第76話 朝日がなんでか目に染みる
山向こうから日が昇ってくる。
少しずつ薄明るくなっていった。
死闘を経て僕たちは明るんでいく街並みを見た。
ハティさんのアーティファクトで無残に破壊された街。
しかも彼が突っ込んでいった王城(議事堂)には巨大な穴が開いている。
フェンリルナイトのメンバーがゆらりと立ち上がる。
「……」
無言のまま、ゾンビのように王城へと歩き出した。
僕も彼らについていく。
道すがら、気絶している人たちを見る。
アンジェさんの【煉獄】の影響はかなり大きかったらしい。
まあ、あれだけ荒んでいたからな。
王城へと続く橋にさしかかった。
堀の中に浮かんでいる気絶した衛兵たち。
おそらく呪いの深度が大きかったんだろう、炎から逃れるように堀に飛び込んだんだ。
装備を脱ぎきれなかったのか、慌てたのか。
おしりを出している者がたくさんいた。
(大きな桃がたくさん浮かんでいる……どんぶらこどんぶらこ……)
疲労で頭が回らない僕はそんなことを思っていた。
アンジェさんのいるであろう部屋へと向かう。
部屋にはもう封印は施されていなかった。
みんなが頷き合う。
え?目が据わっている。
スヴェンが扉を蹴飛ばして開いた。
「うぉぉぉらぁぁっ、おやじぁぁぁっ!」
みんなが怒声を上げてなだれ込む。
「俺ら殺す気かっぁ!」
「リムも今回だけは怒ってるっ」
口々に叫びながら部屋へと進み入る。
……あれ?
ハティさんが……あ、いた。
壁に向かって体育座りしている。しかもなんかブツブツ呟いている。
「ひどい、あんまりだ。アンジェさん、なんで…僕のロリ天使」
ああ、なんか見ちゃダメな気が。
というかアンジェさんがいない。
みんなも察したようだ。
「親父、アンジェさんは?」
フィンが尋ねると、ハティさんが声を上げて泣き始めた。
「出ていっちゃったよぉう、逃げたんだよう」
ああ、なんか嫁に逃げられたロクでもない親父のボヤキみたい……
それを見て、フェンリルナイトのみんなが頷き合った。
「親父……」
静かに声をかける。
振り返るハティさんの肩にそっと手を添えるみんな。
ああ、美しいなぁ義理とはいえ育ての親を心遣う――――――
「ぷふゥッ」
皆が吹き出す。
「ざまぁ」
――――美しさを一切排除した残酷なまでの仕打ちだった。
ハティさん、地に伏せて慟哭している。
みんな、恨みは深いんだなぁ……
そんな地獄を見ていると、外から喧騒が聞こえる。
「アガートラームっ!」
「フェンリルナイトぉ!」
僕らを呼ぶ声がする。
ああ、きっと街を救った僕たちを――――
そう思って僕は壁に開けられた大穴から外を見た。
「いたぞっ!」
誰かの叫び声。
ここから僕たちを称賛する声や喝采が……
……石が飛んできた。
何十メートルもの高さがあるので、壁面にぶつかる。
え?なに?
罵声と石がどんどん飛んでくる。
「このやろうっ!家ぶっ壊しやがって」
「商品が台無しだぁ」
「ペットが逃げちゃったじゃないっ」
「楽しみにしていたケーキが潰れたっ」
「【神速の執筆者】様の『薄い本』がぁっ!」
なんかどうでもいいことまで言ってる人がいる。
フェンリルナイトたちはまた頷き合った。
「ハル、これはマズイ状況だ」
うん、それは僕でもわかる。
「ということで、お決まりの――――」
フィンの溜めにみんなで身構える。
「「「逃げろぉ!」」」
凹んでいるハティさんをみんなで抱えて走り出す。
ハティさん体育座りのまま。
それを神輿みたいに担いでいるんだから、結局みんな彼のこと好きなんだね。
とはいえ、暴言と石の礫の中僕らは王都を逃げ出した。
僕らは本当は街を救った英雄なはずなんだけれどなぁ。
英雄って言っても、破壊者は肩身が狭い。
ハティさんの悪評ってこれかぁ……
ジャガイモ仲間の皆さんへ
1日お疲れ様です。
朝日が目に染みる日もあると思いますが、また、明日も頑張りましょう。
【アンジェ救出編】いかがでしたでしょうか?
一筋縄ではいかない人たち(笑)
まだまだ謎か残りますが、その裏ではあの人達がピンチに?
次回もぜひご覧ください。




