001_現界したリンネ!限界オタクと化した私
「う、ウソでしょ……?」
今、私の目の前に突然現れた幼い女の子。
赤い瞳、とがった耳、頭には二本の黒い角。
黒のロングヘアが背中まで伸びていて、その背には小悪魔の羽。あと尻尾。
全身は黒い鎧で覆われていて、女性だということがわかる最低限の肌の露出。
その小さい右手は巨大なまがまがしい大剣をがっちりと掴んでいる。
幼い女の子には不釣り合いな武装だ。
私のプレイしているスマホゲー「ぷちモン☆だんじょんず!」の……
――私の推しキャラである『リンネヴェール』だ!
ちょっと待って
理解が追いつかない
あのリンネヴェールが私の部屋に!私の目の前に!
さわれる?
さわれる?
さわれた!鎧はごつごつしてるけど、肌はやわらかい……
「お姉ちゃん……来ちゃった。」
うわああああああああああああああああああああああああああああ!?
水城いろはの声だ!あの有名声優の水城いろは!
水城いろはの声でお姉ちゃんって呼ばれた!
ダメ、これは死ぬ。本当に。
死ぬ前に一度でいいからリンネちゃんに会いたい人生だった……
会ってるわ!目の前にいるわ!
夢か!?ああそうかこれは夢!きっと夢に違いない!
起きようと思えば起きれ……ないわ!
あの夢特有のふわふわ感とか布団のあったかい感とかないわ!
え、この子本物?本物のリンネヴェール!?
ちょっと待って
理解が追いつかない
なんで!?リンネなんで!?
私は混乱していた。
当たり前だ。
ゲームのキャラが自分の部屋に現れたらそうなるわ。
「ええと……本物のリンネヴェール?」
やっと出た言葉がこれかよ!
もっとあるだろ!気の利いた発言が!
目の前の女の子はうなづく。
「会いたかった……お姉ちゃんに。」
いやー、回してみるもんだなあ、10連ガチャ。
っていうか運営!じゃなくて開発!
こういう召喚システムがあるなら、先に言えよ!!!
こんなことになった以上、神ゲー確定だよ!
まさか隠してたの!?それとも不具合!?
ああもうわかんない!
思考をリセットしなくては!
「ご飯、食べに行きましょう……」
「食べる!」
うわああああああああああ
かわいいいいいいいいいいいいいい
かわいいなあああああああああああああああ
うわああああああああああああああああああああああ
CV: 水城いろはだもんな……
当たり前なんだよなあ……
「剣は、この部屋に置いておきましょうか……」
「どうして?」
「ご飯を食べるのに武器は必要ないでしょ?」
「……必要。外は魔物が出る。危険。」
「いやこの世界には襲ってくる魔物はいません。」
「そうなんだ。」
「逆に武器を携帯していると法律違反で警察につかまります。」
「ホーリツ? ケーサツ?」
うん、用語が難しかったか!
「武器もってるとルール違反でガーディアンにつかまります。」
私はファンタジー言語に変換した。
「……ヘンなガーディアン。」
……私は今からこの子にこの世界の一般常識を教えないといけないのか。
そう思うと頭が冷静になってくる。
上着を着こんでマンションの一室から出る。
まだ寒い、まだ寒い。
あとリンネが歩くたびにガシャリガシャリと金属同士ぶつかる音。
今後のために服も用意してあげないと。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「見ての通りです……」
「二名様ごあんなーい!」
あ、この子。他の人にも見える系の存在なのね、理解。
「何食べる?」
「……肉ならなんでも。」
「ハンバーグとステーキどっちがいい?」
「……ハンバーグってなに?」
ステーキ定食を二人分注文する。
ほどなくしてステーキがやってきた。
「お食事を受け取りください。お食事を受け取りください。」
……配膳ロボットに揺られて。
「……魔物!」
「ちょーっとまった!リンネちゃん?落ち着いて!それ魔物ちがう!」
一瞬で臨戦態勢になったリンネを止める。
「こうやって、自動で食事を持ってきてくれる機械よ。」
「……機械ってなに。」
「……使い魔よ、使い魔。このレストランの使い魔。魔物じゃないから。」
「そうなんだ。」
私はステーキ定食を二人分、テーブルの上に置く。
「さあ食べましょう。」
あ、もう食べ始めてるわ。おなか空いてたのかもしれない。
ステーキを食べ終わったリンネの頭上に「LEVEL UP」の文字が輝く。
……そういえば「ぷちモン☆だんじょんず!」の育成素材……
肉だったな。
そこも反映されるのかよ……とんだ神ゲーだな……あのスマホゲー。
あれ?そういえば私のスマホは?
スマホが無いんだが?スマホどこにやった?あれ?
会計を終えて部屋に帰った私はスマホを探した。
どこにもない!
「リンネ、私のスマホ見なかった?」
私はわらにもすがる勢いでリンネに聞いた。
「……スマホってなに?」
ですよねー。
「ええとこういう形とサイズで、重さは……」
私はリンネにスマホの形状を伝える。
あわよくば一緒に探してくれることを期待して……
「……それなら生贄になったから。」
は?生贄?
「私を召喚するときの、コスト。」
ちょっと待ちなさい?
あのスマホにはいろんなデータが入ってるんだけど!?
「返品できませんか!?返品お願いしまーす!!!」
私の叫びはむなしく部屋にひびくだけだった。
キャラクターをドタバタ動かせたらいいなと思います。
よろしくお願いします。




