13.チャコの昔話
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。人類代表の超人。
キリコ……警察庁特務係。班長。
チャコ……警察庁特務係。キリコの部下。影使い。
モニカ……精霊代表。雷の精霊。
林 さやか……滝沢の中学校の先輩。裏世界のことも知っている。
和久 妃美香……日本文化研究部、部長。兼、女子剣道部。
倉多 葉菜……日本文化研究部。
古橋 真由……日本文化研究部。
初めて日本文化研究部へ顔出した夜、俺はチャコとモニカと夕飯の食卓を囲んでいた。チャコとモニカは一緒に暮らしているのと、どうせ向かいに住んでいるなら夕飯は一緒に食べようとチャコが誘ってくれたのだ。
「三人で暮らすのも悪くないかもっスね」
とチャコは言っていたが、それはさすがに断った。何かあっても向かいだし、屋根の下まで一緒にする必要もないだろう。
「それで影の中で日本文化研究部の三人を見ていたチャコさんとしては、あの三人はどうなんですか? 裏世界と関係がありそうですか?」
「わかんないっス」
夕飯の焼きそばを口に運びながらチャコは答えた。「あまり凝ったものは作れないっスよ」と言いながら三人分の料理を作ってくれるチャコは凄いと思う。モニカは箸がまだ上手く使えないからフォークで焼きそばを食べている。これはこれで新鮮な感じがする。
まだこの生活も三日目だけど、どうしても男子高校生の一人暮らしだと作るにしても買ってくるにしても食事の栄養が偏りそうで、こうして温かい手料理が食べられることになったのには感謝している。
「分からないって……」
「裏世界の住人を判定するセンサーとか付いているわけじゃないっスからね」
「モニカはどうなんだ?」
「普通にこっちの世界に溶け込んで生活してたら分かるわけないのじゃ。殺気とか霊気みたいなのが漏れていたら分かるかもだけど、そんな好戦的な奴はめったにおらんからの」
「そうなのか」
「今のユウの状況が特殊なだけで、裏世界と言っても基本的には共存路線で積極的にこちらの世界と絡むことにないし、自分たちの領域とかを脅かされない限り好戦的になることはないぞ」
「あはは……耳が痛いっス」
「仕事のこと?」
チャコは警察の特殊組織で裏世界と繋がる犯罪者を取り締まってる立場だ。有効的ではない住人もたくさん見てきたのだろう。
「いやぁ、もちろん仕事で色々ヤバい裏世界の面も見てきたっスけど、そうじゃなくて私が警察に入るきっかけっスね」
「きっかけ?」
「そうっス! こんな影を使う能力に自然に目覚めちゃったっスから、悪いことしてきたっスよ……主に万引きとか……で、調子に乗ってたっスよね、この能力なら捕まらないと」
「それでヘマをやらかしたのじゃな?」
「その通りっス。裏世界とか全然知らない頃にちょっとヤバい物に手を出しちゃって……いざとなれば自分も影の中に隠れてやり過ごせば、って思ってたんスけど──」
「影の中に隠れられないか、隠れても引きずり出されたんじゃな?」
モニカは裏世界の人間だけあって状況の想像が付くのだろう。
「さすがモニカっち! その通りっスよ……どっちもやったけど、どっちも上手くいかなかったっス……」
「今でこそ、そこそこ能力も上がってるのじゃろうが、当時は荒削りだったのじゃろう? それだと少し強い相手、それこそ表の世界とおかしな取引をしているような連中じゃ。そいつらが能力が高くなくても用心棒のような奴がいたのじゃろう」
「その通りっス……なんでもお見通しっスね」
「それで今、よく生きているな?」
「もう絶体絶命で、よくて人間の世界での人身売買、それ以外ならバラバラにされて臓器密売か、裏世界の人間コレクターにでも売られて奴隷だったっスよ……」
なんか今までの展開とは違うシリアスな話をされて少し戸惑ってしまう。
「そんな時、キリコさんが助けに来てくれたっス!」
「よくそんなヤバそうな組織、倒したな?」
キリコは強いのは想像ができるが想像以上なのだろうか。
「キリコさんだけじゃなかったスからね、警察組織で動いてますし、人間側の取引相手は人間側の警察が逮捕するために大人数で来てくれたっス」
そこは人海戦術なのか。
「でも、キリコさんの強さは本当っスよ。そのヤバそうな用心棒を逮捕したのはキリコさんですから」
「キリコとやら、直接は会ってないが相当じゃの……道具に能力を込めてこの威力じゃ……」
恨めしそうにモニカは自分の腕輪を眺めた。
「まぁ、でも、モニカっちの腕輪はピンチの時は自動で制限解除されるし、普段の活動には何も問題ないっスよ!」
「普段から解除して欲しいのじゃがのぅ」
「それでさ、裏世界ってヤバい奴がいるのは分かったけど、俺が攫われたらしないの?」
「それは大丈夫っス」
「大丈夫じゃろ」
チャコとモニカが口を揃える。
「うちが説明してやろう。神託書は裏世界の住人にとって絶対なのじゃ。オリジンと呼ばれる原書は神に一番近いと天使種が持っておるのだが、それのコピーは全ての種族に行き渡ってるし、そのコピーはさらにそこら中に広まっている。まぁ、人間種がオリジンにかなり近い神託書を所持してるのは驚いたものじゃ」
「私は下っ端ですし、そこら辺は詳しく知らないっスけどね」
「そこで書かれたことは絶対なのじゃ。ルールを破ってお主を攫って無理に子供を作っても神にはなれないし、それどころか逆に己の種族が滅びかねない。だから神託書のお告げは守られる。よほどのアホがいない限り安心じゃ」
「よほどのアホ……」
「それに私もいるっスし、いざとなればキリコさんもいるっス!」
「それは心強いけど、東京から浜松まではすぐ来れない──」
「内緒の裏技があるから本当の本当にヤバい時は大丈夫スよ!」
そうなんだ……やっぱり人智を超えた何かはあるんだな。
「じゃが、強行手段を取るようなアホはいなくても、変わったこと、搦手を考える奴はいるのじゃ。用心に越したことはない」
「そうっスね! 滝沢っちも気を付けるっスよ!」
チャコにそう言われたものの、ただの高校生の自分にそんな特殊な能力を持つ者達に対してどう気を付けたらいいのか分からないのだけど。
何事も起きないことを祈るばかりだ。
お読みいただきありがとうございます。
15〜20話程度(元々は20〜25話を考えていましたが少し短くなりそうです。申し訳ありません)を予定しております。
ブックマークや評価をいただけると励みになりますので、お願いします。




