第66話 ドキドキお買い物と残酷な真実!?本物はコレットだけ?
僕とクロエは市場に来た。
コリガンくんは引きこ……じゃなくて、自宅警備中。
さっきの「鼻ペロ」が気になってクロエの顔をまともに見られない。
こんな可愛い子に……ん?
待て。冷静になれ、ハル・ロッシェ。
クロエは確かフィンより年上だったはず。
ということは、だ。
僕 < リムアン < フィンレー < クロエ
待って、まてまてまて、おかしいぞマクスウェル関係者!
ただでさえいろいろオカシイ人たちなのに。
ロリキャラ全員が僕より年上の成人女性だと!?
もしくは誰かがコンプラ意識しすぎたのか?
唯一、「本物」はコレットだけじゃないか!
というか年齢詐称してないか?
見た目の若さと違いすぎるよ。
そうなるとハティさんやエリーゼさんは何歳なんだ!?
「なにしているニ」
頭を掻きむしる僕を見てクロエが言う。
「あの、クロエはフィンより年上なんだよね」
「女性の歳を聞くのは野暮ってものだニ」
「あ、はい。そうですよね……あはははは」
誤魔化す僕に首をかしげるクロエ。
「まあ、いいだニ。私はバナナ買ってくるニ」
そう言ってトコトコ歩いて行く。
うん、しっぽユラユラして歩いて行く後ろ姿。
下手すれば○学生。
◇
「おまえ、あのキモイのといっしょにいた奴だよな」
声をかけられる。
「誰?」
「議事堂の衛兵だ。憶えてないのか」
「ああ」
そういえばこんな顔だったっけ。
僕よりも背が高くて強そう。
「なんだ、偉そうな態度だな」
「そう?そんなつもりはないけれど」
衛兵と名乗る男は舌打ちして続けた。
「おまえ、アイツと関わらない方がいいぜ」
「なんでさ」
「『みんなに嫌われてるヤツ』の養子だってんだからさ。『騎士の恥』とも関係あるわけだしな」
僕はコイツをぶん殴ってやりたかった。
けれど、我慢しなきゃ…ここで暴れて、作戦がだいなしになるのは避けたい。
「親切に言ってやってるんだ」
「そう、ありがとう。僕はもう行くね」
関わりたくない。とんでもなく不愉快だ。
お前が「みんなに嫌われている」っていう人は、お前みたいに軽々しく「キモイ」なんて言うことはない。
それに比べてお前たちはどうなんだって話だ。
僕はこの勘違い野郎から離れようとする。
「チッ、人がせっかく親切に忠告してやってるのによ。きめぇな」
ブツブツを文句を垂れる。
うるさい奴だな。ポルコを思い出すよ。
「何をやってるんだ?」
離れようとする僕の前に人が現れる。
ふたりか……
「おう、俺がさ、せっかく親切に教えてやってるのに態度悪いんだよ、コイツ」
勝手に絡んで来たくせに。
さっきまではこっちの出方をうかがっていたのに。
図体がデカくても、ひとりじゃ怖いんだ。
急に仲間が増えたら威勢がいいな。
やっぱりポルコと同じタイプだ。
ひとりじゃ何もできないくせに、人数をかさにきて威張り散らすんだ。
「へぇ、怪しいな。あの『嫌われ者』の仲間なんじゃないか」
「だよな。『みんなに嫌われて』国にいられなくなったヤツ」
お前ら、いい加減にしろよっ!
挑発だってわかってる。
きっと手を出させて公務執行妨害か何かで捕まえるか、袋叩きにする口実を得ようとしてるんだろう。
でも、このニヤついた顔を見ていると……
ハティさんの、エリーゼさんの顔を思い出して我慢できそうにない。
「おまえ、何やってるニ?」
クロエだ。
「私の連れだニ。迷惑かけたニよ、行くだニ」
「なんだ、獣人が話しかけるな。動物クセェ」
クロエが耳をピコピコ動かしてから静かに言う。
「そうかニ。じゃあ、すぐにいなくなるニ」
「待て」
「なんだニ」
「よく見れば可愛い顔してるじゃねぇか」
「よく言われるニ。ありがとうだニ」
「こんなガキよか俺らと飲みにいかないか」
「いいニ」
拒むけれど、クロエが路地裏に引き込まれそうになる。
僕は止めようとして手を伸ばしたとき、クロエが「やめておけ」という合図を送った。
彼女の目が濡れたように光っている。
◇
しばらくして、クロエだけが戻ってきた。
「アイツらは?」
「今はゴミ箱のなかニ」
ああ……
「ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てないと臭いがしてダメだニ」
「正直、さっきから臭かったニよお、おえ~だニ」
わざとらしく鼻をつまんで舌を出す。
やっぱりこの人もマクスウェル姉弟に感化された人なんだな。
「あ、ハルたちは臭くないだニ。今のはアイツらのことだニ」
そして、さりげない気づかい。
「でも、衛兵が行方をくらましたら問題になるんじゃないの?」
「ならないニ」
僕たちは歩きながら話す。
「ハルは今この国がどうなっているか知らないニね」
クロエが僕を見上げる。
小柄で、僕よりも背が低い。
リムと同じくらいかな。
「特にこの街では、一人二人姿を消すのは当たり前だニ。騒ぐのは身近な者だけだニよ。その辺の下っ端兵士がいなくなっても政府は捜索すらしないニ」
トコトコと歩きながら世間話でもするように話す。
フードを被った猫耳少女。
尻尾もゆらゆら動いているけれど、なんていうか、話が重すぎて、ギャップがすごい。
「ハルも、ちゃんと知っておくべきだニよ。本当のことを」
ジャガイモ仲間の、皆さんへ。
今日はどんな日ですか?
いつもと代わり映えのない?
それとも希望があった?
ちょっと嫌なことがあった?
何もなかったらラッキーデイ!
良い日ならそれを喜んで下さい。
嫌なことはクロエと一緒にゴミ箱へダンクシュート!
明日もお互いに頑張りましょうね!




