培はここからが本番である。


というのも、コーヒーノキ自体は確かにどこでも育つものの、旨いコーヒーを育てる環境となると、途端に土地と季候を選ぶのである!


何せ条件の悪い土地で育てたコーヒーは、あの豊潤な香りや深遠な味わいがまるでなく、スカスカの芋の煮汁のような味となるのである。


これについては浩二が実際に試してみたんだから間違いない。

先に仕入れた苗をある程度条件を揃えて生育させて摘み取ったコーヒー豆は、想像通りの安っぽいイモのような味しかしなかった。これでは駄目だ!


まあ、インスタントコーヒーばかりに慣れ親しんだものであればそれでも満足してしまうのだろうが、本物のコーヒーの味を知ってしまっている浩二はプライドがこれを許さなかった。


本気でコーヒーノキを育てよう! そこで土地探しから始まったのである。


コーヒーの育成にはコーヒーベルトと呼ばれる特別な地帯が必要とされる。赤道から数えて南北に緯度が25度以内。これを超えるともうコーヒーは旨い味に育たない。


例えば日本の小笠原諸島などでコーヒーを栽培されている方がいるが、これが緯度的にギリギリである。これを越えたコーヒー豆は途端に味が目に見えて劣化する。


年間を通じての気温の問題、更には日照時間の問題など、緯度とコーヒー豆の関係は様々な原因が複雑に絡み合っていると考えられ、現在でもその詳細は解明されていない。

だが少なくともコーヒー豆の栽培地域は赤道付近に限られる


そこで異世界での栽培である。地球でさえ栽培地域を探すのに手間取るコーヒーであるが、異世界となればそもそもの適合条件を逸脱している可能性すらある。


そもそも異世界において赤道はどこなのか?

異世界は地球と同じくらいの大きさの球体なのか?

地球と同じくらいの速度で自転、公転をしているのか?

地球と同じように地軸の傾きはあるのか?

ちゃんと必要分の日照条件は確保できるのか?


その異世界は、どこまで地球と近似なのか?


この問題を考えるに、ある笑えないエピソードがある。ある転移者が連れ去られた異世界は、なんと平面の上に地表が乗る平面世界だったのだ。そしてこの地に昇る太陽は無限遠の彼方の先にある光であって、地軸の差による地域の日照変化など一切なかったそうだ。


こ憎たらしい事にこの世界は春夏秋冬だけはいっちょ前にあり、毎日ビミョーに日の昇る位置や時間がずれ、一年を通じて変化していくのでてっきり球状世界であるとずっと勘違いしていたそうだ。


この誤解が解けたのは、どの土地に行っても日の入りや日の出の時刻が変わらず、時差というものが一切存在しない事に気付いたからだそうだ。

転移魔法を覚えうんと離れたどの土地に移動しても、常に同じ位置に太陽があるのを見てこの転移者は愕然としたそうだ。


ちなみにこの転移者は極めて熱心なコーヒー愛好家であった。

どの土地でコーヒーノキを育てても味がいまいちであるのを苦にし、さんざん調べた結果事実を知った彼は、なんとしても地球に戻ってやると固い決意をし、それまで適当にやっていた邪神討伐クエストを僅か数年で完遂したらしい。



まあそんなわけで、せっかく見つけたコーヒーノキがあっても、地球クオリティの素晴らしいコーヒー豆を育てるには浩二たちが呼ばれたこの異世界がどこまで地球に近しいかが重要になってくる。


幸いにして比較的早い段階で地球にかなり近しいサイズの球状世界であることが知れ、おおよその赤道も見当がついた浩二は、さっそく本格的な栽培に取り掛かる。

ちなみに浩二が貴族になる際の国の選定条件に赤道付近かどうかが入っていたことは今さら明かされる当時の秘密であった。


さて、コーヒーの栽培はただ赤道に近ければよいというわけでもない。

なんとコーヒーノキというものは、標高が低いと味が落ちるという奇妙な特性があるのだ。おまけにある程度雨がたくさん降らねばうまく育たないし、更にはある程度の風もないと美味しくならないのだ。


むろんコーヒー大国のブラジルなどでは、標高の低い平地でもたくさんのコーヒーを栽培している。だが平地産のコーヒー豆はどうしても品質が下がり、いくら作ってもとびきりのおいしさにはならない。


質の高いコーヒー豆を作りたければ最低でも標高1000m以上、赤道直下が狙えるなら2000m前後の高地に持ち込まねばならないのだ。コーヒーのブランドがブルーマウンテンだのエメラルドマウンテンだのキリマンジャロだのガヨ山だの、山の名前が多いのは高地で作っているというトレードマークのようなものなのだ。


赤道に近く日照時間があるうえにある程度雨も降り山あいで風もあるような特別な土地は地球においてもそう数は多くない。

いわんや異世界であればなおのこと、条件を満たす土地を探すのは困難を伴う。


もちろん、人海戦術であちこちを虱つぶしで当たればお目当ての土地はすぐに見つかるだろう。

だが、地球でコーヒー栽培が盛んになる背景にあった植民地支配の時代、当時の各国はこぞってあらゆる土地を占有し、様々な穀物や植物の栽培を試した過去があるからこそ、例えばスマトラ半島でマンデリンという素晴らしいコーヒーが栽培される経緯となったりしたのだ。

大勢の人間が参加してあらゆる土地で試す土壌があってこそ、コーヒーに適した土地は世界にいくつも発見されたのだ。


それが今回は浩二一人が自分の力だけで土地を選定せねばならない。そして残念なことに、せっかく苦労して手に入れたペアル王国の浩二の伯爵領は、それなりの高地ではあったものの、コーヒーの栽培に適すほどの雨量が確保できなかったのである。


これで「佳奈に美味しいコーヒーを飲ませたい!」という浩二の密かな野望はくじかれてしまった。

浩二としてはさぞかし無念な事であった。


浩二は泣く泣くコーヒー栽培を諦め、佳奈は浩二のコーヒーの味を知らぬまま地球へと帰っていった。



風向きが変わったのは浩二が世界を手に入れてしまった後による。

かつてのコーヒー栽培に全面的に協力してくれていたタリアが「そう言えば」と成美の話を振ったのだ。


「以前コージ様がどうしても試したいと苦労されたカーヒ豆(?)なる飲料用の植物があったのですが、今なら世界中をコージ様の自由に出来ますから、理想の栽培地域もすぐに見つかるかもしれませんね。」


これに飛び上がらんばかりに喜んだのが成美であった。成美も地球にいた頃からのコーヒー好きであったのだ。


成美は寝る間も惜しんであっという間に調査隊を手配して、人族地域に数か所、魔王領地域に数か所の栽培地域を見つけてきてしまったのだ。

ついでにいくつか新しい品種を見つけてきてくれたのも有難い限り。一つは恐らくブルボン(チェリーの色からもしかしてピンクブルボンかも!)で、もう一つは残念ながらロブスタであったのだが。


ここでいよいよ本格的なコーヒー栽培が始まり、いよいよ最後の難関が浩二たちの前に立ちふさがった。



昨今、地球のコーヒー生産には2050年問題と呼ばれる重要な問題が取り沙汰されている。

これは地球温暖化により気候が変動する兼ね合いから、現在のコーヒー栽培地の雨量の低下や湿度の上昇によりまともにコーヒーが育たなくなる恐れがあるというものである。

高品質のコーヒーを育てるには年間2000mm前後の雨量が必要だし、湿度が高いとさび病のリスクが一挙に高まる。これらの危険が顕在化し、旨いコーヒーが損なわれてしまうかもしれないという問題なのだ。

つまり今我々が享受しているスペシャルティコーヒーなどといった高級豆は、あと30年もしないうちにまともに育たず飲めなくなる可能性があるのだ。


まったく同じ理由から、現在のこの異世界の気候条件についても考えなければならないだろう。別に石油文化が花開かなくとも、条件次第では異世界だっていつでも温暖化しうるものなのだから。

いまこの世界は氷河期なのか? 温暖化は進んでいるのか? 優れた味のコーヒー栽培に適した状態なのかどうか?

この条件があっていなければ、いくら育ててもコーヒーは美味しくならないのである。


それこそ最初に断念したナキニ領の雨量が足りなかったように、温暖期の世界では赤道付近の土地の条件がそもそもの本質的に足りていないかもしれないのである。


こればかりは運である。現在の異世界がコーヒー栽培に対して適度によい寒冷期であるかどうかはそれこそ神のみぞ知る。

まさかコーヒー一つのために適当な火山でも大噴火させて強制的に世界を氷河期にするわけにもいくまい。

いや、真のコーヒー狂は2050年問題のためならそこまで平然とするのかもしれないが、少なくとも浩二にそこまでの気概はない。

成美がちょっと怪しいのだが、おかしな動きを見せたら全力で彼女を止める所存である。


神に祈るような気持ちで始めた栽培は、果たして大成功した。


コーヒーノキが苗から成長して実を結ぶに至るまで5~8年ほどかかる。浩二たちが長い年月を固唾をのんで見守る中、美しいコーヒーチェリーを結実させたコーヒーノキは輝いていた。


こうして異世界で初めてのスペシャルティ・コーヒー(恐らくパカマラ)は浩二の手により焙煎され、冒頭の場面へと至るのである。



外見年齢が30位になり、すっかり大人びた雰囲気になったありすは、騎士団の団員を務める夫と二人で仲良く並んでおり、揃ってカップを口に運び驚いていた。

「すごい! コーヒーだ! しかもとってもおいしい! すごい!」

「良かったね、アリス。君がこんなにはしゃぐ様子を見るのは久々で、ぼくもとっても嬉しいよ。イタミ卿には後で感謝の御挨拶をしないとね。」

その微笑ましい様子に嬉しくなる浩二。


更にはその隣。

魔王の一粒種、リシャーナ皇女殿下は種族的に成長が遅く、まだ子供らしい容姿のままだったが、最近はめっきり女の子らしくなってきて男装をしてももう性別を間違えられることはないだろう。

そんな彼女の為に浩二は特別に、彼女の分だけミルクと蜂蜜たっぷりのカフェオレに仕立ててみせたのだが、カップを可愛らしい両手で抑え、恐る恐る口に運んでから、「ほわーっ」と可愛い声で小さく喜びの声を上げてくれた。

その様子をリアルタイムで目撃してしまった浩二は可愛らしさに思わず目を細めてしまうのだが、そこでぱっと彼女と目が合った。

すると殿下は途端に顔を真っ赤にし、その場でもじもじと目を伏せてしまった。

脇に控えていたリリムが慌てた様子で「いかがなさいました!」と寄っていくが、「何でもない。」と俯きながらもこれを拒絶するリシャーナ殿下。

どうもジロジロ眺めていたのが失礼だったなと浩二は反省し、他のものへと目を移す。


入口の方で、最近ふとしたきっかけで縁が戻ったミモザが「ふーん」とか「へーっ」とかそれほどでもない声を上げているのが目に入る。

浩二はミモザに声を掛ける。

「毎日飲んでいるうちに病みつきになるぞ。特にこのコーヒーというやつは、お前の好きなタバコにもとても合うのだ。喫煙の際についでに口に含むようにでもしていれば病みつきになること請け合いだ。」

「はアーっ?」怪訝な顔をするミモザ。それでもとにかく試してみようと思ったか、懐にあるキセルに手を伸ばそうとするとするのを浩二が見咎めた。「悪いが吸うなら外にしてくれ! この集まりには妊婦もいるしタバコの苦手なものもいるんだ。」

「はーいはい。」ミモザはカップを片手に手をひらひらさせて外へと出ていった。

数分後、まんざらでもない顔のミモザが戻ってきた様子から、それなりに気に入ってくれたようだ。浩二はまたしても嬉しくなり思わずニヤついてしまう。


他にも「こいつはカレーの隠し味によさそうそうですぜ、オーナー!」などと相変わらずのチャナンであったり、「異世界の味はいつでも素晴らしいですぅ」などと大はしゃぎのペアル王国の末姫様、「コージはすごい!」と目をキラキラと輝かせるナリャ姫など、みなが大いに喜んでくれている様子に、浩二は嬉しくてたまらなくなってくる。



ひとしきり皆の様子を見て回って元の場所に戻ってくると、いたずらっぽい笑みを浮かべた成美が待ち構えていた。

成美もすっかり大人の女性になり、その美しさには更に磨きがかかっていたが、浩二を前にした彼女はいたずら好きの可愛らしい女の子へと大変身するのが、近頃の二人の当り前となっていた。

そして今みたいな企み顔の成美は大抵ろくでもない事を言い出すものなのだ。

「それで浩二くん? この高級豆のブランド名は決まったの?」

「ブランド名? なんだそれは。」

「せっかく異世界で初の特別なコーヒーってやつなんでしょ? それらしいブランド名を付けてあげましょうって話よ。」

「いや、別に要らないだろう? そんなもの。」

「あらそう? じゃあ私が勝手につけてしまうわね。この豆のブランドは「カ・ナ」よ。一人の男が愛する女性のために丹精をめて作り上げた愛の証。そんなサイドストーリーと共に売り出せば、きっと評判を呼んで高値で取引されることになるでしょう。

良かったわね。」ほら思った通り!


「やめてくれ……!」心底嫌そうに声を上げる浩二に対し、「ダメよ!」これに取り合わない成美。

それから成美は何やら真面目な顔になり、浩二へと何やら訴えかけてくる。

「ねえ? 浩二くん。浩二くんは忙しいから、どうせこのコーヒーについても事業は誰かに任せることになるでしょう? そうしたらこれは私がぜひ取りまとめたいと考えているの。

でもそれだけじゃないのよ? どうしても試してみたいことがあるの。これはどちらかというと、浩二くんのためを思ってのことなのよ。」


はあと一つため息を挟んで、浩二は成美に尋ねる。

「なんだそれは。何を試したいんだ。」


「それはね……。」


コーヒーというものが地球同様にこの世界に流行すれば、その元である今回の高級豆は歴史的価値も相まっていつまでも残り続ける公算は高い。


そしてそうなれば、このコーヒーは、来たるべき未来に地球からやってきたものの口に入る機会も当然出てくる。


そこでこのコーヒー豆にこんなキャッチコピーを用意する。


――異世界からやってきた男が地球に残したたった一人の最愛の女性のために作り上げたコーヒー。どうかあなたに資格があるなら、どうかこの豆を彼女に届けてやってほしい。 コージ・イタミ。


異世界転移者がこのエピソードを聞けば、恐らくかなりの確率で豆は地球に持ち帰られるのではないか。

そして一度持ち帰ってしまえば、異世界拉致被害者の会などを通じて本当に彼女の元に届けてくれるのではないか。


なに。チャンスとなる時間はたっぷりある。

ほとんどの場合、異世界の時間は地球よりうんと早くに回っているから、浩二たちがこの世を去った何百年もあとになっても地球の時間はそれほど進んでいない可能性は高い。

なればそれまでこのコーヒー豆と、コーヒーにまつわるエピソードさえ残っていればこれが生きた彼女のもとに辿りつく奇跡の目も出てくるというものだ。


これは成美の賭けだった。


そして成美の企みを聞いてしまった浩二は、彼女にこれを任せるしかなくなった。



こうして異世界初のスペシャルティ・コーヒー、カ・ナは数年後、各国に向けて大々的に売り出され、この世界にも多くのコーヒー愛好家を生み出すきっかけとなった。



どうか願わくば、この一杯のコーヒーが遠く離れた異界の地にいるあなたにも届かん事を。



本当はコーヒーで異世界ものをまるまる一本書きたかったんですが、カレー以上に思い入れが深い分、書くことへの恐怖の方がより強くて。

(知ってる人見たら嘘だーって怒り出すーっ!)


なのでこうしてカレー話のサイドストーリーとしてさらりとした感じで書くことにいたしました。

いやほんとはこれだけで1本独立して書きたいくらいなんですけど。


ポイントとしては、コーヒー豆は異世界でもすぐに手に入るかもしれないが、旨いコーヒーは恐らく早々簡単には手に入らない、最悪旨いコーヒーは異世界では育たない、というところです。

そして夢のない話で申し訳ないですが、条件の揃わない状態で適当に育てたコーヒー豆はドングリ炒って煮出したような、イモみたいな味になります。

まあそれをコーヒーって言い切っちゃえば間違いではないんですが。ロブスタベースのインスタントコーヒーよりはまあ、飲めるとは思うし……。

でもやっぱ、いやそれなんかちがくねと声を大にして私は言いたい。


コーヒーはワイン以上にテロワールの差(土地や気候などの差)が大きいと私は思うので、もし異世界でコーヒーネタをやりたいと考えている作者さんがいるなら、コーヒーが美味しくなるための栽培地域、栽培条件があるんだぜってポイントは是非ともご留意いただけると嬉しいなあと思います。

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