表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

301/302

第300階 三度目の命の雫の目覚めの日 生きていた道

「ラナンちゃんは提供された料理を食べて、わたくしと会話を楽しんでいただければいいわ。

それとここでのすべては皇帝に七賢人はおろか西の大帝国中からプライバシーを保護しているわ」

 先代さえも。 と付け加えるオーニソ。

フルールさえもということね。

「基本、皇帝か七賢人には筒抜けなんだ?」

 怪しい笑みを浮かべて、笑顔に切り替えるオーニソ。

取り合えず、飲み物が注がれる。

ほのかな時の交じりは料理を提供するため。

「語弊があったわね、その気になれば大枠は掴めるだろうけれど今回は無理よ。

わたくし、空中離宮グレズィルを多少、弄繰り回しましたのよ」

 【世世】もそう言ってるわ。

オーニソは後方支援方面にかなりやり手のようだわ。

「それで何を問いたいのかしら?」

 オーニソは待ってました、といわんばかりの大輪のような笑みで応える。

「最近の西の大帝国への転生者で二人、素性が定かではない。

もとい、調べられない二人がいるのよ。一人はラナンちゃんと、

そのラナンちゃんと同じクラスのサザンカ」

 サザンカ? 誰よそれ。

「カランコエさんは私達より先に進んでいた人間世界を導いて

滅びの宿命に抗って、それでも死んだ鬼才である伝説上の紅白巫女。

初一 樹実梨(はつさね きみり)の生まれかわりですのよ」

 実に美しい転生法を構築して、それでも転生できるかは五分だったみたいですけれど。

そう補足しながらオーニソは軽く微笑んだ。

「アルタイル御兄様は、第七世界の青き星を管理観察するために配備された生きている玩具。

神々のシアの精神が死によって覚醒、昇華した、わたくし達に連なる者でありますわ」

 ここで一つ目の料理が届く。

「レアル・グランを金色の衣で包み込んだ揚げ料理ですわ。

銀色の穀物を水に浸し、ふっくらとさせたものの上に乗っかっておりますの」

 タレのようなものがかけられていて虎柄になっている。

それを口に運ぶ、そして噛みしめる。レアル・グランと呼ばれたその肉は肉汁を

垂れさせ潤滑油のように、すべての風味をなだらかにまんべんなく口へとトロけさせた。

「美味しい」

 私の発した一言にオーニソは笑みを絶やさなかった。

「西の大帝国が誇る最高の特別ですわ。超が付くほど伝説級に希少で

エース候補への就任のお祝い時にプラに初めて食べさせていただきましたのよ」

 うん? ちょっと待って

「オーニソ!? 私」

「言わなくていいですわ、気になさらないほうがいいですわ」

 私は【黎宙】に入団したばっかりで、階級は最下位なんですけど!

まぁいいわ、美味しいものはありがたくもらっておきましょう。

すっごく美味しい。

「幸せそうで嬉しいですわ。先程の続きを。

サザンカはわたくし達に連なるんですけど、何か違和感がありまして

ラナンちゃんは全く別の異世界からなのですのかしら。本当に憶えていないのかしら?」

 私はレアル・グランを噛みしめることに夢中だわ。

「その違和感って魂を汚されたとかじゃないの?」

 死ねば魂の穢れは消えていくけど、呪いとか強い思いで縛られると

魂はとても速い速度で徐々にその性質を失って別の性質のものに変質する。

「そもそも太陽の誰かなんて、候補が多すぎてわかりませんの。

かつての『黎宙』である『黒空』の誰かではあるのでしょうけど」

 かつての【黎宙】ねぇ。

「名を改めた理由は? それは聞いてもいいのかしら」

 オーニソは黄金のレアル・グランを、上を少し向きながら、

珍しく少し行儀の良くない食べ方で瞳の色を上手に隠しながら

ゆっくり音もなく咀嚼し飲み込み、同じ顔の向きのままこう告げたわ。 

「死の象徴だから。たくさん殺されてたくさん死んだから。

なーんてね!」

 声色は冷たく氷のようだった、でも

最後の一言だけはいつも私に見せるオーニソだった。

「ほんとうのところは。気になるけどオーニソが困るならこれ以上聞かないわ」

 オーニソははっと目をほんのかすかにそらす。

「うーん……ほんとうのところは知らないわ、正直。

でも新しい気持ちでっていうのは確信をついていると思うの。

実際歴代のエースは二十年に一度狩られている、それに『黒空』は

秘密の側面を強く持ちますわ、それを表舞台に引っ張り出したのが

当時、在位していた皇帝の名は『エンケラドス』。今の『黎宙』としてですわ」

 現エースのプラ先輩も狩られるのだろうか。

待って、先代のフルールは狩られていないわね。

それにエンケラドス。

「プラ先輩は? 大丈夫なの」

「ありがと。ちょうど十年前、そして七年前に先々代のエースが殉職しているわ。

だから年数を考えればプラは大丈夫に傾きますけれど、こればっかりは」

 時期が縮まっているのかしら?

「七年前っていうのは時期がずれて早いわね」

 オーニソは口をほんのりつぐんだ。

迷いが生じたのかしら。

「第三次 月人戦役の二週間前ですわ。『黎宙』と『黒空』の

エースの死の詳細は表の歴史書では掲載されないですし、

だから私達は西の大帝国の闇へと足を突っ込もうとしているのですのよ」

 裏で紡がれる歴史書を開くか。

面白そうじゃない!

「オーニソが闇への扉を開いてくれるってことで合っているかしら?」

 そう口にした瞬間、水神龍の生肉の炙りが時の魔法によって運ばれてくる。

「それはそれは面白いですわ。まぁ、美味しそう!とりあえず食べましょうか」

 オーニソは一切れ口に運び小さな口で

味合うように少しずつ吞み込んでいっていた。

私も少しずつ噛んで。

「うま!」

 噛んだ瞬間に濃厚な花弁が十数枚重ねられた花が咲くように

美味しさが口の中でとろけて咲き誇る。

とろとろととけて消え入りそうな旨味を私は口の中へと押し込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ