表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/204

第76話 既婚さん?イグリースの部屋。そして勘違い兵士は「袋大入り」。




イグリースは私室で物思いにふけっていた。


以前、「リャナン」という少女へ情報をリークした。

だから「旦那様」は無謀なことはせずに自重するようになった。


そして、喜ばしいことにご自身の「義理の息子」を連絡役によこすようになった。


(フフフ、離れ離れになった夫婦が、手紙で繋がるなんて)


イグリースはほくそ笑む。


(ああ、「子は鎹」とは本当によく言ったものです)


うっとりとアイスブルーの目で自身の「お腹」を見る。


そして優しく指を這わせた。


(あの時、「旦那様」によって穴を空けられたお腹、あらヤダっ、ちょっとエロトーク!うふっ)


白銀の髪を揺らして身悶える。


(でもでもっ、おかげで「旦那様」が修復してくれて、身も魔力も繋がることができたわ)


過去の一騎打ちからの救命を、「お花畑変換」して悦に入る。


(そう、もう「一心同体」の既成事実。これが「夫婦」でなくてなんと言うのです)


ドゥフフフフフゥッ!と涎を垂らしながら笑みを漏らした。


(「夫婦のキズナ」の前では、あのチンケな「従属魔術」など――――)


コンコン


ドアをノックする音がする。


(チィ、せっかく「旦那様」とのキズナを「復習」していたというのに)


イグリースはドアへ向けて声をかける。


「どうぞ。入りなさい」


「し、失礼しま~す」


恐々として入ってきたのは「モブオ」だった。


「何ですか、こんな夜更けに」


「す、すみません!」


モブオは途端に頭を下げる。


「謝罪は良いですから。何かあったのですか?」


「は、はいぃ、実は――――」


モブオはイグリースに昼間の少年の話をした。


(なるほど、「アンジェ」が「手紙がこない」とソワソワしていたのはそういうことでしたか)


イグリースは合点がいったように頷く。


「わかりました。報告ごくろうさまです」


「はいぃぃ、それでは、私はこれでぇ」


モブオが去ろうとした時だった。


「待ちなさい。せっかくですから、昼間『門番』をしていた兵士を呼んできなさい」


「へ?」


「私が『皆さんと楽しいことをしたい』と言って呼ぶのです」


イグリースが「ニタァ」と笑う。


それだけでモブオは身震いした。


「良かったら、アナタも混ざってもいいのですよ」


「い、いえいえいえ、滅相もないっ!俺…いや、私などっ!」


モブオは姿勢を正し、敬礼した。


「ご命令、承りました。さっそく、呼んでまいります」


彼は、スタコラ逃げだした。





数時間後のこと。


モブオは首都はずれの「ゴミ捨て場」にいた。


(うううう、化けて出ないでくれよぉ、お前らが悪いんだからなぁ)


麻袋に入った「兵士たち」。


モブオは命じられるまま、荷車に乗せてここまで運んできた。


もちろん、「廃棄」を命じられたのだ。


(なんで、「イグリース」様に呼ばれて喜んでくるんだよ~)


(どんだけ勘違いしてんだコイツらぁ)


モブオは身震いする。


(「ハティ」の所のガキに手を出して無事なわけないだろうがよぉ)


風音がまるで狼の遠吠えのように聞こえた。


(まあ、人が消えるなんざ、この首都では珍しくねぇからな)


そう思いながら、周囲を見回す。


(俺も早く帰って寝よぉ)



荷車を引いて足早に去る。



靄のような天蓋がかかった空。


そこには「赤黒い月」が浮かんでいた。





〈ロッシェ……〉


僕は「アンジェ」さんに誘われ、城のバルコニーまできていた。


ここには誰もいない。


夜空には「銀に輝く月」がかかっている。


少し風が強い。


北国でもある「エーレンブルグ」。

風もあって肌寒い。

短い夏ももうすぐ終わりを告げようとしてた。


風にさらわれる髪を手で押さえる。


〈降ろして〉


アンジェさんに言われ、僕は彼女を降ろした。


月明かりを受けてほの白く光る「アンジェ」さん。

その白い肌に神々しさすら感じた。


〈この間はごめんなさい〉


「アンジェ」さんが謝る。


「い、いいんだよ。僕もちょっと言いすぎた」


〈うん……〉


気まずい沈黙。


〈ロッシェがアタシを怒ったのって久しぶりだったから、驚いた〉


クスッと「アンジェ」さんが小さく笑う。


〈あんなふうに怒られて……ちょっと怖かったんだ〉


「うう、ごめんよぉ」


あの時は作戦の途中ってのもあって興奮していたんだと思う。

でも、それだって「言い訳」でしかない。


〈大丈夫よ。ロッシェが怒ったのってアタシが「捨てるんでしょ」って疑ったからだって今ではわかっているから〉


「アンジェ」さんの言葉。


ああ、やっぱり彼女は、僕が生まれた時からいっしょにいる「お姉さん」だ。

僕のことをよくわかってくれている。


〈ロッシェは、どんなことがあってもアタシを「捨て」ない?〉


「当然だよ」


〈アタシを利用してもいい。でも、本当に「捨て」ない?〉


「りよ……」


僕は言葉に詰まった。

普段【土寄せ棒】として利用している。

そして、今は彼女が魔力を「スン」って消すのを利用している。


〈言い方が悪かったわ。アナタの今の使い方は、間違っていないし、アタシも望んでいる形なの。でも、アタシのことを知ったら、人によっては悪い使い方をするんじゃなかって〉


確かに彼女の力は強力だ。悪用する人もいるだろう。


「アンジェさん」


彼女の前に膝をついた。


そっと彼女に触れる。


「僕は君を『捨て』ない。もし、間違った使い方をしたならいつものように叱って。僕は君のことが本当に好きなんだ」


―――――ガタッ


遠くで何かがひっくり返る音がする。

でも、今の僕はそんなこと気にしていられない。


〈……ぶはぁっ!〉


「アンジェ」さんが鼻血を吹くような音を出す。


それからカタカタ震え出した。


〈ろ、ろろろロッシェに、ぷろプロポーズされたぁ〉


え?いや、違うけれど。


〈エンゲージリング(草掻きホー)……プロポーズ……〉


ちょっとだけの沈黙。


〈おっしゃあああああああああ!〉


「アンジェ」さんが吠えた。


〈もはや、恐れるものは何もない!〉


いや~、「アンジェ」さんが何か怖がっているのってあまり見たことないよ?


「アンジェ」さんが呼吸を整える。


〈ハル・ロッシェ〉


初めて彼女が僕のフルネームを呼んだ。


〈私の「真名」、何者かをお伝えします〉


一人称が変わっている。

そして、声が……いつものかわいらしさから、威厳に満ちたものに。


〈私は【星霜の洗滌エトス・カタルシス】〉


〈エルフの神樹より生まれ、守護者アンジェ・フラン・スカーレットの心の欠片を宿した〉


〈遠き日、「愛(妄執)」から生まれた私は、あなたの先祖に贈られ、共に歩むことを誓った〉


〈何代にもわたり、あなた達一族を見守り続けた〉


そうか。だから、彼女は「アンジェ」と名乗ったんだ。

……んん?途中なんか不穏な読み換えしなかった?


〈賢いあなたなら、もう私がどのような「力」を持つかおわかりでしょう〉


〈それは、ロッシェだからこそ私と共鳴することができる力〉


〈あなたもまた、「異界」より転生した―――――〉


そこで、【土寄せ棒】の「アンジェ」さんは口を閉ざした。


〈チィ、やっぱり「覗き見」していたわね〉


僕はその言葉に後ろを振り返る。


足早に去っていく音が聞こえた。


〈ロッシェ、邪魔が入っちゃったから、この続きは今度しましょうね〉


もとの調子に戻った「アンジェ」さんが言う。



ジャガイモ仲間の皆さんへ


1日お疲れ様です。

朝日が目に染みる日もあると思いますが、また、明日も頑張りましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ