『第一勢力者』の闘い
「どこに行くんですか?」
トシヤとツガルは、あの二人に見つかってはまずい筈なのに、街を歩いていた。トシヤの気持ちは不安になる。
「あの二人にケンカを売るんだ。まずは情報を集めないとな。あいつら、何か言ってなかったか?」
街を歩きながら、ツガルは尋ねてくる。トシヤは、あの二人に会ってからの出来事を思い出す。
「あっ、そういえば、あの人たちはレベル3だって言っていましたよ!」
「ふうん」
ツガルはあまり興味を示さなかったのか、トシヤの前を歩いている。
「どうでもよさそうですよね?」
「そんなもん、俺だって確認しているんだよ。まず、出会った奴はステータスは確認しといた方がいいぞ」
「他にはと言われても、金にズボラな兵士を雇ったって言っていましたよ」
「なにぃ?!」
ツガルは歩みを止め、こちらを振り返る。
「それは、どこの兵士だ?」
「助けてもらった場所付近を巡回している兵士らしいですよ」
「なるほど・・・」
ニヤッと、不敵な笑みを浮かべる。
「おい、メニュー画面から『フレンド』を押して、俺の名前を入れてみろ。」
「わ、分かった」
急に言ってきたので、とまどってしまいつつも、言われるがままに、フレンド欄を押し、タッチセンサーになっているので、慣れない手つきで『ツガル ヒデト』と、名前を入力する。
「下に『CALL』と、出ているだろ?それを押してみろ」
トシヤは『CALL』を押してみる。
『ジリリリリリリ!』
自分の頭の中だけ、電話のベル音が鳴り響いている。
「なんだ、これ!」
『電話機能だよ』
ベル音が消え、ツガルの声が聞こえてきた。
「一分間、1000ベルンずつ取られるが、遠くにいる仲間に連絡が取れるから便利な機能だ。覚えておくといい」
「へえ、そんな機能があるんだ」
「じゃあ、次は、このマップを見てくれ」
左下の隅の方に『王都 ベルニカ』と書かれたマップを見せられた。
「俺たちが出会ったのは、この辺だ」
マップの左の方、『Kings・Street』と書かれた場所を指す。
「俺があいつらに、教えた場所は北にいると伝えたから、今、奴らはまだ、この辺りを探しているだろう」
「で、どうするんだ?」
「お前は今から、そこにいる奴らを見つけて、俺の電話の合図をしたら、『Kings・Street』にある、ここに奴らをおびき寄せろ。」
ツガルが示す場所は、四方を建物で覆われていた。つまり逃げ場所がなかった。ツガルは文句の一つでもいいと思っていたが、トシヤからは不安の声は上がらなかった。
「・・・分かった」
むしろ、決意に満ちていた。恐らく、ツガルに賭けた時点で肝が据わったのだろう。
「よし、じゃあここからは別行動だ」
「あんたはどうするんだ?」
「勝つ為に、ちょっと『交渉』してくる」
「交渉?」
「ああ、もしも交渉が決裂したら、その時は、強引に奴らを殺す」
殺すという言葉に戸惑いを隠せなかった。その人たちを殺すという事は、永遠の生き地獄をさせるようなことだった。
「そ、そんな・・・」
「これは最終手段だ、もしも交渉が成功したら奴らを屈服させられる。だが、失敗したらその時は、心を鬼にしろ」
やはり、自分がこの街を生き抜く為には、あの人たちを殺さなくてはならないのか?そう考えたとき、ふっと出てきたのは、一人の小さな英雄だった。
「ごめん、やっぱり自分には、人を殺せない・・・」
「なっ!」
殺してしまうと、次にユキホに会う事が出来なくなりそうだった。
「お前はこんな時にっ・・・。まあいい、奴らが移動してしまうと厄介だからな。話しはあとだ。お前はまず奴らを探しに行け」
こうしてツガルは交渉の為、トシヤと離れた。