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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
3章 青年期

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43 無理を通す、それがしたいから

 「いったい何がどうなってやがるんだ……」


 目の前に現れた7体の悪魔型の魔物、その中に村長夫妻の息子夫婦と同じ匂いを持つ個体がいて、攫われた7人の村人と今この場に現れた7体の魔物。つまりこれは――


 「人間ヲ魔物ニ変エテヤッタノダ」

 

 先ほどから喋っている悪魔がそう告げた。


 ありえない。人間を魔物に変えるなんてできるはずがない! それは魔物の核となる魔石を持たない人間には不可能、そもそも肉体の構造も種としても違うのにどうやって……。


 そういった疑問が出てくるが実際に二つの個体からは元人間の匂いがする。だがそいつらから放たれる気は人間のそれではない禍々しい波動となっている。


 「質問ニハ答エタゾ。 他ノ人間ハドコダ」

 「教えるわけないだろ! この人達を元に戻せ!!」

 

 ススムの拳が強く握られる。


 「ソレハ無理ダ。アノ”御方ノゴ命令ハ絶対ダ」

 「クッ……リリスか」


 やはりあのリリスが一枚噛んでいるようだ。ならば是が非でも聞き出さなければならない。こいつらの目的を……。


すると、ふと悪魔の視線がススムの仮面ではなく頭上のシロに集まっている事に気がつく。


 「ソノ頭ノ生物、ナンダ……」

 「グルルルルル」


 頭上のシロとにらみ合う、すると段々とその赤い目の発行が強くなっていく事に気が付く。それに合わせて魔力も収縮されているようだった。明らかにススムに向ける殺意よりもどす黒い殺意をシロに向けている。シロはいわばこの魔物の主人であるリリスの敵対者である『神』の使いのような存在だ、何かしら相容れない”何か”が存在するのだろう。


 「ソノ魔物ハ殺サナケレバ……死ネ!!」


 眩い紅の閃光が光った瞬間、悪魔の眼球から何かが出たのだけは確認できた。直ぐに首を逸らし寸前で回避するが首のあたりに火であぶられたような高温の熱を感じる。確認すると肩の部分の衣服は焼け、皮膚に火傷が付いていた。


 その攻撃は先程みた焼け落ちた民家の壁に空いていた溶けた穴を作った原因その物である。肉体能力を高め、それにつれて防御力も高まったススムにダメージを負わせた攻撃、明らかにそこらの魔物とはレベルが違う事を意味していた。


 (これは……まずいな)


 「シロ!! 離れてろ!」


 すぐさまシロを上空に投げ飛ばす、すると目の前の喋る悪魔が手を振り下ろす。それを合図に周りの悪魔も皆目に魔力を集め放たれる。


 まるで弾丸のように飛来する閃光をススムは一つ一つ寸前のところで躱す。閃光の攻撃は止まることなく雨のようにその場に降り注いでいた。だが躱しているとはいえ高温の熱線、直撃はしないもののその熱はじわじわとススムの体に伝わり体力を奪っていった。


 「ここはとりあえず…!」


 いつまでもこのままでは埒が明かないので一瞬の攻撃の間を縫って包囲から脱兎のごとく抜け出る。だがそんなススムの速度に付いてくる物体があった。決して手を抜いていないススムの足に食らいついて来たのはあの悪魔だった。


 (っ、速い!!)


 「潰レテ死ネ!」


 殺意と共に振るわれた拳を正面から受け止める。腕を交差させ真っ向から受け止めたススムの体はガードごと押しつぶそうと圧力をかける拳に後方へとずらされ地面が削られる。


 「な、めるな!!」


 ススムは拳を弾くと同時に相手を脚蹴りで跳ね上げた。あまたの魔物を葬って来たその蹴りだが上空に跳ね上げられた悪魔はその背にある漆黒の翼を広げススムを見下ろす形で対空する。


 「強イナ、我ガ体ガ蹴リ上ゲラレルトハ……」

 

 そのまま空に漂って降りてくる気配のな相手。ススムにも対空の手段がないわけではないが指輪を付けている今、どこまでできるか正直不明なところであった。すると悪魔めがけて小さい物体が飛翔してゆく。


 「キュイ!!」

 「な、シロ!! よせ!」


 空にいる相手は任せろと言わんばかりの声を上げてシロが飛びかかっていったのだ。だがススムの心配は杞憂であった。口を開いたシロはその身を白く発行させ白銀の光線を打ち出したのだ。その光線は悪魔の体を貫通するとまではいかないが焼いているようでダメージは入っている。


 忘れていたがシロは『神』が遣わしたクリスタルドラゴン。動作が可愛らしいので失念していたのだ……竜種の潜在能力の高さを。


 「クソッ、ヤメロ!!」


 飛びかかりシロを握りつぶそうとするが小さく流線形なフォルムのシロはその飛行の素早さもあり手玉に取るようにひらりと交わし光線を浴びせていく。


 ふとシロと目が合う。それはまるで『こっちは何とかする』と言っているように見えた。


 「分かった。時間を稼いでくれ!!」


 ススムは7体の悪魔と対峙する。どうやら元人間の悪魔達はシロと戦っている個体程知性は内容でうなだれるように「ウァ~」などと発する事しかしない。だがその外見はあの悪魔と全く同じである。先ほどの熱線もそうだがあいつと同等の力を持っていると思った方がいいだろう。


 「ウゥゥゥ、ウ゛ァァァァァァ!」


 まるで死人が蘇った魔物、ゾンビの如き叫びで向かってくるがその速さはのろのろと動く死体とはかけ離れていた。


 直線的に迫って来る悪魔、それを正面からススムは『神断流 花』の型で迎え撃った。組み伏せようと迫る手首を掴み取り合気道のように投げる。だがただの投げ技ではない。『花』は力の流れ、ベクトルに触れる型。手首を掴まれた悪魔は体制を崩し、ススムに首根っこを掴まれる。そして――


 「はぁぁぁぁぁ!」


 その頭を地面に叩きつけ上半身をめり込ませていた。


 ススムはすぐさま次に来る者の懐に潜り込み足首を掴み取るとそのまま後に続く悪魔に投げつけそれに巻き込まれる形で二体が共に民家にぶつかりつつ飛ばされてゆく。


 投げ終えた所に熱線が放たれるが『花』によって軌道を変えられ次々に空へと消えて行った。


 だが連続して突貫してくる悪魔は止まることなくススムに襲い掛かる。『虎』を使えばこの強靭な肉体だろうと貫き終わらせる事もできるだろうが――


 (もしかすると……少しでも可能性があるのなら……)


 神断流を使わないただの拳で悪魔と対峙する。そんな事を知る由もない悪魔は変わらずにススムへと襲い掛かる。次々に来る悪魔をススムはなるべく遠くへと投げ飛ばしていき一時的にその場にいるのは最初に襲い掛かった地面に刺さっている一個体のみとなった。


 そいつは既に地面から這い出して再びススムへと迫る。そんな奴の顎を殴りつけるとその個体は動きが止まったように地面に膝をつく。


 (やっぱり…基本的な構造が同じなのは普通の魔物と変わらない!)


 人間をベースにした魔物なら人間と同じような無力化が可能である事が多い。その大きながたいのいい肉体に比例して太い首はどんな攻撃にだって耐えられそうだが攻め方は如何様にもある。


 人間は脳を揺らされると一時的な機能障害に陥る。顎を殴ればどんあ大男だってその場から立ち上がる事はできない。


 完全にその個体の動きが止まり、一時的ではあるが一対一の時間ができた。


 ススムは賭けの意味で”術”を発動する。それはアーク師匠からはなるべく使う事は無いようにと言われ自らも使用を控えようと考えている禁術。代償は自らをこの世ならざる者、一次元上の昇華する事。


 あらゆる魔術や因果、法則、呪いにだって逆らい改変する『仙術』を発動させたススムは瞬間的に生物としての規範を超えた所に居た。


 その姿を見た悪魔の瞳から恐れが伝わって来る。本来、生物として人間よりも上の次元に干渉できる魔物だがその魔物ですら理解不能な”力”を宿したススムは魔物にすら恐れられる対象になりえた。


 ススムは指を揃え手刀の構えをするとそれを悪魔の胸部に突き刺す。だが鮮血が飛び散る事は無くその指し口からは血が漏れ出さえしなかった。まるで悪魔の肉体が存在しないかのように手がすり抜けていたのだ。


 (人を魔物にするなんて聞いた事はない。その直し方なんて検討すらつきはしない。この場でこの人達を殺してしまうのが一番簡単な方法だろう……きっと誰だってそれが一番の供養と言うだろう。でもそれは第三者の意見に過ぎない。きっと本人たちは戻れるのなら戻りたいに決まっている!)


 ススムの手に強い確かな感触が伝わりそれを引きずり出すように無理やり悪魔から引き釣り出してゆく。


 「俺はそんな無理を通す為に力を付けたんだ!!」


 引き釣り出されたのは一人の青年だった。出された元の肉体である悪魔はまるで水風船のように弾けて消える、意識は無いが確かにその青年は息をしていた。


 「バ、馬鹿ナ!! ソンナ事『神』デナイ限リ不可能ダ!!」


 一連の事を見ていたのかシロと戦っている悪魔が驚愕の声を上げた。


 「概念的ニ上書キシテイル! 時間ノ逆向サセテモ戻セナイノダゾ! ソレナノニ人間ヲ引キズリ出スナンテ……オ前、何者ダ!!」

 「やはりか……生物的に魔物に変わったのではなくて、魔物という存在を上書きして変えていたんだな。生物として魔物になっていたらもっと大変なプロセスが必要と覚悟していたが魔術的に変えているなら話は別だ」


 同じ悪魔がどういった事になったのかも理解できないのかまたススムへと襲い掛かる。ススムは迫る手を脚で蹴り上げがら空きになった懐に入ると再び手を突き刺す。


 「この魔物の中にある魂を魔物と切り離し、人間の概念だけを…引きずり出せばいい!!」


 再びススムの手によって村人が引きずり出された。


 「クソォ! ヤメロォ!!」


 シロの攻撃を背中に何発も受けながらそれでも構わずにススムへと突貫してくる。その時タイミング悪く同時に二体の元村人の悪魔が迫り同時に3体が襲い掛かる形になっていた。


 ススムは地面と水平に飛翔してくる悪魔に豪速で接近し防御の体制を取る前にその頭蓋に一撃拳を振るう。その一瞬後に迫る二体目に瞬間的にススムは踵落としで意識を刈り取った。


 だが既に背後に知性を持つ悪魔が迫りその剛腕がススムの腕の守りごと体を吹き飛ばす。


 「ガアアアアアア!!」


 力任せに振るわれた腕に吹き飛ばされススムは民家の壁を砕きぬき村の外へと飛ばされた。それは止まることなく木々をなぎ倒しながら森の中を貫通していく。


 それを狙っていたかのように悪魔は息を切らしながらススムが助け出した未だ意識の無い村人に歩み寄る。


 「ゼェ、ゼェ、ゼェ、今ノ内ニコイツラヲモウ一度魔物ニ――」

 「させるわけがないだろう!?」


 悪魔が振り返る前に強烈な一撃に地面へと打ち付けられ大きくその場が凹みひび割れる。


 「グァハァ……ドウシテ…コンナニ早ク戻ッテ…ソシテ……ソノ”カミ”ハナンダ!!」


 ススムの体からは電撃のような稲妻が走り先ほどまでの威圧感が更に増大されていた。それは一時的に身体能力を爆発的に上昇させる『雷虎』。ざっと500メートルは飛ばされていたがそれを”数秒”の内に走り戻り、拳の叩きおろしをくらわせていた。


 だが悪魔の質問はもう一つある。『雷虎』を発動させている今、様々な身体能力が上昇しているのでそれに合わせ生命力も増大している。それは削られるはずの生命力を上回るほどの増大量であった。つまり――


 「ソノ色ハ……忌マワシキ『アーク』ノ色ォォォ!!」


 ”黒い”髪をなびかせて拳を構えるススムがそこにいた。


 「今触れて分かったが、お前は人間が魔物に変わったんじゃないな。純粋な魔物だ。だったら――」


 『虎』の構えをとったススムは地面に倒れている悪魔向けて突きを放つ。


 「遠慮なく俺の拳を振るえるよ」

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