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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第四章 皮膚シールを作ろう!

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水果実

 ケガもなく、水果実を入手できてよかった。

 樹魔人トレントに大接近したシュシュも、ぴんぴんしている。

 見事な投擲を見せたコゼットも、満足げな様子でいた。

 ユベール様の水晶剣が少し黒ずんでいるように見えたので、浄化シールを差しだす。


「よろしければ、浄化シールをお使いください」

「感謝する」


 受け取ってくれてホッと胸を撫で下ろす。


「では、帰りましょうか」

「そうだな」


 張り切って来た道を進もうとしたら、ユベール様に制止される。


「ワイバーン車が停車している位置まで、転移魔法で戻ることができる」

「そうだったのですね」


 なんでも一度行き来した場所ならば、転移魔法を使って移動することができるという。

 羨ましいと思いつつも、複雑な魔法なので私にはとても使いこなせないだろう。

 そんなわけで、ユベール様の転移魔法でワイバーン車が下り立った先に戻ることができた。

 待機していた御者が出迎えてくれる。


「おかえりなさいませ。今、ワイバーンを召喚しますので、お待ちください」


 魔法で呼びだされたワイバーンは、どこかで眠っていたのか大あくびをしつつ登場する。

 手際よく車体とワイバーンをベルトと魔法の鎖で繋ぐと、すぐに飛行できる状態になったようだ。


「このままスキン・スライム探しに行きたいところだが、フェアリー・リングについて気がかりだ」

「先にオーベルジュ大公家の領地に行かれますか?」

「そうしよう」


 水果実とスキン・スライムを入手してからオーベルジュ大公家の領地に行く予定だったが、変更して先にフェアリー・リングの調査を行うことにした。


「次はオーベルジュ大公家の領地まで頼む」

「かしこまりました。途中で休憩なさいますか?」

「そうだな。昼くらいにほどよい場所で休ませてくれ」

「承知しました」


 王都から馬車で〝トネリコの森〟へ向かい、水果実探しをしていたら、あっという間に昼過ぎになっていただろう。

 ワイバーン車を使ってやってきたおかげで、出発してから二時間くらいしか経っていない。

 上手くいけば夕方くらいには、オーベルジュ大公家の領地に到着できるだろう。

 ワイバーン車に乗り込み、ユベール様が合図を出すと飛び立つ。

 あっという間に上昇し、広大な〝トネリコの森〟を見下ろす形となった。


「無事、水果実を入手できてよかったです」

「まさか樹魔人トレントに巻き付いていたとはな……」

「驚きました」


 樹魔人トレントの周囲で亡くなっていた人達も、水果実を求めてやってきたのだろう。

 私もユベール様がいなかったら、入手できなかったどころか、生きて帰れなかったかもしれない。


「そこまでしてでも、手にしたい素材なのか?」 

「ええ。美容関係のアイテムを作るさいには、必要不可欠な物ですので」


 シュシュに一つだけ取りだしてもらった。

 透明度の高い、美しい果実である。

 触れると水のようにひんやりしていて、表皮はぷるぷるしている。


「不思議な果実だな」

「そうなんです」


 かじりつくと表皮がぷつんと破れ、水が弾けてくるようだ。

 鑑定でどれほどの品が採れたのか調べてみよう。


「――見定めよ、鑑定アナライズ!」


 目の前に鑑定結果が浮かんでくる。


 アイテム名:水果実

 レアリティ:★★★

 状態:新鮮

 説明:樹魔人トレントが所有していた、魔力が豊富な水果実。ほどほどに貴重。


「とてもいい品みたいです」

「それはよかった」


 そういえばいったい何個くらい採れたのだろうか。シュシュに確認してみる。


「シュシュ、水果実はいくつ採れましたか?」

『うーーんと、五十個ほど!』


 そんなに大量に採れていたとは。これでもほんの一部らしい。


『全部で千百個くらいあった!』


 樹魔人トレントが所持していた水果実は幹に巻き付けていただけでなく、枝葉の中にも大量に隠し持っていたようだ。


『でも、全部燃えちゃった』


 シュシュのその発言でユベール様がハッとなったあと、申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「すまない、貴重な素材を台無しにしてしまったようだな」

「水果実が自生する場所は、樹魔人トレントの周辺だけではないはずです」


 きっと奥地に行けばもっとあるだろう。


「しかし、そういう場所には厄介な魔獣や魔物がいる」


 これから水果実を探す者は、かなりの危険が伴う。

 ユベール様は責任を感じているようだ。


「しかし、樹魔人トレントの被害に遭った人達はかなりいるようでしたので、あの場で生かしておくのも危険が伴っていたでしょう」


 これ以上、被害者を増やさないためにも、樹魔人トレントの討伐は必要だったのだ。


「水果実から種を採取して、栽培できないか調べてみますので」

「可能なのか?」

「まだわかりませんが、植物を育てるのは得意なんです!」


 時間はかかるだろうが、シール堂の裏庭で育ててみよう。

 いつになるかわからないが、もしも実を生らすことができたら、ギルドに依頼するよりも安い価格で販売できたらいいなと思っている。

 その話を聞いて、ユベール様は罪悪感が薄くなったようだ。


「ギルドには、水果実の入手は困難であると報告しておかなければならないな」

「そうですね」


 〝トネリコの森〟は想像していた以上に、危険な魔獣や魔物が潜んでいる。

 これも魔王がいた影響だったのだろうか。

 魔王亡きあとも脅威を揮っているので、用心が必要だろう。

 ユベール様は車内でギルド宛てに手紙を書き始める。


「あの、水果実がどうしても必要な方がいましたら、シール堂でお譲りする旨も書いていただけますか?」

「いいのか?」

「ええ。アデールのように、水果実を使ったアイテムを望んでいる方がいるかもしれませんので」

「わかった」


 ギルドへの手紙は、〝トネリコの森〟から運んできた亡骸と一緒に鳥翰魔法で送ったようだ。


「これでギルド側も対策を打つだろう」


 そんな会話をしているうちに、ワイバーン車が下降していく。

 休憩を取る街に到着したようだ。

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