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最終話 僕とブルーダイヤ(彼目線)

 

 やっとだ。

 やっとソフィアをこの腕の中に抱くことができた。


 瞳の色がブルーだとかブラウンだとか、これはそんな単純な想いじゃない。


 三歳の時に彼女を見てから、僕はもうソフィアしか見えていないのだから。


  とあるパーティーで見た彼女は、家族と他の貴族に囲まれて、それは愛らしく笑っていた。


 可憐な彼女から目が離せなくなってそれからは社交の場に出る度にソフィアばかり目で追っていた。


 初めは普通の一目惚れだったんだと思う。


 そんな中、彼女が話しかけてきた時は心臓が止まるかと思った。


「待って!ピンブローチを落としたわ、あなたのでしょう?」


  ブルーダイヤのブローチは確かに僕のもの。


 頷くと、ソフィアの香りが近付いて胸が騒ぎ出す。


 ソフィアは僕のタイにピンを刺してから、ふわりと笑顔の花を咲かせた。


「もう落とさないよう気をつけてね」


  その後、僕の頭はこれまで以上にソフィアのことばかりになった。


 そんな中、ソフィアが事故に遭い家族を失ったと聞いた。


 彼女が助かってほっとしたが、しばらくは心配でいてもたってもいられない日々を過ごした。


  ソフィアに会う機会はすぐに訪れた。


 とある仮面舞踏会で見た彼女は、マスク越しでも分かるくらいに生気がなかった。


 反対に一緒にいる彼女の叔父家族は、態度が大きく下品に笑い、良くも悪くも上機嫌。


 彼女の心を痛めつけている叔父家族に幼心に敵意を抱いた。


 従妹のアンナがソフィアを虐めていた時にはよっぽど助けに入ろうか迷ったが、かろうじて思いとどまった。



  会場を離れたソフィアを追いかけた。


 見つけた彼女の心は悲鳴を上げていた。


 泣いている君も美しくて、でも僕の胸まで苦しくなって、笑ってくれると嬉しくて、そばにいるだけでくすぐったくて、僕にこんな思いをさせるのは君だけなんだ。


 僕は、君に恋をしている。


  ソフィアと結婚の約束をしたけれど、浮かれていられない。


 まずは両親の説得。


 ブランシュ伯爵令嬢ならまだしも彼女は女伯爵なのだから、両親は当然難色を示す。


 長年に渡って毎日言い続けた結果、最近になってやっと承諾してくれた。


 あとは邪魔なソフィアの叔父家族。


 舞踏会の後、すぐにでも助け出してやりたいと思ったが、僕はまだ子供でソフィアを守るだけの力がない。


 中途半端に彼女に接触しては、あの叔父家族に目をつけられる。


 アルヴィエ家は良くも悪くも力があるため、僕と仲良くしていると知れればソフィアは妬まれて、更に酷い目に合う可能性だってある。


 機会が来るまではソフィアと一切接触しないと心に決めた。


 しかしそれでも会わないことに耐えられず、意味もなくソフィアの屋敷の前まで出かけていく事もあった。


 ソフィアの部屋の窓の位置はすっかり把握していたからなんとなくそこを眺めてみたり、運が良ければ外に出た彼女を見ることが出来た。


  そんなある日、ソフィアに縁談が持ちかけられたと聞いて柄にもなく動揺した。


 しかもあの節操なしで女たらしの男爵家の令息。


 頭に昇った血をどうにか諌めながら、家の力と持ち前の世渡りの上手さで結婚話は破談にさせた。


 明日にでも婚約破棄の書状がソフィアの叔父に届くだろう。


 これ以上変な男に目をつけられてはかなわないので、これを機に決着をつけることにした。


 正攻法では時間がかかるし、邪魔が入ってソフィアを手に入れられないかもしれないので、叔父家族は出し抜く事にした。


 黒い笑みを浮かべながら訪問すると、窓越しにソフィアと目が合う。


 それだけで僕は嬉しくなった。


 叔父家族には予想以上の歓待を受け、早々に話を切り出す。


「ブランシュ家のお嬢さんをお嫁に頂きたいのですが、認めていただけますか?」


  叔父の目を見てはっきり告げると、あっさりと笑顔で返してくれた。


「勿論です!あなたのような方になら喜んで!ぜひ幸せにしてあげて下さい」


  言質は取った。

 アンナとは一言も言っていない。


 やることは済んだので、後はソフィアを長年に渡って傷つけてきたこの家族をしっかりと自分の目で見ておく。


 皆でティータイムを過ごしたあと、アンナが擦り寄ってきた。


 二人きりになった途端、腕にまとわりついてくるこの女が不快でしょうがない。


 なんだかうっとりと甘えてくるが、煩わしいので笑みを顔に貼り付けたまま、適当に相槌を打っておく。


 庭に出ると、アンナは明らかに演技だと分かるあざとさで胸に飛び込んできた。


 この位置はソフィアの部屋の窓から良く見える。


 そういうことかと呆れた後、アンナを引き剥がして冷酷に告げた。


「僕の大事な人はただ一人だ」



  次の日、ソフィアの婚約が完全に解消された事を聞いてから迎えに行った。


 あの場所に似ているつるばらの空間で、ソフィアは泣いていて僕の胸も引き絞られたけれど、やっと彼女が手の届く位置に居ることが嬉しくて、僕の表情は終始緩んでいたかもしれない。


「……ええ、嫉妬したわ。すっごく」


  潤んだ瞳で上目遣いで可愛い事を言うものだからたまらない。


 めちゃくちゃに抱きしめるとソフィアは恥じらいつつも受け入れてくれた。


 あの馬鹿女のおかげでソフィアが妬いてくれたのだから、べたべたと触られて気色悪いのを我慢した甲斐があった。


「このまま僕の屋敷に来て欲しい、あそこにはもう戻らなくていいんだ。これからは僕と一生一緒にいて欲しい」


  ソフィアを伺うと、大好きなあの甘い微笑みを浮かべて、きゅっと抱きついてくる。


「あなたって最高だわ!」


  この笑顔をずっと見ていたい。

 これからは僕が君を守るから。



  ✧ ✧ ✧ ✧ ✧



  青い空がどこまでも続き、ほのかに透き通った陽の光がソフィアを淡く照らす。


 純白のドレスを身にまとった彼女の指には、大粒のブルーダイヤモンドの指輪が輝いていた。


 それは代々アルヴィエ家の公爵夫人が受け継ぐもの。


 ソフィアの瞳と同じ色の石は光を受けて、いつまでもいつまでも煌めいていた。


無事に完結しました。

彼、ストーカーちっくですね…思ったより愛が重そうです。

でもきっと、ソフィアを一生守り、大事にしてくれると思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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