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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

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285/287

第284階 一度目の命の雫の目覚めの日 剣

 クラの足元が爆ぜる。

勢いに乗る、音で惑わす、一瞬を。

火の魔法の応用かしら。


ーーみらい わたし

世世。

最終未来。

人類最期の未来に座する私は晴れやかな気持ちで笑みを浮かべて。

その笑顔は運命も宿命も理不尽も噛み砕いて何一つ負も邪も凶も影響させられなかった。

ーーしろい まほう

ーーかむい とくい

世世。

クラの思う速度では距離は伸びないはずよ。

《かむい とくい》はクラの能力を著しく下げる。

でも彼女は違った。その姿に背中に電流が逆立つように走り去っていったわ。

 へぇ、ゾーンと見紛うほどの集中状態なのね。

《かむい とくい》で下がった能力の一部を自身に戻すかのように、

クラは強い集中状態に移行していった。

何が違うかって? クラは自らこじ開けた、その扉を。


ーーあなた ひらく

世世。

クラレット。太陽人。第五点五感(レメゲトン)の使用を確認。

通常のゾーン状態の120%から123%の能力を底上げ。

通常のゾーン:人の世でゾーンと呼ばれたり無我の境地と呼ばれたり。

通常のゾーン移行とは異なり、蓄積された思考と鍛錬による執念の賜物。

伸びしろは特大であり、今後次なる扉を自ら開く事も可能な下地はすでにほぼ完成済み。

 その第五点五感(レメゲトン)を利用して、私の首を狙う斬り込み。

一閃、綺麗で速い、お手本のような美しい弧を描く。

死神の鎌とも称せそうな、その太刀筋は速さは正義を体現していると見て取れるわ。


ーーはやい わたし

世世。

 音が静寂に響き渡る。

それはぶつかった音、流されていく死神の鎌の音。

私の《しろい まほう》の打ち上げにより弾かれた【イグニス】の泣く音。

 クラは一切の姿勢を崩さなかった。

力負けを想定した組み込み方、それでも微かに炎は揺らいだ。

そう私は思った。

 揺らぎを払うかの三連撃の中央の斬撃が

私の鼻先を掠める、空気を焦がすその一閃は

鼻への影響で、本来ならば一瞬だけたじろぐ技。

 四連撃目の音が泣いた。

《しろい まほう》の弾きによって。

外へ押しやる弾きだった。

 それでもクラは自らを回転させて外回りから

クラ自身の【イグニス】の斬撃領域に舞い戻る。

クラの瞳の雫に吸い込まれそう、惑わすこともできそうね。

 《ていし しんり》は私達の身に付けている剣のぶつかり合い以外には作用しているのよね。

だからクラは美しく舞っている。少しどきどきするわ。

彼女の創作したフラム・ブーケの衣服が身に付けている物達がクラの動きを際立たせている。

 それは彼女の創作した作品たちが、着飾るだけの品と

一線を違える意味を体現しているってことなのね。

剣を知るクラ自身が欲しかった美しい動きに手が届く彼女の更なる武器の一つ。

 そう称しても過言ではないわ。

王院の制服よりも戦闘をこなせる戦略的兵器の域に達するわ。

私は内心、喜んだ。マス、マテ、マユ、イムとで合わせたらと。

 何が生まれるのかしらと。

私の大切な人達で創るその先のおしゃれ。

思考の湖の中でもクラの剣撃が2連撃、3連撃と迫る。

 斬り裂かれる距離と時が私の命への距離を分断する。

自動集然(わたしのまほう)も世世に進化して明らかに増したわ。

存在感と鋭さが、私の歩を軽やかに生存へ導く。

 クラの剣はとにかく速い。

身体の捻り、稼働する関節の角度、筋肉の場所。

すべてが知で練り上げられてあるべき場所に鍛えられている。

 これが太陽人、これが火の四大貴族の現当主。

そして私の麗しき大切な皇帝陛下(クラレット)

《しろい まほう》に西のいえ、謙遜しすぎたわ。

 人の意志も優も天才も最上位も通せなかったし通せない。

第七世界の青き星の民の一人(さいじゃく)の一つの願いが生み出した

創造魔法【魔皇言語(ゲイスダリゲード)

 際限なく成長する魔法。

短剣さえ握れない私の右手に握られて何不自由なく踊りながら

未来の西の大帝国の勇者の現在(いま)の全力を。

 すべていなして弾ききっている。

それでもクラは、速度にすべての身体の連動を

集約させて打ち込み続けてくる。

「おいで、クラ。人の一つの到達点へ」

ーー第六点五感(エイボン)

それは偶発的だった、それでもクラは届いてみせた。

それでも約束された奇跡を私は感じていた。

第五点五感(レメゲトン)が砕かれ壊れて羽化するその先へと、彼女は踏み込み踏みしめていく。

 クラの目付きが自然と外界と正しく等しく適合するために鋭利に鋭く。

身体の関節がより稼働を滑らかに血液のポンプがより大量を適量送り込み、

身体機能が適切に整合されていくのが感じられる。

 クラの身体、心臓、脳を中心に髪の毛の先から手足の先まで瞬時に染み渡る。

培われた魂の叫び。

私には一生辿り着けない場所、それは永遠に。

 だからこそ尊敬して敬愛して崇拝する。

心の底から、そうただ一心にそう思えるわ。

すべてを得ることがないから選ばれた私と

すべてから寵愛を受けて選ばれた貴女。

 淘汰される弱き人の中で彼だけが

魔皇の創造した魔法(わたしのまほう)だけが

私を何よりも誰よりも称え寵愛する。

ーーあおな わたし

世世。

 《あおな わたし》《わたし せんし》

《せんし かわる》《かわる ......》

 何もないことが何よりも弱いことが肯定される。

私の瞳も髪も変わっていく、ラピスラズリ色に。

クラは驚かなかった、その心の強さが人の強者であるということ。

 刻む生命さえ集然によって生かされている私は100%人であり続ける意味も理由もないわ。

魔法へと変換されていく。

 弱く小さい私だから人としての維持もごく僅かで済む。

 地がクラの歩に踏まれる。

音の鳴らない、風にかき消されるような歩を重ねて

私の胴を狙う斬撃が顔を覗く。

 【イグニス】を《しろい まほう》で阻む。

今の私の本気を見せてあげるわ、クラ。

五連撃すべてを打ち上げて阻み、【イグニス】の横に《しろい まほう》の刃の部分を打ち込む。

 クラはバランスを崩さない。

崩すどころか緩急のための後退として吸収、組み込んでいく。

だから、次の一撃は自然と重くなる。

 ちょっと面白くしてみようかしら。

ーーれいき むつう

ーーれいき つつむ

 違和感を与えないわ。

それでも違和感が現実になる。

その手だけ。

ーーわたし はやい

世世。

 私自身が加速する。

クラの剣舞という防御壁を狭間を縫うように

滑り込む。

 狙うはクラの【イグニス】。

《しろい まほう》で刃の中心を斬り上げる。

炎が宙を舞った。

 クラも気付く。

何が起こったかは分からない表情を噛み潰して、

握っていた剣が手から離れた(うえにてん)

現実に対応すべく着地と同時にジャンプの姿勢に入る。

ーーはやい わたし

世世。

 届かないよ、クラ。

 何者をも感じない冷気では冷たさが分からないもの。

だから容易く離れる。

握れない手の自然な現象は人だからこそ。

 それにさえ惑わされずに対処しようとする貴女は本当に強いわ。

でもね。譲れないわ、こればっかりは。

《しろい まほう》で空中に舞う【イグニス】を弾いて叩き落とした。


 立ちすくむクラが敗北を噛みしめて呑み込む音が微かに耳に触れた。

どう思ったの?どう感じたの?私にいつか聞かせてくれる?

私の髪の色も瞳の色もいつも通りへと変化していく。

「淡い夢の中で女神様と出会えたわ、ラナン。

祝福だったのかしらね」

 少しだけ困惑した表情で私にかけよってくる。

私はすでに《しろい まほう》を納めていた。

認めるわ。貴女は、クラは。

 【ミリカンテアの勇者(アオナ・エカルラート)】が

対等だと認めるに値する偉大な魂だということを。

私の心に刻んでおくわ、強く。


 それから私とクラは誰もいないフラム・ブーケでお買い物を楽しんだわ。

もっともクラのお店だから私は着せ替え人形のようにたくさん着せられて

たくさんもらったわ。

 え?何をって?服にズボンにスカートはもちろん、靴に鞄に新作のアクセサリーまで。

ぜーんぶラナンにあげる!だって。

これでプライベートでのファッションにはまったく困らないわ。

「さてさて、ラナンにたくさん服をあげられたし、満足です。私の剣に勝ったご褒美として......」

 一筋の水玉の流星が頬を流れていく。

あぁ、そうだよね。

悔しくないわけないもんね、ちょっとごめんね。

「私は特別護衛で、だからクラにとって最高の魔法で最高の剣に成るから」

 私はそっとクラを抱きしめて、顔を見ないようにしたわ。

きっと、今は見られたくないだろうから。


 ねぇ、魔皇。

あんたの魔法なら叶えられるわよね。

私の願い。

 好きに生きろ、そのために創って与えた。

そう言われた気がした。

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