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NC-1801  作者: アル治


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第9話  家族

いつも読んでいただきありがとうございます。

ブランが散歩をしていると、一組の親子が脇を足早に駆け抜けていった。


母親の顔は険しい。


娘は泣いていた。


「ごめんね、でも急いで!」


「うわぁーん!ママ、痛いよー!」


ブランの耳が動く。


「虐待?」


「それなら、ちょっと許せないかな」


ブランは気付かれないように後をつけた。


親子が入ったのは古いアパート。


そして。


「ごめんね……」


「ごめんね、ゆあ……」


母親は何度も娘に謝っていた。


ブランは目を細める。


「これは違うな」


「……」


何も見なかったことにする。


ブランは優しい。


だが、厄介事に首を突っ込み、クロウや真壁を巻き込む訳にはいかない。


それでも。


帰る足取りは少し重かった。


―――


「ただいまぁ♪」


猫カフェに戻る。


「お帰りなさい」


真壁が笑顔で迎える。


クロウは片目を開け、ブランを見た。


「クロウさん、どうしたの?」


「あー、お腹空いたんでしょ?」


ブランは明るく振る舞う。


だが。


クロウは目を閉じようとはしなかった。


―――


数日後。


食事の前。


真壁が少し暗い顔で口を開いた。


「明日、依頼人が来ます……」


「真壁さん、どうしたの?」


「なんか元気ないよ?」


「そ、そんなことありませんよ」


「あー」


「依頼人が可愛い人で、クロウさん取られると思ってる?」


「ち、違います!」


「ご飯にしますよ!」


「あはは♪」


「もしかして当たったかも」


クロウは終始目を閉じていた。


―――


翌日。


猫カフェはいつも通り営業していた。


常連客。


初めてのお客様。


穏やかな時間。


だが。


閉店間際になっても依頼人は来なかった。


「真壁さん、依頼人は?」


「どうしたんでしょう……」


「ちょっと内容が内容なので、心配です……」


閉店後。


真壁が話し始めた。


「元旦那さんが執拗に追い掛けてきているそうなんです」


「逃げても逃げても……」


ブランの表情が曇る。


「それは……辛いな」


その時だった。


ガン!ガン!


シャッターを叩く音。


「すみません!」


「遅れて申し訳ありません!」


「開けてもらえませんか!?」


真壁が慌ててシャッターを開ける。


そこに立っていたのは、かなり若い女性だった。


「遅れてすみません……」


「真っ直ぐ来る訳にはいかないと思いまして……」


女性は深々と頭を下げる。


そして。


その後ろには。


泣きそうな顔をした小さな女の子。


「とりあえず中へ」


真壁は二人を迎え入れる。


シャッターを閉めようとした時。


真壁はふと振り返った。


誰もいない。


「気のせい……?」


真壁はそのままシャッターを閉めた。


―――


「奥へどうぞ」


「娘さんはどうしますか?」


「こちらで見ていましょうか?」


「お願いしてもいいですか?」


「もちろんです」


真壁は笑顔を向ける。


「お名前は?」


「ゆあ」


「ゆあちゃんね」


「ゆあちゃんは、ねこちゃん好きかな?」


「好きー!」


真壁が微笑む。


それを見て、女性は店の奥へ入っていった。


―――


ソファーには黒猫。


その横には白黒の犬。


女性は立ち止まる。


誰かを探すように周囲を見回した。


「依頼内容を話してください」


【虐待を疑った人だ、良かった……】


「……!」


「しゃ、喋った!?」


「話せ」


クロウの一言に、女性は一歩下がった。


「クロウさん!」


「ごめんね」


「話は僕が聞くから」


「依頼内容を話してください」


「は、はい……」


女性は震える声で話し始めた。


「別れた夫が……」


「しつこく付きまとってきて……」


「このままじゃ……」


「私も、この子も殺されます……」


女性は俯く。


「見てもらった方が早いと思います」


「信用してもらえないかもしれないので……」


震える手で上着を脱ぐ。


袖をまくる。


紫色の痣。


赤く腫れた傷。


ブランは思わず目を逸らした。


クロウだけが静かに傷を見つめる。


そして。


「判った」


女性の目から涙が溢れる。


「依頼を受けていただけますか?」


クロウはブランを見る。


「最短でも一日は欲しい」


「でも、このまま帰すのは危険だ」


「真壁さん、ちょっといい?」


真壁がゆあと一緒にやって来る。


ゆあは母親にしがみついた。


真壁はブランの話を聞き、静かに頷く。


「桜井さん」


「今日はここに泊まってください」


「依頼を受ける前に調べることがあります」


「ですが、このまま帰すのは危険です」


「申し訳ありませんが、今夜はここにいてください」


「ご迷惑では……?」


クロウ。


「ない」


その一言で。


全てが決まった。

今後もよろしくお願いいたします。

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