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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
学園編 一年生

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兄の苦労日記19 

ダンスパーティは無事に終わった。ある意味訓練になったが、あんなにダンスを踊るのはできればもう避けたい。


「怪しい女と当番なんてやってられるかよ!!それ運んでおけよ」


勢いよく男子生徒が出て行き、部屋には女生徒と実験道具が残されていた。

あれを一人で持つのは無理だろう。


「持つ。研究室に運べばいいか?」

「あ、えっと」


口ごもる女生徒は気にせず、箱を持ち上げる。


「私、持ちます」

「いい。これくらいなら軽い。扉だけ開けてくれ」


頷く女生徒の後について道具を運ぶ。取り締まるほどの案件ではないか。

お礼に何かと言われたが、女は面倒だからできるだけ関わりたくないので丁重に断る。別にお礼をされるほどではない。しつこい女生徒と別れて教室に向かうと、俺の部屋から足早に出ていく妹を見かけた。

手には教科書を抱えている。

抜けている妹は忘れたんだろうか。俺の部屋には1、2年の教科書を置いてある。復習と妹達が課題をするとき用に。

気付いたら1年の教科書が5冊も持ち出されている。

理由を聞いたら教室に置く用に欲しかったらしい。寮から運ぶのが面倒と笑う様子に苦笑したが、寮でも勉強している妹に命じて許してやるか。


***


書類を提出しクロード殿下の傍に控えているとストームが肩に止まる。


「ディーネ様が呼んでる。レティ、危ないって」


妹の水の精霊の呼びかけは初めてだ。ストームは俺の命令しか聞かないと言うがディーネは別らしい。精霊にも上下関係がありディーネに逆らうと消されるから従うらしい。

殿下に傍を離れる許可を取り、ストームに妹の場所を探させ向かうとマールを見つけた。マールの腕の中に意識の失った妹がいる。


「レティシア!?」

「研究棟の研究小屋に閉じ込められていた」

「研究棟!?悪い、預かるよ」


マールから意識のない妹を受け取り、保健室に急ぐと教師は留守だった。

ベッドに寝かせ妹を眺めていると嫌な言葉がよみがえる。あのおかしい女が妹の未来はないと言っていた。死ぬのか・・?

妹は閉じ込められた?嫌な予感がする。

いつのまにか起きている体に手を伸ばし腕の中に収まる温かさにほっとする。


「エイベル?」

「無事で良かった」

「お兄様?」


戸惑う声が聞こえ、背中に手が回された。


「マールが見つけた。研究小屋に閉じ込められたって」

「私は助かったんですか」


こぼされた小さいつぶやきに目を見張る。どういうことだ?


「心配おかけしました。私は大丈夫ですわ」


妹の肩に手を置いて、笑っている顔を睨む。


「なんで言わなかった?」

「笛を吹きました」


そっちじゃない。


「物が盗まれたこと」


妹が一瞬固まって、ごまかす時の顔をする。


「無くしてしまったんです。怒られるかと思い隠してましたわ」


「ノートに落書きは」


「誰かが間違えたんですわ」


教科書だけでなくノートも駄目になっていたか。妹は気にしていないが盗難は生徒会で取り締まる案件だ。


「バカ」

「最近はないので安心してましたわ。マール様にお礼にいってきますわ」


妹の中では物がなくなった件はすでに終わった出来事か。犯人を見つける気もないか。あとでフィルに事情を聞くか。


「マールは生徒会だ。今日は休め」


「エイベル、私は元気ですよ。怖くて倒れてしまうなんて、お父様に申し訳ないですわ」


なんで危機感がないんだろうか。父上はお前が怖くて倒れても怒らない。怖がらせた相手に怒りを覚えて斬るくらいだ。


「死ぬ気だったのか?」

「気配を消すしかできませんでした。明日からは睡眠薬を持ち歩きます」

「短剣持ってるよな?」

「研究物なんて恐ろしくて捌けません。もし、何かあれば研究生にも」


妹の頭を叩く。この様子だと死ぬ覚悟をして、なにもしなかったらしい。国の研究は大事だけど、それでお前が死んだらうちは殺処分する。両親も参加し、研究者も餌食になるだろう。


「いくらでもなんとかするから、次は足掻け。生きることを諦めるな。ビアードの者なら最後まで諦めずに足掻き続けろ。」


妹のとぼけた顔が真剣な顔に変わる。


「申し訳ありません。ふさわしくなるように努めます。」


顔をあげた妹は強い瞳で見つめてきた。


「それでこそ俺の妹だ」


俺の言葉に妹は勝ち気に笑う。もう大丈夫だろう。妹は決めたら意地でも守り通すから簡単に命を捨てないだろう。マールへの謝罪は後日にさせ、妹を寮まで送る。能天気に笑っている顔は死を覚悟したようには見えない。閉じ込められた件は調べようにも、もう学園にほとんど生徒はいないだろう。

学園に戻ると生徒会室も閉まっていたので、マールの部屋を訪ねた。


「マール、助かった。レティシアをありがとう」

「大丈夫か?」

「ああ。元気だよ」

「なら良かった。殿下に報告は終わっている。明日、彼女の話を聞いて処罰するだけだ」

「感謝する」


マールに礼をして退室する。すでに調査が終わっているのか。初めて妹に付き纏っているマールに感謝した。


***

放課後に生徒会室で事件の詳細を聞いて妹から表情が抜け落ちた。

妹が閉じ込められた一件はくだらないわりに、悪戯には度が過ぎている。

妹が我に返って勢いよく頭を下げたがその謝罪は何に対してだ?

加害者の処分を殿下に任せるという無関心な妹に周りの視線が集中する。殿下に試され無罪でもいいと即答した妹に役員達の生ぬるい視線と殿下から冷たい視線が向けられる。死ぬほど怖い思いをさせた相手を恨んでくれないか・・・。忘れっぽいのは知ってるけどもう少し根に持て。


「レティシアならどう裁く?」


冷たい殿下の視線に気づいた妹が頬に手を当て、澄した顔で悩み始めた。


「研究生の資格を剥奪。罪の意識を確認して、謹慎か修道院です」


「退学は?」


「研究内容を他国に伝えられてはたまりません。信頼できるまで監視できる場所に置くべきだとおもいます。研究の価値のわからない愚かな研究生を自由にするなど許されません」


「そうか。考えることはできるのか」


罰としては甘いが事の重大さはわかっているらしい。殿下が呆れた視線を妹にむけている。


「修道院が妥当だな。悪戯にしては悪質すぎる。研究者として有能らしいが残念だ」


妹が下を向いて目を閉じてまた考え込んでいる。嫌な予感がした。


「レティシア、余計なことは言うな」


驚いた顔を向けられ、妹の意図がわかった。たぶん庇って自分が抱え込もうとしていた。なんでも拾ってくる癖なんとかならないか。加害者を拾うのは認めない。

とりあえずこの件は片付いた。妹がお礼を言うとマールは物足りなそうに見つめている。何か謝礼でも要求する気だったんだろうか・・・。


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