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第74話 敵将ナハト


トーチ(灯)に群がる敵は一掃した。

月が中天に差し掛かりつつある。


『月を追いかける狼が来る』時間だ。


ここまで時間を稼げばトーチの位置をハティさんは把握し終えている。

仕掛けも簡単には壊されない。


僕たちはフィンが陣取る中央広場へと向かった。


「オーレっ、下がってろ!」

フィンの叫び声が聞こえる。


「コイツ、キリがねぇ…な!」

スヴェンの声だ。


「るーちゃんも下がってっ!オーレと背中合わせっ」

リャナンの指示が飛んでいる。


リムとコリガンくん、僕は広場へと急いだ。


な、なんだあの人。

のっぺりとしたお面をつけた異形の男。


それも10人?いや、でも……


フィンが槍で突き倒した途端に消える。

そして足元から新たに同じような人が這い出てくる。


「アルス、魔力温存しろ。撃つなよ」

「わかってるって」


アルセイスがマジックスタッフを振り回す。

向かってくる異形の男の攻撃をスタッフで「いなす」。


……あの、僕より様になっていませんか、アルセイスさん。

これだから、イケメンはさぁ。


ちょっと荒みそうになったとき、リムの声がする。

「ハルっ、転べ」

は?避けろじゃなくてぇ!?


足を引っかけられて僕は盛大にスッ転んだ。


だがそれが正解だった。上空から斜めに僕に向かってきた刃。

触手か何かみたいな黒いそれが、さっきまでいた地面に突き立ち、そのまま回収されていく。


前に転んでいなければ首がとんでいた。

「た、すかったぁ」


言いかけた時リムがさらに檄を飛ばす。

「すぐに立って走る!」

「はいぃぃぃ」

そのまま乱戦の渦中に向かう。



フィンたちが何体倒しても、異形の男の数は減らない。

いくらフェンリルナイトのみんなが強くたって、これじゃあジリ貧だ。


僕もなんとかヤツらの攻撃をしのぐ。

といっても避けるだけで精いっぱい。


とにかくフィンが解決の糸口を見つける手助けができれば……


そうか、ハティさんから貰った「アレ」。

あれが使えるかも。


……しかたない。


僕はあえてみんなから離れて孤立した。


鍵爪が伸びてくる。

予想通りだ。このなかで一番弱っちい僕を狙ってくるって思っていた。

僕は手にしていた棒でそれを受ける。


お、重いっ!

予想はしていたけれどそれ以上の勢いで押しつぶされそうになる。

体はヒョロヒョロなのに、なんなんだこの力。


「キキキ、キサ、ママママァァ」


能面男は何かうめいている。

そうか、触れただけで魔力を奪われているんだ!

この爪はコイツの体の一部だったのか。


さらに押し込もうと能面は体重をかけてきた。

弱っているのにこれかっ!

しかも凄い執念!

……て、さらに左腕の鍵爪で僕を横薙ぎに払おうとしてきた。


(ここだっ!)


受けた場所を支点にして棒の下部を突き出すようにしながらもぐり込む。

棒の先端に体重を乗せて倒れ込むように。


ドボッという音がして能面の胴に棒の先端がめり込んだ。

「ゲッ!」


能面が息を吐いて尻もちをつく。


「やったぁ!」

リャナンの声が聞こえる。

「やるじゃない」

リムの声も聞こえる。

「それでこそ、ハルだ!」

フィンの歓声も聞こえる。


ガレットさんから鍛えてもらったカウンターができた。

いざっていう時の切り札。

「キ、サマ……」

抑揚のない声だけれど能面は明らかに怒っている。


「この程度で――――」

「倒せるなんて思ってないよっ」

そう、僕は弱っちい。

たった数カ月鍛錬したところで僕なんかが歴戦の戦士に勝てるわけがない。

だから……


【爆発物につき取扱注意】の包みを投げつける。


「レリース(解放)!スタングレネード(麻痺弾)」


当たらなくたっていい、近くで発動させるだけ。

そうして僕はすぐに背中を向けて走った。


閃光が弾け、音を立てて電気が四方に飛んだ。


おおおおおい!魔人さぁぁぁぁん!


【爆発物につき取扱注意】ってどっかの建物爆破するつもりだったのかよ!?

周りまでとんでもないことになってるよ!

熱いっ、あっっつぅ!?

熱波まで襲ってきてる。


「アアアアアアア!」

能面の悲鳴が聞こえる。

いくらなんでも、これは我ながら酷い。


とはいえ、僕の一番の役目はフィンたちの足手まといにならないこと。

だから捕まったり、盾にされたりするようなことがあっちゃだめなんだ。


そうして、ちょっとだけでもアイツに隙が出来れば、フィンに考える時間ができる。


まあ、アレを食らって無事とは思えないけどさ。


とにかく逃げて距離を――――


ドスッという鈍い音がする。

何?という疑問の前にじわじわと焼け付くような痛みを感じる。


黒い何かが僕の太ももを刺し貫いている。


「―――――――ぁぁぁぁ!」


痛みで悲鳴を上げた。

なにこれ、痛い痛い痛い痛いっ!

「ケヒヒヒヒヒ」

能面の無機質な笑い声が聞こえる。


涙で霞む視界の先に、割れた能面から覗く複数の目がこちらを見ていた。


に、人間じゃないっ!?

這って逃げようとするのをゆっくりと追ってくる。

僕が恐れて、必死にあがいているのを楽しんでいるんだ。


「あのさ」

静かな声がする。

僕の前に女の子が立ちふさがった。

「ハルをいじめないでくれる」

声の主はリャナンだった。


後ろからリムアンの声がする。

「精霊の息吹よ、輩の傷を癒したまえ。【癒し(ヒール)】」

声と共に光の粒が僕の体を覆う。傷が塞がった。

リムアンによる癒しの魔術。

彼女が口をへの字に曲げて歩み寄ってくる。

「……あいつ、大っっ嫌い」


「みんな……」

能面たちの相手をしていたはずだ。

「ハルのおかげだよ。本体をひきつけてくれたから、分体が消えたんだ」

アルセイスの声がする。


「やっぱ、おまえは凄い奴だよ」

スヴェンが僕に肩をかしてくれる。


「フィン、どうす……ておおい!」

スヴェンが声をかける。

フィンの髪が逆立っている。

白い肌が上気して赤みがさし、目が血走っている。

「俺の義兄弟をっ」

両腕と肩の筋肉が盛り上がっている。


フィンレーの「団員証」。

銀のアミュレットが青白い光を放つ。


「ぶっ殺す!」


フィンが走った。

けれど、その姿は捉えられるものではなく、瞬時に相手の眼前に迫った。

先ほどまでの槍ではない。

剣が振るわれる。

軌跡を追うことはできない。

一撃振るう度に青白い炎が吹き、その熱波が周囲を焼く。


しかし、相手もそれに応じている。

不可視の剣戟が数百と交わされる。


青白い炎を纏う剣鬼。

黒い靄を纏った蜘蛛のような複眼を持った異形。


石火が飛ぶ中で、次第に趨勢が決しようとしている。


剣鬼と化したフィンの方が、速くて強い。


押される能面男。

僕に使ったような黒い針を出す間さえない。

ただ力と速さでねじ伏せられている。

回を重ねるごとにフィンの剣の速さと重さが増しているのは分かる。

能面男は弾いたり受け流そうとしたりしている。

けれど、意味もなく潰されている。

いや、小細工をしようとしたことが仇となって自身を追い込んでいる。


ガリッという嫌な音が響いた。


フィンの剣が敵を捕らえた音だ。

「おおおおおおおおおお」

炎が勢いを増す。

フィンが剣を相手の身体にねじ込んでいく。


骨身を削る音。


能面男、ナハトが堪える。


「そのまま力尽きて死ね」

リャナンの冷たい声がする。


「己の不全、悔いを残して闇に還れ――――【ディプライヴ(簒奪)】!」


赤黒い毒々しい色の方陣がナハトの足元に広がる。

方陣から黒い手が伸び、ナハトの身体をむしり、何かを奪い去っていった。


「アアアアア」

ナハトが膝をつく。

そのままガリガリと剣を押しつけられ、体を割かれていった。

両断されたナハトが他の魔物のように霧となって消える。

ただ、彼の場合、後に残ったのは干からびた蜘蛛だった。


「リャナン」

フィンレーが血走った目でリャナンを見る。


「ひひひひひひひひ」

リャナンが奇妙な笑い声を上げる。


「ご、ごめんってぇ、怒らないでぇ」

「でもさ、でもさぁ、アイツ、最後足腰立たないままフィンに潰されたの。痛かったでしょうねぇ、あんな斬り方されたら」

お腹を抱えて笑っている。


「フィンってば残酷っ」

そう言って笑う。


「オマエっ、余計なこと!」

「だから、ごめんって」


それから彼女はすっと目を細めて言う。

「でも、ハルも痛かったんだよ。私も心が痛かった。ハルの声を聞いて」

静かな声。

「アイツは許せないって思ったの」


「おとうさんは私を傷つける奴を許さないって言った。だから私も、私の家族を傷つける奴は許さないの」


「フィンも怒っていたじゃない」


「おとうさん、褒めてくれるかなぁ。あ、リムっ嫉妬したらだめだよぉ」

(ヤバい…ルーダが言ってたのって、これなのか)

僕は狂気じみた笑みを浮かべるリャナンを見た。

こんなのを見たら全員がまともだ。常識人の範疇。

マクスウェルの姉弟とリャナンだけだ。

ここまでおかしいの……


ジャガイモ仲間の皆さんへ


金曜の夜ですね…

明日はお休みですか?

それともお仕事やお勉強でしょうか?


まずはひと息つくことができたら良いですね。


リャナンのヤバさ(黒髪の和風美女のイメージなんですけれどね)など、ご感想やご評価もお待ちしております。


★やリアクションいただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。


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