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第三十話 【村長との邂逅】

 ニーアからツンドララビットの毛皮の情報を得た俺たちは、早速村長の屋敷を訪ねた。


 そこは冒険者ギルドよりも質素で小さいものの、(おもむき)のある邸宅。


 そして俺たちは客間ではなく、道場のような場所に通された。

 対面に座するは小柄な老齢の男。


 その男は凛とした、引き締まった表情でこう話す。

「ワシがこの村の長、サーベイ・ミズイガルムじゃ。客間でなくてすまないが、冒険者にはこちらのほうが居心地が良いだろうと思ってな」


 ニーアとミーアに無理を言い、冒険者ギルドを通じて村長を紹介してもらったのだ。

 二人は「何があっても自己責任」として渋々ながらも承諾してくれた。


 そしてアンジュはサーベイ村長の言葉に、不思議そうな表情を浮かべている。

 特におかしな点はなかったはずだが――そう思いながら俺はこう答える。

「心遣い感謝する」


「君たちの噂は冒険者ギルドから聞いておる。なんでも、この村には似つかわしくない手練れだとか――それで、そんな君たちがワシに何の用かね?」


 ニーアとミーアがあそこまで言うほどに変わった人には見えないが……。


 俺は単刀直入に本題を切り出す。

「貴方がツンドララビットの毛皮を所有していると聞き、どうかそれを譲っていただきたく」


「ほう。ツンドララビットとはまた懐かしいのう――奴を狩ったのは、確か三〇年も前だったか

 。防腐処理はしっかりとしておるから毛皮は無事のはずだが……」


「では譲っていただけると?」


「そうじゃのう――それは構わんが、無料(タダ)でとはいかんな。村長が一冒険者に肩入れして利益を教授するわけにもいかんからのう」


「それはもちろんだ。それ相応の対価を支払う用意はある」


「そうかそうか。ならばその娘っ子をいただこうか。若く器量も良い。ワシの嫁として迎える、というのが対価じゃ」

 村長はそれまでの凛とした表情から一転し、いやらしい表情を浮かべる。


「「は!?」」


「ワシもそろそろ終わりがみえてきておるからな。男ならば誰しも、最期は美人に看取られたいであろう。それに献身的な世話も期待できそうだしのう」

 そう話す村長は、より一層目をにやつかせ、アンジュを舐め回すように見定めた。


「せ、先生……」

 アンジュは助けを求めるように俺を見つめたのち、俺の影に隠れてしまった。

 その顔は困惑と恐怖が入り混じったような顔をしていた。


「お主らはそういった関係ではないのであろう? ならば問題はないだろう」

 村長は俺たちを交互に見比べてそう言った。


「いや、そういう問題ではないだろう。アンジュも会ったばかりの相手など嫌だろう?」


「も、もちろんです! 将来の相手は自分で選びます!!」

 アンジュは力強くそう答えた。


 すると村長はニカって笑い、

「あー、すまぬすまぬ、冗談じゃ――しかし、これでもう三〇〇連敗かのう……この村にはもう口説く女子(おなご)も残っておらぬな」


 いや、あの顔は冗談ではなかったように思えるが……。


 しかし、これがミーアとニーアが渋った原因か。

 おそらくあの二人も被害にあったのであろうな。


 そして村長はこうも続ける。

「対価は別のものにするから安心せい。だが、その前に――なぜお主らはツンドララビットの毛皮を欲する?」


 ツンドララビットの毛皮は耐熱装備以外の使い道はない。

 装飾利用はもちろん、なめして使われることもない。


 いや、出来ないという方が正しいか。


 ツンドララビットの毛皮は、魔力を帯びていないと非常に脆い。

 そのため、ツンドララビットの毛皮を利用するには魔力を流し込んでやる必要がある。


 だが、ここで一つ問題がある。

 ツンドララビットの毛皮は魔力を感知すると、自ら冷気を発するのだ。


 その冷気は氷河に住まう他の魔物(モンスター)を凍てつかせるほど。


 そして村長は、そんなツンドララビットを自ら狩るような冒険者だった――ならば、そのことはもちろん承知の上だろう。


 ここは素直に答えるべきか――。

「『グラウスの火釜』に用があってな」


「ほう。『グラウスの火釜』に。それならばツンドララビットの毛皮が必要になるのう――で、それはどんな用なのじゃ?」


「なあに、単に狩りにいくだけだ。この娘の経験にもと思ってな」

 今度はそれらしいことを良い、はぐらかす。

 目標がミノタウロスであることは悟られたくない。


 もし村長がリカルド国王派であった場合、ミノタウロスのことを悟られるのは何かと不都合だからだ。


 しかし、村長は俺の返答を良しとしなかった。

「そうかそうか。なるほど、わかった――なぜお主は本当のことを言わんのだ? ワシをなめておるのかのう?」

 その言葉からは、ビシビシとした殺気を感じる。


「――ッ!!」

 その殺気を受けた俺の全身が、一瞬にして鳥肌を立てたのがわかる。


「長く生きていると嘘のにおい(・・・)がわかるようになるんじゃよ。お主はまだ何か隠しておることがあるじゃろう?」


 におい……だと?

 そんなもので嘘がわかるのか?


 だが、ここで答えるわけにはいかない――。

「……いや、そんなことはない。俺たちは単に狩りに行くだけだ」


「あくまでもシラを切るか……まあそれでも構わん。それに毛皮もくれてやろう」

 すると、村長から放たれていた殺気がふっと消えた。


 そしてそれとほぼ同時に、

「そ、それじゃあっ!!」

 今まで俺の影に隠れていたアンジュは、表情をぱっと明るくさせながら身を乗り出してそう言った。


 しかし、アンジュのその表情は、村長の次の言葉によって再び曇ることになる。


「――ただし、ワシに勝つことができればな」

 村長は不遜(ふそん)な笑みを浮かべながらそう言った。

数多くある小説の中から、こちらの小説を選んでいただきありがとうございます。


また、話の続きが気になる! 面白かった! など、少しでも読者様の心を揺さぶることが出来ましたならば、ブックマークや、広告下の【☆☆☆☆☆】より評価していただけましたら、大変大きな励みとなります。


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