12.和久家
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。人類代表の超人。
キリコ……警察庁特務係。班長。
チャコ……警察庁特務係。キリコの部下。影使い。
モニカ……精霊代表。雷の精霊。
林 さやか……滝沢の中学校の先輩。裏世界のことも知っている。
和久 妃美香……日本文化研究部、部長。兼、女子剣道部。
倉多 葉菜……日本文化研究部。
古橋 真由……日本文化研究部。
「それで手伝いって何をすればいいんだ?」
和久先輩は剣道部へ行ってしまったので残った二人に聞く。
「今日はやることないし、明日だけ手伝ってくれたら多分終わっちゃうんだけど──」
倉多の言葉に俺はがっかりしてしまった。さっきまでのやる気を返して欲しい。
「まだ何があるか分からないから残ってくれると嬉しいかな」
またやる気が返ってきた。
「明日ね、キミちゃんの家から屏風が届くの」
「屏風?」
「そう、家で使わなくなった屏風が届くからそれを1階からここまで運んで欲しいの」
「重そうだな……」
「私、ひとりじゃとても無理だし、マユが怪我してなくてもやっぱり難しかったかなぁ……そういうわけでタッキーが来てくれて助かったよ」
「う、うぅ……ごめんねぇ……」
「いや、古橋さんが謝ることじゃないから」
古橋は謝ってばかりだし、別に怪我なんてお互い様なのだからそんなに謝らないでもいいのにと思ってしまう。ただ、こういう性格で、倉多が近くにいることで上手くバランスが取れているのだろう。
「それにしても屏風なんて一般家庭にあるもんだな」
屏風と聞いた時に真っ先に思い浮かんだことを口に出してしまう。
「キミちゃんの家、一般家庭じゃないよ。知らないの?」
「そう言えばそうだったな。ただ、実際に見たことないから想像がつかなくて……ちょっと大きな家、くらいに思ってたよ」
和久家──浜松市の西の方に昔から存在する由緒正しい名家。大地主で大規模な農業をメイン事業にしつつ、弁護士事務所、会計事務所、不動産屋などを展開し、地方議員にも援助しているという話まで聞こえてくるが、そんな話は物語の中だけの存在だと思って想像もしたことがなかった。
「本当凄いんだからね!」
倉多の熱弁に古橋も頷いている。
「二人は和久先輩の家、知ってるの?」
「そりゃあ、ねぇ」
これにも古橋が頷く。
「私もマユも親が和久家の事業の幹部だから小さい頃から一緒だったんだよ」
「い、いつも、一緒だったよね」
「小さい頃からキミちゃんはお稽古ばかりで同級生と遊べないから私たちがずっとお稽古も一緒に付いて回ってたんだよね」
「そ、そう」
「後から聞いた話だけど、さすがにうちもマユの家もそんなにお稽古のお金出せないから、私たちの分は和久家から出してもらってたって聞いたからびっくりしちゃったよ」
「う、うん」
「だから書道、茶道、華道、日本舞踊は基本はできるようになっちゃったね」
「で、でも、さすがに武術は、や、やらなかったよね」
「そうそう、武術は怖かったもんね」
そこで俺は気になったことをストレートに聞いてみた。
「でも、それだとさっきの日本文化研究会の入部条件満たしてないんじゃない?」
「あー、まぁね。それでも、私とマユは囲碁も将棋も強いからね。この学校の部活よりも強いと思うよ」
「た、多分……?」
古橋は自信なさげだが賛同に近い意思表示をしてるってことはそれなりに腕に覚えはあるのだろう。
「私たち、そんなお稽古ばかりだったりキミちゃんが武術のお稽古中は遊ぶとこもなくて和久家に出入りしてる人たちというか、年配の人たちに相手してもらえるのって囲碁と将棋しかなかったからそれで遊んでるうちに覚えたんだよね」
「随分、変わった幼少期だったんだな」
「でも、別に嫌じゃなかったし、これはこれでかなり役に立ってると思うよ」
「そ、そう、その通り」
「そうだろうな、高校生になるとその価値は分かるような気がする」
そして、それは大人になるときっともっと分かるのだろう。
「そういえば、気になったこと聞いていい?」
「私もキミちゃんもマユも彼氏はいないけど」
古橋は頷いているが、
「そういう話じゃなくて──」
「タッキーと仲野さんは付き合ってるの?」
「それも付き合ってない」
恋バナをしたいわけではないのだけど、こうやって聞かれてるのは裏世界と関係があるのか勘繰ってしまうけど、多分それは関係なくて普通に恋バナに興味があるだけなのだろう。
「そういうのじゃなくて、それだけ和久先輩と一緒にいるってことは本家や分家とかの関係なの?」
実は仲野もそこそこの地域の名家の一族なのだが、中学の頃からは彼女の家は分家で色々親から本家のことを気にするようにって言われるのが嫌、みたいな話をしていたのを思い出して気になってしまったのだ。
「あー、いや、私やマユの家は本家や分家じゃないよ。そもそも苗字も違うでしょ」
「確かに……」
「それに小さい頃からキミちゃんの家に出入りしてたから知ってるけど、本家や分家の関係ってなんかこう言葉にしにくいけど凄いんだよ」
「ちょ、ちょっと怖い、くらい」
「そうなんだ」
「私の家は不動産事業の幹部で、マユの家はお父さんが弁護士なの。どっちも和久家からしたら雇われ。キミちゃんは気にしてないし、私たちも小さい頃から一緒だったから気にしてないけど、お父さん達は最初は気が気でなかっまかもね」
古橋が頷いているし、何となく親の気持ちも想像はできてしまう。
「ちょっとね、話がそれちゃったけどキミちゃんの家は本当に凄いんだよ! だから明日屏風よろしくね!」
「今日はありがとう」
俺の口から思わずお礼の言葉が漏れてしまった。
「どうしたのよ、別にお礼を言われるようなことは──」
「いや、学校入って仲野の事件があってから、二人とも同じクラスだから知っての通り浮いちゃっててさ。こうして高校に入ってから初めて普通に会話できて嬉しかったから」
意図せず素直な気持ちが出てしまったのだろう。
「なるほどね、タッキーはダークヒーローなんかじゃないかもね。これからは私もマユも友達だよ。よろしくね」
「ちょ、ちょっと、まだ私は怖いけど、ハナちゃんがそう言うなら、友達」
「また明日、屏風運ぶのよろしくね!」
「わかった、こちらこそよろしく」
人の優しさに久し振りに触れたせいか泣きそうになってしまったが、さすがに同級生女子の前で泣くわけにはいかず、誤魔化すように帰り支度をした。
お読みいただきありがとうございます。
15〜20話程度(元々は20〜25話を考えていましたが少し短くなりそうです。申し訳ありません)を予定しております。
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