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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第四章 皮膚シールを作ろう!

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皮膚シールを作ろう!

 いてもたってもいられず、帰宅してすぐだったが、皮膚シール作りに取りかかった。

 珍しくレディ・ヴィオレッタも地下の工房にやってきて、呆れた様子で物申す。


『旅から帰ってきたばかりなのだから、しばし休めばいいものの』

「アデールの不安を、少しでも早く取り除いてあげたくって」

『真面目な奴よ』


 コゼットやシュシュは疲れたのか、お店のカウンターの上で寄り添うように眠っていたらしい。

 レディ・ヴィオレッタはコゼットを二階の寝台へ運び、シュシュは帽子掛けにかけてあげたそうだ。

 私も心配して、寝かしつけにきたのだろうか。


「皮膚シールができ次第、休みますので」

『ほどほどにな』

「はい!」


 レディ・ヴィオレッタに見守られた状態で、皮膚シールの製作に取りかかる。

 まず、スキン・スライムの処理をしなければならない。

 魔物、魔獣系の素材はそのままでは使えない。

 なぜかといえば汚染されていたり、魔力の量が多かったりするから。

 未処理の魔物、魔獣を使ったアイテムを使うと、精神錯乱に加え、魔力の過剰状態で呼吸困難、悪寒、吐き気、目眩などの症状に襲われ、最悪死に至る。

 それくらい魔物、魔獣を素材として使うのは危険なのだ。

 ただ、それらの素材は非常に優秀で、高い効果のアイテムの数々を生み出すことができる。

 そんな魔物、魔獣系素材を使うために、魔法使い達はせっせと浄化作業に勤しむのである。


 さっそく作業に取りかかった。

 まず、錬金釜にたっぷり聖水を注ぎ、ぐつぐつ煮立たせる。

 こうすることによって、浄化力が通常の倍以上になるのだ。

 沸騰した聖水の中に、スキン・スライムを入れた瓶をゆっくり沈めた。

 もしも魔物や魔獣が生きていたら、聖水に浸した瞬間驚いて、暴れてしまう可能性がある。そのため、浄化力を向上させた湯に入れて、一気に大人しくさせるのだ。

 今回の場合はユベール様がしっかり仕留めてくれたので、動き出す心配はないだろう。

 煮沸消毒させるようにしばらく煮込んだあとは、余分な魔力を取り除く作業を行う。

 水晶を錬金鍋に入れ、呪文を唱える。


「――魔力よ吸い取れ、吸収アブソーブ!!」


 スキン・スライムの魔力を、水晶が吸い取ってくれる。

 これらの水晶はさらに煮込むことによって、高品質の魔石となるのだ。

 レディ・ヴィオレッタの大好物でもあるので、あとで分けてあげよう。


 鑑定で調べてみると、スキン・スライムは無事、素材として使っても問題ない状態になっていた。

 ようやく皮膚シール作りに取りかかれる。

 錬金釜の上で、水果実にナイフを入れる。するとぱちんと弾け、水が滴り落ちてくる。

 たった一つで、錬金釜が満たされた。

 手のひらに残ったのは水果実の種。これがシール堂の裏庭で栽培できるか試すために、ひとまず取っておこう。

 錬金釜の中に、スキン・スライムを入れる。

 煮込むことによって液体化しているようだった。

 さらに蜜蝋を入れ、ぐつぐつ煮込む。

 棒を使って丁寧に混ぜ、蜜蝋液の状態を見守った。

 すると、虹色の湯気がもくもく漂ってくる。上手く素材が混ざった証だ。

 蜜蝋液が固まる前に急いでパレットに垂らし、先端が封蝋印になっている杖を押し当てる。

 仕上げに呪文を唱えるのだ。


「――刻印せよスタンプ!!」


 シールがきらりと輝き、ぱちんと弾けるような音を鳴らした。


「皮膚シール、完成しました!」


 レディ・ヴィオレッタに見せようとしたら、眠っていたようだ。

 私達が素材探しの旅に出ている間、気を張っていたのかもしれない。

 お休みが必要だったのは、私ではなくレディ・ヴィオレッタのほうだったのだろう。

 なるべく音を立てないようにして、工房を出る。

 暖炉の火は絶やさないよう、火の魔石をたっぷりくべておいた。


 いつの間にか外は真っ暗になり、夜も更けているようだった。

 ユベール様も休んでいるかもしれない。

 皮膚シールが完成したという連絡は明日にしよう。

 お店の帽子掛けで休んでいたシュシュが、私がやってきた物音で目覚めたようだ。


『シール、できた?』

「おかげさまで、完成しました」

『よかったあ』


 うわごとのように言って、再び眠り始める。

 今回の旅で、シュシュも頑張ってくれた。明日、改めてお礼を言おうと思ったのだった。

 疲れを取るために温かいお風呂に浸かり、いい香りがするキャンドルを焚いてリラックスする。

 初めて王都を飛びだし、素材を探し回ったが、ユベール様が同行してくれたおかげでスムーズに終えることができた。

 一人だったらきっと〝トネリコの森〟で樹魔人トレントに倒され、捜索依頼が出されていたかもしれない。

 これから先、ユベール様が一緒にシール堂を切り盛りしてくれるという。

 収入面と給金が心配だが、その問題もきっとユベール様と話し合えばなんとか解決するだろう。


 化粧水、美容液を肌に浸透させたあと、寝室に行くと――コゼットが私の寝台の真ん中で眠っていた。しかも、お腹を上にしている。

 実に幸せそうに眠っている顔を見たら、いくらでも好きに使ってほしいと思ってしまった。

 私は寝台の端っこを確保し、体を縮めて眠ることにする。

 明日、アデールに会えるだろうか。

 そんなことを考えながら、眠りに就いたのだった。

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