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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第四章 皮膚シールを作ろう!

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スキン・スライム戦

 スキン・スライムは泥を纏ったような姿だったが、ぶるぶると身震いする。

 大量の泥が飛び散ったが、ユベール様が障壁魔法バリアで防いでくれた。

 全身の泥を取り払ったスキン・スライムの姿は、真珠のように美しい。

 以前、師匠が見せてくれたスキン・スライムは、すでに瓶詰めされた状態で、素材と化していた。生きている姿を見るのは初めてである。

 これが人間の肌に近い生き物なのだ、とまじまじと見つめてしまった。


 ユベール様は水晶剣に火魔法を付与させ、斬りかかった。

 けれどもスキン・スライムの表皮に付着している粘膜が厚いからか、剣を弾いてしまう。

 そうこうする中で、スキン・スライムは再度ぶるぶる震えた。

 全身をまとう粘膜を飛び散らせる。

 ユベール様自体は回避したものの、水晶剣に粘膜の塊が付着してしまったようだ。


「なっ、これは――!?」


 粘膜が水晶剣にまとわりつき、除去できなくなったようだ。

 武器を無効化させた状態になると、スキン・スライムは次なる攻撃に出てくる。

 ぼよん、と飛び跳ねたかと思うと、波のように高く伸びて、ユベール様に覆い被さろうとする。

 私はすぐさま地面に〝植物シール〟を貼った。

 すると、地面に埋まっているありとあらゆる種が芽吹き、木々となって成長していった。

 木々はユベール様よりも高く伸び、スキン・スライムが到達しないよう守ってくれる。

 攻撃を回避できた隙に、ユベール様のもとへ駆けよった。


「メーリス、感謝する」

「いえいえ! それよりもこれを水晶剣に貼ってください」


 差しだしたのは〝撥水シール〟。

 ありとあらゆる水分を弾き飛ばすシールである。お風呂場の手入れが面倒で作ったものだ。

 水晶剣に貼ると、粘膜を弾いて除去できた。


「このシールが作用している間は、スキン・スライムに攻撃を与えることもできるかと」

「なるほど、そういう目論みもあったのか」


 ここで植物シールの効果が消えてなくなる。

 植物の急成長を促すことができるのは、ほんの少しなのだ。

 再度、スキン・スライムは波のように伸びて覆い被さろうとしてきた。

 ああやって魔力を持つ存在を取り込み、自らの糧とするのだろう。

 そんなスキン・スライムを、ユベール様は撥水シールを貼った水晶剣に火魔法を付与させ、一気に斬りかかった。

 今度は粘液を弾き、攻撃を加えることができたようだ。

 しかし――。


「なっ!?」

「う、嘘でしょう!?」


 ユベール様が攻撃を与えた斬り口から、二つに分裂したのである。

 そういえば、スライムという生き物はこういう性質を持っているのだった。

 二体に増えてしまったスキン・スライムは、ぼよんぼよん飛び跳ね、ユベール様を踏み潰そうとしてくる。


 再度斬りかかっても、分裂するだけだろう。

 ユベール様はスキン・スライム達の攻撃を難なく回避しているように見えるが、それを続けることができるのも時間の問題だろう。

 なんとか倒す方法を考えなければ。

 スキン・スライムの弱点はなんだったのか。

 鑑定魔法には表示されていなかった。

 考えろ、考えろ、考えろ。

 人間の肌に近い性質を持つ、スキン・スライムの弱点とは!?

 無意識のうちに、自らの肌に触れる。

 すると、いつもより肌がしっとりしていることに気付く。

 ここが湿地帯だからだろうか。

 冬の間は乾燥しがちなのだが――とここまで考えて気付く。

 乾燥!!

 湿地帯に生息するスキン・スライムは、きっと乾燥が大敵のはず。

 すぐさま叫んだ。


「ユベール様、スキン・スライムの弱点は、おそらく乾燥です!!」


 水分を含まない風魔法で攻撃したら、ダメージを与えることができるだろう。

 ユベール様は「わかった」と言葉を返し、すぐさま風魔法を水晶剣に付与させる。

 襲いくるスキン・スライムに斬りかかった。

 風をまとった水晶剣での一撃は、スキン・スライムの表皮を裂いてコアに到達する。


『ギュイイイイン!!』


 断末魔の叫びを上げ、動かなくなった。

 分裂した二体目も同様に、ユベール様はあっさり倒してしまう。

 動かなくなったスキン・スライムを前に、安堵の息を吐いたのだった。


「ユベール様、おケガがありませんか?」

「ああ、平気だ。メーリスは?」

「私も問題ありません」

「そうか、よかった」


 それにしても、まさか乾燥が弱点だったとは。 

 湿地帯に生息している理由にも、納得できる。


「メーリスのおかげで倒すことができた。よく、風魔法が弱点だと気付いたな」

「私の肌も乾燥しがちだったので、同じような弱点があるのではないか、と考えついたんです」


 と、お喋りしている場合ではない。ここからが時間との勝負なのだ。


「スキン・スライムを採取しますので、しばしお待ちを」

「私も手を貸そう」

「ありがとうございます」


 スキン・スライムはコアが劣化する前に、保存瓶に詰めなければならない。

 時間にして一時間くらいだろうか?

 シュシュに預けていた保存瓶を出してもらう。


「こちらの手袋を装着していただき、ナイフでカットして、保存瓶に詰めていただけますか?」

「わかった」


 手袋には撥水シールを貼っているので、スキン・スライムを手づかみで握ることができる。作業を手早く進めることができるだろう。

 スキン・スライムにナイフを入れると、ゼリーみたいにぷるぷるだった。

 保存瓶に入る大きさにカットし、ぐいぐい詰め込んでいく。

 太陽の光に透かすと、スキン・スライムはキラキラ輝いていた。

 とてつもなく品質の高い素材に違いない。

 倒してくれたユベール様に改めて感謝したのだった。

 スキン・スライムのコアが劣化するまでの一時間、保存瓶五十個分も確保できた。

 手を貸してくれたユベール様のおかげである。

 一時間経つと、スキン・スライムはどろどろに溶け、地面に浸透してしまった。


「本当に、時間が経過すると採取不可能な状態になるのだな」

「そうなんです。ユベール様のおかげで、たくさん採ることができました。ありがとうございます!」


 これだけあれば、アデールが一生分使えるくらいの皮膚シールが作れるだろう。


「王都に戻って、皮膚シールとやらを作らなければならないな」

「はい!」


 ユベール様はお役目をしっかり果たしてくれた。

 あとは私の腕の見せ所のようだ。

 

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