10.さやかの脚
滝沢 侑也……主人公。神の種を宿してる。
仲野 千鶴子……主人公の幼馴染。人類代表の超人。
キリコ……警察庁特務係。班長。
チャコ……警察庁特務係。キリコの部下。影使い。
モニカ……精霊代表。雷の精霊。
林 さやか……滝沢の中学校の先輩。
「えっと、さやか先輩が部長ってことはもしかして──」
「そうよ、私も裏世界のことを知っているってこと」
やっぱりそういうことになるのか。俺は頭を抱えてしまった。
「こいつは人間じゃないのか?」
「あっ、バカ!」
恐らくモニカは悪気があったわけではないのだが、その一言に俺は大きく反応してしまった。仲野も「あっ……」という気まずい顔をしていた。
「なんじゃ⁈ そんなに大きな声を出すでない……」
モニカも俺と仲野の顔を見て失言してしまったと思ったようだ。
「いいのよ、モニカさん。気にしないで。三人にちゃんと話しておきたいから。こっちに椅子を持って集まってもらえる」
俺達は四人がそれぞれ顔を見れるように椅子を並べた。
「モニカさんはこれくらいでは驚かないと思うけど──」
さやか先輩は椅子に座ったままスカートを太ももが露わになる位置までスカートをめくった。この後、何が起きるか俺と仲野は予想は付いているのだけど、それとは別に俺の視線はさやか先輩の太ももに釘付けになってしまった。
「ユウくんのエッチ! そんなに先輩の脚見ないの!」
当然のように仲野に突っ込まれる。それはそうなのだが、この状況は男子は仕方ないだろうに。
「さやか先輩、俺、部屋から出てますよ」
「このままいてくれて大丈夫。でも、あまりジロジロ見られるのは恥ずかしいかな」
立とうとする俺にさやか先輩はそう言った。でも、そこしか見るところがないんですよ。
さやか先輩はロングスカート、さらには膝上のまでのハイソックスを履いている。スカートを太ももまで捲り上げると絶対領域と呼ばれるものが現れるのでドキドキしてしまう。
「なぁ、まだそんなに暑くないとはいえ長いスカートに長い靴下では暑苦しくないのか?」
さやか先輩とは対照的に短いスカートを履くモニカが問いかける。
「それはね──」
さやか先輩はそう言いながらハイソックスを脱ぎ始める。
そして、そこに現れるのは──銀色の脚。
「なんじゃ、その脚は⁈」
事情を知っていた俺と仲野は驚かないが、モニカはやはり驚いた。それはそうだ。
人間の肌色の脚が現れると思っていたら、出てきたのが銀色の脚なら驚くのは当然だ。
さやか先輩は小学校低学年の時に家族で車で旅行に出掛けていた時に高速道路で大きな事故に巻き込まれた。その時に母親を亡くした。父親は無事だったが、さやか先輩は足が挟まれて治療が不可能な状態で切断するしかなかった。父親が医者だったのもあり、様々な当時最新鋭技術を使い義足を作った。
それを中学の頃まで同じ学年の女子に化物、怪物と揶揄されて除け者にされていた。そもそもさやか先輩の可愛さもあって女子から妬まれていたのもその要因になっていた。幸い男子からは普通に接してもらってはいて不登校にならずに済んだが、保健室にいることが多かった。
逆に俺や仲野に限らずだが運動部にいた生徒が怪我とかした時に保管室に行くとさやか先輩がいて話し相手になってくれたから後輩からは男女問わず慕われていた。
ここまでの事情をモニカにまで話す必要があるのかどうか悩んでいたら、
「これ、どうなっているのじゃ?」
モニカはそんなことを言いながらさやか先輩の太ももと義足の付け根辺りを触っていた。俺も触りたいのだけど。
「ふーむ、人間界の義足とやらの仕組みはよくわからないが、これは裏世界の技術が使われているな?」
「正解! でも、技術的なことは分からなくても話の流れで分かっちゃうよね」
「それで、お主はこの脚を揶揄われてイジメにでもあっていたから、さっきはユウが大声をあげたのじゃな?」
「それも正解。モニカさんは察しもいいのね」
「さっきのは申し訳なかったのじゃ」
「気にしなくていいのよ。さっきも言ったけど悪気がないのは分かってたし──それに滝沢君に近付く女は全部その種を狙っているように、って気を付けるように言われてるでしょ?」
「はい……」
「えっと、それじゃあ、先輩もユウくんのお嫁さん候補なんですか?」
俺が曖昧な返事をしてると仲野がストレートな質問をしていた。
「ううん、残念ながら違うの。一つの種族に一人の候補者が原則でしょ? 私はただの人間だからもう椅子はないのよ。仲野さん、あなたが候補者なんだから」
「あっ……⁈ ごめんなさい……」
「謝らないで。私はこの学校であなた達のサポートができるのが嬉しいんだから」
さやか先輩は明るくそう言ったが、俺は内心では少し残念に思っていた。
俺が明確に初恋を意識したのはさやか先輩だったのだから。
もし、さやか先輩が候補者だったら、さやか先輩さえよければそのままゴールしていたかもしれない。
「私は小さい頃の事故の時にお母さんを亡くして、自分の脚も切断しないといけなかった。お父さんは旅行に行かなければよかった、と自分を責めていたわ。私の脚だけでも何とかしないと──そう思っていた時にお父さんの医学論文に興味を持った裏世界の人が近付いてきたのね。神経科医だった父の研究と裏世界の技術があればかなり高度な義足が作れる、と」
その話はさすがに初めて聞いた。それでさやか先輩は裏世界と繋がりができたのか。
「確かに全然違和感なく生活できるようになったわ……でも、高性能過ぎて元の身体能力以上に早く走ったり、高くジャンプしたり、泳ぐこともできるようになっちゃって、それが不自然に感じるようになって体育の授業は全部出なくなっちゃったけど……人前でそういうのするのが今も苦手なんだよね」
仲野もそうだが裏世界の技術や能力は人間の身体能力を上げることができるようだ。種があるだけじゃなくて、俺の能力も上げて欲しいのだけど。
「あの、それでボランティア部って結局なんなんですか?」
仲野が我慢できなくなったのか聞いた。もう少しさやか先輩に話させてもいいのに。
「ボランティア部は元々は私が本当にボランティアがしたくて作った部活だけど誰も入らなくてね」
さやか先輩はそう言うが少し嘘が混じってると思う。文化部も盛んなこの高校に部員一人の部活にこの部室は与えられないと思うが、それは指摘ないでおく。
「それで少し前にキリコさんって方から連絡があって滝沢くんと仲野さんに学校でも裏世界のことを教えてあげてって言われたの。それならこの部室を使って放課後に部活として集まれればいいのかなって思ったんだよね。でも、部活としても活動しないといけないから案外忙しいかも」
「じゃあ、うちは入らなくてもいいのか?」
忙しいという言葉を聞いたモニカが逃げ出そうとしている。
「モニカさんは年齢は上かもしれないけど、学校では私が先輩だからちゃんと言うこと聞きましょうね!」
有無を言わさずモニカも入部させられるらしい。
「それに滝沢君も仲野さんも部室があると便利でしょ?」
さやか先輩の言葉を俺も仲野も理解できていない。
「だって、これからどんどん暑くなるわよ。いつまでも外でお昼ご飯食べるわけにはいかないでしょ。教室で過ごしにくかったら部室に来ればいいのよ」
なるほど、それは助かる。
こうして俺達は昼休みの避難場所を手に入れた。
お読みいただきありがとうございます。
まだ始まったばかりですが、15〜20話程度(元々は20〜25話を考えていましたが少し短くなりそうです。申し訳ありません)を予定しております。
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