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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

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286/287

第285階 二度目の命の雫の目覚めの日 異空間

 世世を使ってクラと剣を交えたから疲れてる、

そんな事はなくって。

それでも起きるのは得意ではないわ。

 今日はカランと会う約束で。

 続きにしようかしら、カランの訓練の。

手頃な魔物とかいればいいのだけれど。

さすがに西の大帝国内にはいないわね。

 何か生物は生息しているみたいで、よく王院の昼間の食事で食べているわ。

集然(わたしのまほう)でちょっと意地悪な機械生物でも創ろうかしら。

追加で少しだけ寝て起きて、カランに会ってから考えましょ。



 私は王都から個人の魔法を使わずに訪れる事のできる、

もっとも距離の離れた地にやって来ていた。

カランはエトワール・フィラントに乗ってこの地に来る予定。

 この地に用があるんだって、指定されたわ。

気候はほんのり温かいかしら。

見渡す限りの緑だわ、草原ね。

 西の大帝国と、私は思考の言葉に詰まる。

 最も東に位置する、今立っている場所。

見上げた先に、私は気付いているつもりで

気付いていなかった一つの事実を痛感していた。

 私達が、【ミリカンテアの勇者】が

【アオナ・エカルラート】が築き上げた地。

【央界 スルグレ】

 私が築いた地を西の大帝国の

太陽人達はこんな風に見ていた、なんて。

その事実が私を支配した。

 青き星の民は太陽から飛来する人、太陽人と呼称した。

それは滅亡を悟った人々の微かな死への抵抗。

最期の音。

 【央界】の最も頂きに座するのが【トーラルカエ】。

(アオナ)の創造した大事な地、大切な場所。

懐かしいわね、彼等彼女達(皇帝と七賢人達)と剣を交えたあの日は。


 エトワール・フィラントは、

今日も目に綺麗な色彩を与えてくれるわね。

 もっとも世世に言わせてみれば、

見た目の良さとか派手さとか綺麗さに意味はないって。

重力とか摩擦力とか風の抵抗とか、

物理法則の影響から外れる

魔法の組み合わせが施されているんだって。

 だからシャープなフォルムもかっこよさもすべてお飾りで。

目立って、印象に残ればなんでもいいんだって。

確かに第七世界の青き星の新幹線を

より鋭く、より美しく色付けした感じはあるわね。

「お待たせ!」

 到着ポイントで待っていた私を見つけてか、

カランは早足で私に駆け寄ってくる。

身軽そうな服に身を包んで、笑顔で手を振ってくる。

「私は魔法で来ちゃった」

 手を振り返しながら応える。

橙色の長髪が早足の速度に揺れながら、カランは驚いている。

「はぁああああ!? いやなんだよ、それ!

いや、すごい事は分かってるつもりだったけど......

ラナンは相変わらず、すごいんだなぁ」

 カランの護衛役としての指導役を任されているので、胸を張りたい気分だわ。

今日はそういう関係ではなくって、出会った頃の友人感覚で過ごしたいわね。

「いえいえ、ところでなぜ最東端ソレイユを指定したの?」

 風が吹き抜きて、草が揺れて、抜けた数本の枯草が舞う。

西と央は確かに争った、でもそれは頂点同士で決着が着いたから。

だからこの地も太陽人達の血で汚れることはなくって。

「私は色んな異世界に転生して過ごしてきた、

それでもこんな二大強国に挟まれるなんて初めての経験だって思った」

 西の大帝国は人類の到達できる最高到達点を更新し続けている。

最強の人類が集っていると称しても過言ではないわ。

その地と同様に、私達の築き上げた地もそう称してくれるのね。

「だから体験しに来た、うーんまぁそれだけ? みたいな、あはははは」

 へぇ、いいじゃない。その考え方。実にカランらしいわ。

たった今、私たち二人は二人っきりで二大強国に挟まれる体験をしている。

そういうことになるわね。

「いいんじゃない、そういうの。私は好きよ」

 驚くカランに、私は思うの。

肯定されるとは思ってもみなかったなんて顔をしないでよ。

友達でしょ、ねぇ。カランってば

「ラナンにさ、認めてもらえるってすごく嬉しい」

「私が鬼師匠みたいじゃん」

 表情で察する、うん分かる、本当にそういうつもりじゃないらしくて。

私とカランの距離はきっとあってお互い牽制し合って、踏み込んで。

師弟で友達で、上司と部下で。

「ごめん、ごめん!そういうつもりじゃなくってさ」

 私は真っ直ぐに目を見て、頷く。

「分かる、大丈夫よ。あれ? フユさん?」

 エトワール・フィラントから見た事のある人が降りてくる。

今日はよそ行きだわ、黒基調の服で。

あ、こっちに気が付いて手を振ってくる。


「いやぁ、不思議ですねぇ。まさかこんなところでお会いするなんて」

 灰色のショートボブの毛先が微かに揺れながら。

カランが呼んで、私も了承した。

「ここは辺鄙だから、王院生には誰も会わないはずなんだけど!?」

 分かりみが深過ぎて吹き出しそうになっていた。

まさかこんなところでフユさんに会うなんてという驚きが強過ぎるけれど。

「一度だけ、クラレットお嬢様に連れて来られて。

それ以来強くなりたいとか悩みが深まった時に日常を忘れるために来ます」

 カランはフユさんの両手を無言で握りしめた。

一瞬驚いたフユさんだけど、カランの表情を見て理解したのか。

深く頷いて理解を示していた、実はカランもなの?

「クラにとっても何か強い感情を抱かせる地なのかしらね」

 二人の強くなりたいとかは

ひとまず置いておこうかしら。

昨日、会ったのにな。クラには。

「……女神様。

お嬢様は央界の頂の方に視線を預けながら、そう呟かれたんです」

 クラ。昨日は本当に元気にしていた、

明るくて気さくでなーんにもなさそうに。

 そうだわ、剣を鍛えるために、

あの境地に辿り着くために

どれだけの想いを紡いでいったのか。

 私は知らない、知ろうとも

していなかったのかもしれないわ。

「見えない思いはみんなあるのね。一つ解決しちゃおっか?

カランとそうなるかもって思っていたし」


ーーせかい ひとつ

ーーせかい つかむ

世世。

 世界が一つ生まれる。

それを世界創造だと、神の偉業だと称えられる。

 私は右手を空間に押し込めた、

私の手首から先は、水面に浸るように見えなくなっていた。

 そして左手でカランの手を握った、

カランはフユさんの手を握る。

空間に吸い込まれるように私は彼女達を引っ張った。



 何もない空のような色をした場所の上で

靴を履いた足で自然と立てていた。

カランも同様で、フユさんは尻もちをついて慌てて立ち上がった。

「ひゃいっ!」

 自身が風のように浮いていることをとても驚いているみたいだった。

そのまま警戒するように周囲をつぶさに確認していたわね。

「安心して、私がすべてを掌握している世界だから」

 人だけがいない、西の大帝国。

宇宙を超越した超宇宙、その超宇宙を

凌駕した世宙(よぞら)が広がる。

 【央界】はないのよね、

情報を曝け出す事になっちゃうし。

「ほんと驚くよなぁ、ラナンの世界は」

 あーもう、めっちゃ驚いているわ。

こっちをまじまじと見ないでフユさん。

「この......ほぼ私達の現実と変わらない

異世界を作ったという事、なのでしょうか」

 私は無言で頷く。

原理としては地図なのよね、だから自然は在っても人はいないわけ。

使おうと思えば、どう攻めるかどう陥落させるかにも使えるわ。

「ありえない......そう否定するのは、目を逸らすのは簡単ですよね……。

でもなぜ今、見せつける必要があったのでしょうか?」

 苦しそうに声を振り絞るフユさんの感情はごもっともで。

それに呑まれた魔皇の過去が無数の手となって這い出てくる。

それでも私は無言で意味を弾く。


ーーひかり はぜる

世世。

一閃。

 一文字に彼女達2人の後方を引き裂いた。

大宇宙を越えた世宙の果てまで瞬時に届きそうな速さで。

 星を星の集まる銀河を砕いたことによる爆風が

赤く血の様に吹き出して八岐大蛇の如く襲い掛かってくる。


ーーつなみ はぜる

世世。

 八岐大蛇の如く暴れる爆風に

浴びせ被せるように引き起こした。

 夥しい量の水が高速で渦を巻いて天を覆い尽くす。

襲い掛かる爆風とぶつかり合い対消滅を引き起こす。

これは味方だわ、人を救う魔法(つなみ)

「まるで終末かよ......!!」

 カランはその光景の

すべてを焼き付けるかのように

周囲を見渡している。

 怖いもの見たさ、そして俯く。

そんなフユさんに私は声をかける。

「強くなりたいのよね? 

火の四大貴族としての矜持が大事だと貴女は言った。

クラと共に歩むなら私は知るべきだと心より思う」

 私は丁寧にお辞儀をしてみせた。

それでもフユさんの瞳には

恐れと羨望が混じった色をしていたような気がしたわ。

「私には..….無理です!」

「勘違いしないで、これは私の領分。

誰かが私の領域まで足を踏み入れられるとは一切思ってはいないの。

本質はフユさんが私から何かを習いたいのか、習いたくないのか問うてるだけ」

 意地悪なやり方だったと思うわ。

だってフユさんは本当に苦しそうな表情をされているのだから。

「......こんなことを言うのは

場違いだとは思ってはいるのですが、

私は強くなれるのでしょうか?」

 私は無言で頷いてみせた。

それは私が知っているから。

そうしたいから、クラを尊ぶ同士として。

「私はクラを尊ぶものすべてに可能な限りを与えるわ」


ーーしろい まほう

 それから私は片手でカランに魔法を打ち込んだ、

留められる量を考慮しての大きさと威力だけど。

 回数を熟す毎に留められる量は飛躍的に上がっていったわ、

自主練ちゃんとしていたみたいだわ。

「はぁーーーーっ!!」

 もう片方の手の《しろい まほう》を

目掛けてフユさんは斬り込んでくる。

 真っ直ぐな刃。

基本に忠実で、師事された事を

日々の鍛錬で毎日の積み重ねて物にした。

 そんな日々の情景が思い浮かぶわ。

その剣も御給金を貯めて買ったのでしょう。

手入れも良くされていて、

長年愛用しているのに斬れ味が保てている。

 その剣の刃の横から《しろい まほう》で

撫でるように振り下ろし舐める。

フユさんのバランスが崩れて後ずさる。

 残念ね、これがクラとの差。

愛されているクラと、愛されているでも

愛されていないでもないフユさんとの明確な差。

「どうしたら、いいのでしょうか。私は......」

 剣が重たくなってきている様子。

実際のところ、彼女はよくやっているわ。

 それでもセンスが天賦の才が

少しばかり足りていないから、

必要以上に疲弊するんだと思うわ。

「繰り返すしかないわね、体力を向上させようか?」

「えぇ、そうですね......」

 基礎がなっていないとかではないわね。

単純に一つ一つしっかり憶えていっている。

要するに傷を付けるための殺すための剣技が足りていない。

 クラはそれを天賦の才で身体を動かす才で補っていた。

だから私はアオナで決着を付けた。

クラに師事した人間は死を知っているわね。

「ラナンさん、こんな事を言うのは大変失礼だとは思うんですけど、

剣を初めて握る子達と()()()()()()()()()のになぜ太刀筋だけが

正直、お嬢様より鋭く重いんでしょうか、圧迫感とかの類です」

 フルールにもクラにも言われたわね。

まぁ、いいか。それも加味しての訓練だし。

だってこんなにも落差がある存在は私以上にいないじゃない。

「気にしていないわ。それにその落差が将来、フユさんを救うわ」

「「!!」」

 カランも反応した? ふーん、気になっていたのね。

「相手の力量を正しく計り認識する事、それが私的にはすべての戦いの基礎よ。

ちゃーんと冷静に計れているじゃない。私は初心者並みだけど。

クラレットお嬢様より剣圧に優れているって」

 ちゃーんとフユさんに聞いてもらえるように

《しろい まほう》で圧す力を弱めた。

 カランへの魔法の威力も同じ、

少し多い量から自然に留められる量へと。

「えぇ、そうですね。そのように認識しております。

ただラナンさんは底が視えないというよりも

ほんとうにないのでは? と思います……」

「魔力を留める! その先の先があるのか!? ラナン師匠!」

 あら良い線ね、カラン。師弟って感じだわ。

「異空間から魔法を呼び出す……? 非効率過ぎませんか? 

異空間と繋げるのに割く魔力の負担だって大き過ぎて運用できない」

「フユさん、それは私の領分だとお伝えしたはずよ。

だから手が出せなくて当然だし、それを教える気はないわ」

 フユさんの剣に力がこもる。

それは冷静さを欠いて力んでしまっていることを意味している。

魔皇の魔法は西の大帝国(人類の遥かな高み)の常識すら貫いていしまう、そういう仕様なの。

「貴女がすべきなのは、今まで培って習ってきたもの全ての先人に敬意を払って。

それを噛みしめて吸収しきって、異質で歪な自分と混じり合わせて。

こちら側においでフユさん」

 わざと鍔迫り合いに持ち込んだ、

彼女の怒りを押し込めた瞳が私を捉える。

 力んだフユさんに負けて吹き飛んだように、

私は自身の身体を風に変化させて後退して

距離をとる。

()せてあげる、技を」


ーーていし しんり

ーーはやい わたし

ーーさゆう おろす

世世。

 私が目の前にいること、いたこと。フユさんはひどく驚いた。

それはフユさんにとって私が、これまで出会った誰よりも速かったということ。

そして《しろい まほう》は刻み込んだ、フユさんの剣に十字を。

「これが一つの到達点の形。偉大な先人の技」

 寒気が恐怖が死がフユさんを通り抜けていった感触がした。

彼女の大切にしている剣を折ったりはしない。

それでも真の強さとは何かを、お父さんの技なら伝えられそうな気がしたから。



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