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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
3章 青年期

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44 不穏な兆し

ブクマが100を超えた!!

ありがとうございます!

 老若男女が固まり合い息を殺す。 


 村のはずれにて多くの避難民が互いに肩を寄せ合い一つの小屋の中に隠れていた。そこは普段使うことのない農具などがおかれた忘れ去られた物置小屋だが大きさだけはそれなりにあったので何とか村人全員を収納する事は出来た。


 「怖いよ……いつになったら僕たちは出られるの?」


 そんな悲しみと恐怖に満ちた小さな少年の声が一つこだまする。


 「もうすぐ出られるからな。ガドーさんが今悪い魔物を退治してくれているから」


 その少年の父親だろうか兄だろうか、それとも近所の男性だろうか。彼を励ます言葉が投げかけられるがそれは少年だけでなくその場にいる全員に等しく思い言葉だった。


 あの冒険者は魔物に勝てるだろうか。


 見せしめに破壊された民家を見たときこの村にいる全男性が束になってもかなわないことは直感的に理解できていた。きっとそんじょそこらの冒険者にだって倒せない相手だとみんな口には出さないが理解はしているだろう。


 でも、それでもこの一日づつ見知った顔が消えてゆく現状をどうにかしたかった。皆で賭けたのだ。もしも足りない報酬金、不明な相手、不正規な依頼、そんな条件の中でも来てくれる冒険者がいるのならばどんなランクでもお任せしようと。


 「それにしてもさっきの地揺れは何だったんだ」

 

 ある一人の男性が思い出したようにつぶやく。


 「もしかしてあれも悪魔の仕業か?」

 「まさか、村からここまでかなりの距離があるんだぜ? もしそんなことができるんだとしたらそいつは魔物なんかじゃない。正真正銘の……”化け物”だよ」

 「でもさ、その地揺れを最後にさっきまで聞こえていた音が聞こえなくなったじゃないか」

 「もしかして……ガドーさんはもう……」


 ギギイ、と扉が開かれる音が聞こえ全員がそちらの方向を向く。年老いた村長が手をかけていた。


 「ワシが確認してこよう。お前たちはここにいてくれ」

 「そんな、危ないじゃないかい」


 村長の妻である老婆が夫の行動を遮るように前に出る。


 「いつまでもここに隠れているわけにはいかないだろう。しばらくたってもワシが戻らなかったら先ほど決めたように隣の領地にある町までみんなで行くんだ」

 「……」


 一番危険が伴う行為を買って出た村長を止める声は無かった。


 「では行ってくる」



 村長はその年老いた老体に鞭を打って一人森の中を進んで行く。


 村人全員で避難した道のりを戻りやっと村が視界に入るところまで来たときその村の光景に立ち尽くして動くことができなかった。


 破壊されることなく見逃されてきた家々は軒並み崩壊し、無事に立っている民家はほぼ存在していないに等しかった。


 ゆっくりと自分の村”だった”所を進んでゆく。


 破壊された家以外にも地面はひび割れ、また高温で熱せられたのか地面が融けていて一本の線が描かれたようにその直線上には何も存在していない。その地割れや直線がさらに集まっている方向へと歩みを進めると違和感が出始めた。


 本来そこにあるはずの家が無い、建物が無いと言うよりも地面が無い、むしろ村が無かった。


 村の半分を過ぎたあたりから先、そのすべてが大きな窪みに飲み込まれていた。まるで隕石が落ちてきたかのような綺麗なクレーターは村の半分を削り取るようにぽっかり空けられている。


 「な、んだ、これは」


 その異様な光景に呆然としてた時、背後から明らかに人間の物ではない咆哮が放たれる。村長が振り返った時には悪魔が既にその手を届かせんとしているところだった。


 「グア゛ァァァ!!」

 「ひっ」


 あまりにも早い襲撃に言葉の一つも出す事が出来ず、視界が悪魔の手で覆いつくさる……が数秒たってもその手が届かれる事は無かった。ゆっくりと恐怖で閉じていた瞳を開くと白髪の仮面を付けた者が悪魔と自分との間に立っている。


 「村長さん、大丈夫ですか!」


 その魔の手は眼前でススムによって止められていた。右手は悪魔の腕をつかみ取りその自由を奪う、左手は淡い光を放ちながら悪魔の体内へと突き刺されていた。


 「グアアア、ゴアァァ」


 村人を攫っていく悪魔は流暢に言葉を発していたはずだがその口からは苦しみの物と聞こえる悲痛な叫びだけが発せられている。


 「呼んでないのに出てきちゃ危ないですよ、っと」


 ススムの手が引き抜かれると同時に悪魔の体内から何かが引っ張り出されるとあの恐ろしく凶悪な悪魔がまるで水風船が割れるようにはじけて消えていった。


 「よし。これで最後だ」

 「ガ、ガドーさん。これはいったい……」


 村長から疑問が投げかけられるが本人もすでに分かっている上で問いを投げているのだ。この凄まじい傷跡は悪魔との戦闘によるものだと。そして悪魔は村長の目の前で消え去り、ガドーが立っている、それはつまり――


 「勝ちましたよ。もう悪魔の脅威はありません」

 「……あぁ。なんてことだ」


 村の誰もが心の中で思っていただろう。Fランクなどには倒せるわけがないと。その予想を覆す結果に言葉が出なかった。


 「それとこの人は村の方で間違いないですよね?」


 ススムが指示したのは先ほど悪魔の体内から引きずり出された”何か”だった。最初は悪魔の体内から引きずりだされた内臓か何かだと思い目を逸らしていたが、その正体に気が付くとその場に膝をついてしまう。


 「……それは私の息子です」

 「良かった。安心してください、ちゃんと生きてますからね。他の6人も」


 ススムは軽々意識の無い村長の息子を抱え上げると力なく膝をついている村長の手を取り誘導し始めた。


 「あちらに他の人はいますので」

 「……まさか!」


 大きくくぼんだクレーターから少し離れた場所、まだ崩壊していない民家の軒先の下に六人の男女が横たわっている。その光景を見た村長は驚きを隠せなかった。


 「そんな……てっきりもう皆死んだかと」

 「攫われた人達はこれで全員ですか?」

 「はい。あぁ、息子の妻もおります……なんとお礼を言ったらいいか」

 「構いませんよ。それよりも村を壊してしまったみたいで……」


 ススムがあたりを見渡しながら申し訳なさそうに謝罪する。


 「こんなの村人が生きて帰ってきたことに比べれば小さな事です! また一から立て直していけばいいのですから」

 「そう言っていただけると助かります」

 

 ススムは方に乗せていた男性をその場にそっとおろす。


 「いったいどうやってこの者達を助けたのですか?」


 答えずらい質問がススムに投げつけられる。魔物に変えられていたので無理やり元に戻しました、なんて言っても信じてもらえるだろうか。


 「まぁ……魔物に吸収されていたので引っ張りだした、みたいな……」


 流石に「貴方の息子が悪魔になってました」なんて事を言うのは憚られる。


 「それとこれはあの悪魔が持っていた魔石です。村の復興の足しにでもしてください」


 ススムは懐から一つの魔石を取り出し村長の手に置く。


 「よ、よろしいのですか!? 魔石は倒した冒険者に権利があるとお聞きしましたが……」

 「いいんですよ、けっこう派手にやってしまいましたしね。これぐらいの援助はさせてください」

 「わかりました。ありがたく頂戴いたします」


 そう言ってススムの”懐から出された”魔石を村長は受け取った。


 「それじゃこれで依頼は完了って事ですね」

 

 村長に踵を返すようにススムはその場を後にしようとする。だが何故か事を急ぐススムを村長は引き留める言葉をかける。


 「そんな! せめて今夜だけでもこの村に滞在してもてなしをさせてください。我々ができるあなたへの恩返しはそれぐらいしか……」

 「私も是非お呼ばれしたいのですが、この後片付けねばならない急用ができましたので。失礼します」


 ボワッ、と突如起きた土煙と共に村長の視界が阻まれ収まったころには既に冒険者ガドーの姿は無かった。


 「いったいあの方は何者なんだ」



             〇


 「お帰り、シロ」

 「キュイ」


 ヒョイ、といつもの定位置に白銀に輝くドラゴンが乗る。


 先ほどの村からそう遠くない森の中にて別れていたシロとススムは合流を果たしていた。


 「それにしてもあんな光線を出せるなんて知らなかったぞ! やるなシロ!」

 「キュイ、キュイ~」


 喋る悪魔を足止めする際に放出していた攻撃、あれは相当な攻撃力を持った物であった。あれならば硬い外皮を持った魔物ですら貫く事ができるはず。


 「これならいろいろシロに頼める事もできそうだな!」

 「キュイィ!」


 『任せて!』とでも言いたいのかその鳴き声は自慢げに聞こえた。


 「さて、お詫びとして金貨”1000”枚の魔石があれば復興には十分だろうし……」


 ススムが先ほど渡した魔石はあの悪魔の物ではなく元々ススムが持っていた魔石である。人間が魔物に変わった悪魔からは魔石らしき物体は出てこなかった。つまり――


 「さてと、詳しい話しを聞かせてもらうぞ」

 「ガァ……ガァ……」


 途切れ途切れの息を吐きながら岩壁にもたれかかる悪魔がそこにまだ存命していた。


 『虎』による一撃は悪魔のありとあらゆる肉体組織に伝わりその隅々まで砕き、その役目を果たせない程に破壊していたが命を奪う事は無かった。衝撃事態は体を貫通して地面に流れるようにしていたのでギリギリ生きている状態に保つことが出来ているのだ。


 「答えろ、なぜ村人を魔物に変えるなんて事をしていた」

 「……」


 当然ながら返事が返ってくることはない。悪魔は知りたい事を知る事ができないススムの状況を理解してか不敵な笑みを浮かべていた。きっとこのまま流血で死ぬまで秘密を喋る事は無いだろう。


 するとススムは自らの仮面を外しその素顔を晒し、その顔を見た悪魔に動揺が起きる。ススムは村を襲った事に憤怒しているわけでもなく、答えを知る事ができず悔しがる様子もなく、ただ無表情で悪魔を見つめていた。


 ズシャ


 ススムの手刀によって悪魔の胸から鮮血が飛ぶ。先ほどまでの仙術でのすり抜けではなく物理的にその手は体内へと少しずつ侵入していった。


 「ガッ、グワァァァァァ!!」

 「残念ながら俺は聖人君子ではない。必要とあらばこんな非道な事だってするさ。皮肉だな、知性があるってことは同時に痛みや恐怖を理解できるって事だ」


 じわじわとススムの手刀が体内へと入る。


 「ヤ、ヤメ…グワァァァァ!!」

 「実は俺には一つだけ実用的なスキルがあってな。『治療術』。レベルが1なんだがそれは細胞を少しずつ修復する程度でな、かすり傷だって塞ぐのに1日かかる。でもな――」


 ススムがスキルを発動すると回復であるはずのスキルのはずが悪魔に激痛が走り絶叫を上げる。


 「傷ついた細胞を直すと周りの神経細胞も直してな、これがまた痛いんだ。昔の俺もベットの上で転げ回ったよ」


 傷口の神経を修復するときの激痛、そしてその修復された傷も再び傷つきまた激痛。どんどん手刀が奥に入るほどその痛みは増していく。


 「さぁ、何か話す気になったか?」

 「ガァァァァ!!」

 「おや、これはお前の魔石か? もうお前の核に触れたぞ?」


 指先にかける力がどんどん強くなりそれは弱まる事は無い。


 「ハ、話ス!! ダカラ――」

 「おっ、本当に話すのか。てっきりそのまま死ぬつもりだと思ってたよ」

 「ガァ、ガァ、人間ヲ魔物ニ変エテイタノハ”兵”ノタメダト教エラレタ……」

 「兵?」


 ススムは手を抜き取り魔物の言葉に耳を貸す、だがその一瞬の油断を悪魔は見逃さなかった。ばれない程度に眼球に貯めた魔力を照射する。


 「っ!」


 突然の反撃にすぐさま構えて応戦しようとするがその熱線はススムに放たれた物ではなかった。手刀によって開けられた穴に向けて放たれた熱線はそのまま自身の核、魔石を砕きそのまま体を貫く。


 「グワッハハハ、残念ダッタナ人間ノ戦士ヨ。ソシテ恐レルガイイ」

 「……」

 「我ガ主ノ威光ニヒレ伏セ……」


 その言葉を最後に悪魔は力なく倒れた。魔物の命である魔石を壊すのは……即ち死。


 「……自決か。それほどの忠誠心か、そういう風に作られたか……」


 兵、そうあの悪魔は言った。それは文字通りの兵隊だろうか、それとも別の意味があるのか……。とにかくリリスは何かを始めている事だけは確かになった。


 「そういえば連れ去りが始まったのは3日前、俺がアビスから出てきたのも3日前。リリスが突然行動を始めたのなら原因は俺にあるのかもな……」


 動かなくなった悪魔から離れていくススム。何にせよ――


 「ぶっ潰してやる……」

よろしければブクマと評価えおお願いします。


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