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【書籍化中!】アルケミスト・アカデミー(旧:双色の錬金術師)  作者: ちゅるぎ
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68話 採取旅 6日目 1

やっと書き終わりました!

滑り込み?GW投稿です。ああーよかった…。


今回は日常回です。

次は鉱石の採掘やなんかが入るのでちょっと説明が多くなる、のかな。どうだろう。

のんびりまったり進んでおります。





 日付が変わる頃に拠点に戻ってきた私たちは、そのまま朝まで眠ることになった。



ベルもミントもまだ眠たくないし、やることがあるからと言っていたから、素直に甘えさせて貰ったんだけどね。



 テントの外から鳥の囀りと眩しさを感じて意識が浮上していく。

普段ならまだ薄暗い事が殆どだから、いつもより遅く目が覚めたことが分かった。

まだ少し眠気はあったけれど、短時間でぐっすり眠れたお陰で疲れはあまり残っていない。



(疲れていたとしても、今日は採取三昧の予定だからすぐ忘れちゃうだろうな。鉱石採取って勘を頼りにって感じだったし採取の方法って中々教えて貰えないんだよね。自力検証か本なんかで予想するくらいしかできないし)



体を起こして伸びをした後、左右を見るとリアンとディルが静かに眠っていた。

 リアンに至っては身じろぎすらしない。

旅を始めたばかりの時は「もしかして疲れすぎて死んじゃった?」って何回か慌てた記憶があったり、なかったり……。



(リアンって、ひ弱っていうか細くて長いって印象だから、風が強い所とか強い刺激でポキッと逝きそうで怖いんだよね。ベルとミントが真面目な顔で防御力紙っぽいわよね、とかなんとかって話してたの聞いちゃったし)



 左右で眠る二人に気を付けながら、極力音を立てないようにそうっと毛布を畳む。


拠点として使っているこのテントは広げてみると中々大きいんだよね。

 荷物も置けるし、女の子だけなら五人は入れる。

でも、大人とあまり変わらないディルやリアンくらいの身長の持ち主を混ぜると快適に寝るなら四人でギリギリだ。



(座れば六人くらいは入れるけど、座って寝るのはちょっと嫌だし……買ったばっかりで新しいの買い直すのも癪だから大事に使うけど)



 そうそう、錬金術師や召喚士、商人なんかが旅をする時は一つのパーティーを全員雇う形が一般的なんだって。


 勿論、向かう場所や情勢、信頼度や自分たちの懐具合なんかを考慮しなきゃいけないし、評判や相手の素行なんかも加味しなきゃいけないから結構神経使うんだとか。

 今回私たちがした個人一人一人と契約するのは手間も、時間も費用も嵩むからあまり推奨されていない方法だった事を後でリアンやベルから教えられた。



(パーティーメンバーが錬金術師三人にシスターに召喚士ってどう考えても偏ってるよね、今更だけど)



顔を洗う為にタオルを持って外に出ると、まず朝陽が遠くに見える山脈の合間から顔を出し、切り立った岩山や雑木林を白く照らしている。

 眩しさに目を細めつつ、テント横の水瓶から適量水を掬ってタオルにかけ、顔や体を拭く。


 寝る前にディルが浄化の魔術をかけてくれたから汚れ自体は無いんだけど、それとこれとは話が別だ。

コップに水を入れて、ポーチの中から小瓶を取り出す。



「そういえばキシキシの葉ってどの辺で採れるんだろう?モルダスじゃあんまり見かけなかったな。美味しくないけど、口ゆすぐとスッキリするんだよね。美味しくないけど」



コップに小瓶の中身を数滴入れてからブクブクとうがいをする。


 昔から、おばーちゃんに寝る前と起きた時には必ずうがいをしろって言われて育ったんだよね。

うがいを終えてカップを拭き、口を拭った所でレシピ帳を開いてみる。

パラパラとページを捲っていくと見覚えのあるレシピに混じって、知らないレシピが少し増えている。


 キノコを使ったレシピが少し、鉱石を使ったアイテム、冒険者向けのアイテム、そして【生活】という新しいカテゴリが増えていた。


正直、食べ物とかならわかるけど生活ってどんなまとめ方?と眉を顰めつつ、ページを捲れば普段使っている日用品の作り方が書いてあった。

 その中に、不思議な表記を見つけて首を傾げる。



「なんだろうこれ。アイテム名が【???】なのに素材名が所々埋まってる」



丁度開いているページがまさしく、口に出した妙な表記で首を傾げる。


アイテム名は不明。

でも素材は【???】+【キシキシの葉】+水素材となっている。

勿論、【???】に該当する素材はどこにも書かれていないから凄く気になって仕方ない。


 ページの前後や色んなページをざっと確認しては見たけれど、書かれているページ自体が少ないのであっという間に調べ終わってしまった。



「キーになるアイテムや素材が見つからないとダメなのかな?色んなアイテムを調合すればわかる、かもしれないって頭に入れておいた方がいいかも」



同じものばかり調合していても駄目だよって遠回しにおばーちゃんに言われているような気がして、レシピ帳を仕舞い込んだ。



(もう今日を入れて六日も調合してないんだよね、そういえば)



工房に帰った時、調合忘れてないといいなーなんて冷や汗をかきつつ、テントから少し離れた場所へ歩き出す。

澄んだ空気と静かな朝陽に目を細めながら、焚火のある方へ足を運ぶ。



「あら、ライム。おはよう。随分早いのね」


「おはようございます。もう少し眠っていても良かったんですよ」



 朝日を浴びて赤く輝くベルの髪とミントの金色の髪を眩しく思いつつ、普段のように声をかける。

何やら話し込んでいた二人は、どうやらテントから出てきた時点で私に気づいていたらしい。


小走りで近づいて、鼻を擽る独特の匂いに“あれ?”と首を傾げる。

 パチパチと控えめな音を立てて燃える焚火の周りを囲むように等間隔で穴があけられているのに気付いて、微かに残った匂いが何なのかが分かった。


 そういえば、夜の見張り中ってお腹が空くって言ってたっけ。

戦闘後だと猶更だって歩きながらベルが話してたのを思い出して納得。



「ライム、貴女も薬草茶でいいわよね。軽く報告したいことがあるのだけどいいかしら」



何処かスッキリした顔で機嫌よく微笑むベルからカップを受け取って、空いている椅子を移動させた。



「話しながらでいいんだけど、オーツバー食べてみない?」



ポーチから油紙に包んだオーツバーを二人に渡すと、二人とも受け取ってくれた。

ベルに至っては早速食べ始めて、嬉しそうに目を細めている。

甘いからお茶と一緒に食べると美味しいんだよねー。




「オーツバー、ですか。これって携帯食ですよね」



ライムが持っているとは思いませんでした、と苦笑しながらスティック状のそれを受け取ったミントは口をつけるのを戸惑っているようだった。


 私には理由が分からなかったんだけど、ベルはミントが口を付けない理由が分かったらしく、小さく笑いながらパタパタと促すように手を上下に振っている。



「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。コレ、かなり美味しいし適度に腹持ちがいいから寝る前に食べて。買ったものじゃなくてライムお手製だから“アレ”とは違うわ。あ、もし一口食べて苦手なら私にくれない?」



これ、好きなのよねーなんて笑いながら食べ始めたベルを見て、ミントも意を決したように数回深呼吸をして覚悟を決めたらしい。


 目をぎゅっと閉じてほんの少し、かぷっと齧った後、小さなかけらを口に入れ咀嚼。

ちょっと緊張しながら一連の動作を見守っていた私は耐え切れずに声をかけた。



「ミント、嫌いな味だったら別の食べ物出すから無理しなくてもいいよ?」



作ったオーツバーを初めて試食したリアンも驚いていたし、ベルには“これはオーツバーに似た何か別の食べ物ですわ”なんて宣言されたし。


 私にとってオーツバーは硬くて色んな食感が味わえる栄養満点のおやつ兼非常食なんだけど、世間一般ではどうにも違うらしい。



(そういえばこれ作った後に売ってるオーツバーも予備として買っておこうって提案したら凄い勢いで却下されたっけ)



二番街の露店でたまたまオーツバーが三本入って銅貨1枚と鉄貨5枚で売っているのを見かけたから提案したんだけど、言った瞬間に両脇を掴まれて、凄い勢いでその場から引き離された。


 解放されたのは工房だったんだけど、いつもの席で懇々切々と“売っているオーツバーは死んでも買うな。作れ”と説かれたっけ。


 改めて市販のオーツバーを購入してみようかな、なんて密かに検討しているとガシッと両手を柔らかい手に掴まれる。




「―――……ライム。やっぱり私、ライムはシスターになって私と一緒に教会で働いて欲しいです」


「え?いや、オーツバー食べて何でそうなるの?」



両手を握り締めてグッと顔を使づけてくるミントの瞳は少し潤んで、熱意とも決意ともいえない真剣さを伝えようとしているらしい。



「ミント気持ちはわかりますけど、ライムは錬金術師であってシスターにはなりませんわよ。工房から引き抜きするのは止めて下さいませ」



呆れたようなベルの声に反応したのか手を掴んだまま視線が私からベルへ移って、何でか反射的に息を吐いていた。



「でもでもでも!あのオーツバーがこんなに美味しいんですよ!?どうなってるんですかぁ!うう、口の中の水分が持っていかれる不快な感じも、石や岩を齧っているような硬さに加えて土に泥水と毒虫の体液と苦草を煮詰めたどろっどろの煮汁を混ぜ、仕上げにその辺に生えている毒草を適当に混入した挙句こね回し、暗褐色に劣化したドロドロの油で固めたような味がしないなんて……ッ」


「ねぇ、ミントが食べたオーツバーってホントに食べ物?」



咄嗟に口を挟んだ私は悪くないと思う。



(ミントって本当に何食べてるの?!っていうか、どんな味なのか想像も出来なくなってるんだけど!?教会ってそんなにお金に困ってるのかな)


 戦慄する私を余所に、ベルは納得したといわんばかりに何度も頷く。

え、そこで納得するの?!と驚愕する私を余所にベルは遠くを見て儚げに笑った。



「ああ。言われてみると確かに的確ですわね。私の食べたものは、中が半粘土状だったわよ。おかげで汚泥を凝縮してその表層に浮き出た泥水と腐った魚や肉の臭い煮汁の中に苦草を大量の粉末にしてこね回し、悪質な豚油で固めたような味だったわ。中が半生だったお陰で、舌と喉にいつまでもこびりついて、水やお茶を飲んでも全部その味になって軽く絶望した記憶が……」



「二人が話してるオーツバーって、食べ物なんだよね?」


「食べ物ですよ、まぎれもなく」

「食べ物ですわよ、世間一般的に」



逆らい難い、輝くような笑顔から咄嗟に目を逸らした私は、黙って美味しいお茶を一口飲んだ。



「オーツバーに関してですけど、これなら間違いなく売れますわ。売れなければ私が買い占めて……そうね、いくつか教会に寄付してもいいわね。これならもしもの時の為に備えられるし、子供でも食べられるわ。秋の豊穣祭で、教会に寄付すれば冬に飢えることも少なくなるでしょ」


「はっ?!そうですよね、これなら保存も利きますし満腹感も続くから子供たちのおやつにぴったりです!甘いですし、子供たちなら一人一本食べれば充分夜まで持ちます!栄養だってばっちりですもんねっ」


「あ、そうだ。これ、病人とか小さい子に食べさせるときは“ミルの実”の果汁と軽く煮ると甘いミル粥になるよ」



「ライム、これ、私売りだしたら買います!いくらですか?あまり高くないと嬉しいんですけど」



リアンが考えてるのは二本で銅貨三枚だった筈だけど、と言えば冒険者としてもっと頑張って稼がなくちゃ、なんてシスターらしからぬことを呟いている。


 それを横目にベルが私のカップに薬草茶を継ぎ足して、話し始めた。

視線の先には、場所を移した土の牢屋。


最初に拠点を構えていた場所だと、移動時間がもったいないという理由で場所を移動したんだよね。

勿論、土牢はディルがパパッと魔術で作って、夜の間は強めの麻痺薬と睡眠薬を充満させて無効化させているらしい。



「まず、例の冒険者二人ですけれど散々喚いて暴れたこともあって体力も反抗心も少し落ち着いている筈よ。狩りの最中に色々聞き出してみたんだけど、あの二人、食糧は持ってないみたい。チコ…――ああ、弓使いの子はチコって名前なんだけど、食べ物は与えないよう厳重に“お願い”してあるし、本人たちも今までの扱いや対応がよほど腹に据えかねてるみたいだからひとまず安心していいと思うわ」



今日の昼、見張りとしてチコとミントが残ることで話がついているそうだ。


 代わりに昨日残しておいた例の奴隷の子は、体力をつける為にも今日の採掘には同行させるべきだと提案される。



「同行はいいんだけど、本人が行きたくないなら見張っててもらった方がいいんじゃない?」



リアンやディルに奴隷について、実は昨日聞いておいたのだ。


奴隷っていうのは一種の従業員のようなものらしい。


 基本的に主人の指示を聞いて実行することで衣食住の保証を得る。

奴隷の種類にもよるけれど指示を受けて実行することで報酬を得るっていうのは変わりないんだって。



「私たちは別に契約したり雇っている訳じゃないから、どうしたいのか聞いた方がいいんじゃないかなって思ったんだけど。ほら、やる気ある人が手伝ってくれるならいいんだけど、嫌々手伝われても邪魔なだけだし、いられるだけで気が散るでしょ?」


「調合や錬金術が絡むとライムは容赦ないわよね……まぁ、同意せざるを得ないんだけど。わかったわ、邪魔になりそうならその辺に待機させておきましょ。見張り位ならできる筈だし、それすらも出来ないならとっとと売り払えばいいもの」


「工房でお店開いてる訳じゃないから現金収入も今の所ないもんね。この間エルに依頼された解毒剤の調合だって偶然の産物って感じだし。他の工房はもう販売とか始めてるのかなー……出遅れてるとやっぱり不利だと思うんだけど、どうなんだろ」


「確かに、どうなのかしら。私もお店関係はリアンに丸投げしてるし、あいつらの処理が終わったら聞いてみましょ。ああ、工房生だってことはあのバカな冒険者二人の前では言わないようにね。余計な手間増やされちゃ堪らないわ」


「あはは、確かにねー。じゃあ、朝食作るけど何時もみたいにポーチに二人分残しておけばいいんだよね?ラダットとムルのは作ったらそのまま食べさせるから、チコのも一緒に残しておくよ。起きたら声かけて」


「ええ、わかったわ。お昼近くになってるでしょうし、味見程度でいいわよ」


「それでは、私たちも少し休ませてもらいますね。何かあったら遠慮なく起こしてください」



そう言ってテントへ入って行く二人と入れ違いに、眠そうなリアンとディルがのそっとテントから出てくるのが見えた。二人とも簡単に身支度を整えて周囲の警戒と異変が無かったか見て回るとの事。


 私は、とりあえずトランクから調理に必要な道具と処理を終えた素材や食器なんかを取り出して、さっそく準備に取り掛かる。



(時間も時間だしサクッと食べられるものでいいかな。お茶とソーセージと野菜を挟んだパンと昨日のお肉を焼いてタレ絡めて、あとは卵サンドで足りなければオーツバー出そう)



奴隷の子も結構食べられるっぽいから量にすると結構作らなきゃいけないし、急がないと。


 フライパンに豚油を少量乗せて昨日スライスしておいた肉とマタネギをスライスしたものを投下し炒めながら、沸騰前のお湯にソーセージを入れて沸騰しないよう火から程よく離した所で加熱。


 卵は別のフライパンでオムレツより少し硬めに焼いてパンの間に挟んだ。

料理が出来上がる頃には、冒険者がまとめて入れられている土牢からラダットとムルが起きてきた。


 冒険者の二人はかなり眠そうだったけれど、数分後には眠気も覚めたらしい。


二人は夜の番免除っていうか解体が終わったらすぐに眠る様に土牢に押し込まれたみたいだしね。

私は自分のパンを一つ食べた後、奴隷の子にご飯を届けてのんびり採取の準備に取り掛かる。


 周囲を見回って戻ってきたリアンから呆れたような視線を感じつつ、必要だと思える物を準備していると感心したようにムルが道具を見て一言呟く。


「採掘や採石の道具が一通り揃ってるんだな。これなら十分だろう。もう少ししっかりとした採石場やなんかに行く場合、ツルハシは予備を二本は用意していくといい。爆弾の類もそうだ。マイトボムが採石、採掘の際には役立つ。あれは細長く設置もしやすい」


「マイトボムかぁ。帰ったら調べてみるよ。調合できるといいな」



メモ帳にマイトボムのレシピが載ってたりしないかな、と懐からレシピ帳を出して開いてみたけど、そう都合よくは出来てなかったみたい。



 帰ったら『オグシオ書店』で採石とか採掘関係の本探してみようかな。

できればミントと一緒に行きたい。

リアンには反対されそうだし、ベルはお財布の紐ゆるゆるなんだもん。色んな意味で危ないからね。




ここまで目を通してくださってありがとうございます!

じわじわーっと続きを書いていますので、気長に待っていただけると嬉しいです。

また、誤字脱字変換ミスなどはサイレント修正しています。時々、文章が伸びたり縮んだりもします。

……ええ、サイレントです。


=アイテム=


【オーツバー】

 オーツ麦+食材+食材+ハチミツ+小麦粉

 ハチミツと小麦粉以外の食材を投入。

 粗方混ざったら小麦粉、ハチミツを加え一気に魔力を注ぎまとまるまで混ぜる。

 出来上がったら冷まして程よい大きさに切り、保存の効く瓶などに詰めて完成。

  魔力を注ぎすぎると焦げ、足りなければまとまらない。

販売価格:二本入りで銅貨3枚


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『料理が出来上がる頃には、リアンやディル、冒険者がまとめて入れられている土牢からラダットとムルが起きてきた。』とありますが、その前に『そういってテントへ入っていく二人と入れ違いに眠そう…
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