第61階 観光日和
魔界観光編始まります。
「んっんー!」
はぁ〜、よく寝むれたと
一言その場に置きたくなる程に
ぐっすり眠っていた私は
嫌に物静かで孤独を感じた
「ハツミ!いま起きたんだ!
マテハが料理してるよー!!」
元気ハツラツな声が
ガンガンに響く
若いって良いのぉとか
なんとか茶が欲しいと思ったら
マユナがにっこり微笑んで
温かい梅昆布茶をサッと置いてくれた
私はすすすすと飲み進めていたら
パタパタとイムが慌てながら
料理を運んでくる
う〜ん!ガルーダのオムライス!
肉質は厚く白身魚の様な解れやすさの
珍品であるガルーダのお肉と
黄金に輝くガルーダの卵黄を使った
シンプル料理
肉を歯で裂く楽しみを味合う為に
わざと大振りなままチキンライスとして混ぜ合わせる為に包む卵から
はみ出るのが特徴的
ガルーダ自体が強力な種である為に
狩るのが面倒な事と個体数が少ない
更に強力な魔力を併せ持つので
魔法に疎い種族が食べると
魔力過多で酔いの様な状態になって
死んでしまう場合もあるみたいね
集団で多種族を襲う
狂気に触れた邪悪な種が
乱獲されて保存される
現代では半ば大災害の様になっている
保存は簡単で外界からの
特別な干渉を受けなければ
半永久的に腐らない為に
強い戦士の貯蔵庫などには
常備されている
第七世界の言葉で例えると
永久保存可能なフグが近いかなぁ
カチャ..カチャ..
「へぇ〜偉いわねぇ!」
ビクッと震えてそそくさと
部屋を後にするのは
スプーンを並べ終わった
命君だった
あれって..マテハの元に
戻ったのかしら?
お母さんに甘える幼子の様ね..って
生まれたばかりだった。
肉体の年齢が高い個体が
使われているせいか
本質的な事を見失うわねぇ
マユナが器用に
ガルーダのオムライスを
3皿持ってくる
その後にマスカリアと
命君が1皿ずつ
イムが果実のジュースと
コップを持って来て
マテハの
「これで全部だよー」
と言う声が聞こえる
4人は席について
「マテハ!美味しそうだよ!」
と現れたマテハにそう告げた
私は年甲斐にも無く
わくわくしていた
「味はどうだろうか?
ハツミのお母さんに教えて
貰ったレシピなんだけどね」
旨く出来てるかな〜なんて
マテハはぼやいていた
全員着席したところで
誰からとも無く
いただきますの
合図で食事を始めた
サラッと肉毎スプーンで
柔らかく切れる感触を楽しみながら
私は一口目を頂いた
卵の感触が舌に微笑む様に
自然と絡み合う
ほのかな甘さもそれを後押しする
そして消え入りそうな幻想の様な
黄金に現実味を与える白い宝石
米の感触が溶けた黄金の幻想を
再度呼び起こす
そして幻想と宝石が
純粋に溶け合った頃に
小さく裂けたガルーダの
ホロホロお肉が総てを攫って行く
「「「「「んーっ!!」」」」」
みんなして感激している
命君もパァーッと表情が
花が開く様に変わっていった
朗らかな朝の日差しに当てられた様な
幸福が私達を優しく駆け抜けていった
白いお皿を覆っていた
黄色や赤が消え入り
白に移り変わって来た頃
私は果実のジュースに御満悦していた
そろそろ切り出したい
"魔界観光"を
魔界は本来危険に満ち溢れた
暗黒の世界だけども
全く心配はしなくて良い
東の大国で戦ったあの5人の
次元の猛者は存在しない
1人で魔界は闊歩出来るだろう
強さを示せば祭り上げられるかも
しれない
あの竜型の火、上級火魔法は
古代の魔法形態の最終の第3段階で
かつて君臨した大魔王が
好き好んで使用した魔法だった
魔界の基礎を創ったとも伝えられる
偉大な大魔王だったらしい
竜に愛された勇者一行に
討たれたらしいけれど
さてと..
「皆んなでさ観光に行かない?
魔界へ」
私が切り出し始めると
様々な意見が飛び交った
お弁当はどうするのとか
どうやって行くんだろうとか
どんな場所何だろうとか
魅力的ではあるねとか
「まぁ、気にしないで
昼食ぐらいあると
ゆったり出来て良いわね」
私は一言でサラッと片付けた
そして続けた
「魔界の門はこの城にあるから
昼食作って出掛けよう」
「ぶち破るのではなくて?」
マテハがサラッと新しい門を
ご開帳する旨の発言をした時は
笑ったけど
でも、そしたら一躍有名人かな
確かに出来るだろうけどねと
思いながら
サンドイッチを作る事になった私達は
好みの具材を挟んで包むだけなので
あっという間に個性豊かな
サンドイッチが生まれていった
とはいってもマテハに
好みを申告するだけだけどね
「さてと、何処にあるでしょう?」
ふふふふと私は問題形式にして見た
「玉座の後ろ!!
絶対そうだよ!
魔王いるもん!」
イムが元気良く答える
「あはは、いそうだけどね」
それは第七世界の物語の中の
話じゃなかったかなぁ
「あれ...この道は書庫に行く時の
道だな..って事は書庫か!」
マスカリアがにひひと
嬉しそうにしている
「おぉ!正解だね!」
「やったぁ!!!」
マスカリアの嬉しそうな響きと共に
私達は書庫へと向かった