第59話 ポテト神爆誕!戦勝パ~リィ~ナイトってフェスかよ?
スヴェンは重傷だったが、一命をとりとめた。
なぜって、よくわからない。
僕の芋を口に含ませたら全快した。
『嘘だろぉっ!』
って全員叫んでいた。
まぁ、結果オーライかなぁ。
ティアさまは簀巻きにされた。
気絶しているところをリャナンたちが容赦なく簀巻きにして捕縛した。
男性陣でエッホエッホと担いで戻ろうとした時だった。
なんと後ろから「お嬢様ぁぁぁぁ!」って叫びながらメイドさんが追っかけてきた。
僕らが警戒を示すとすぐ目の前で急停止。
眼鏡をクイッと上げて言った。
「このまま、そちらの陣へお運びしましょう」
走ったからなのか、妙に息が荒くハフハフしていた。
(簀巻きのお嬢様も、ス・テ・キ)
なんかよく聞き取れない囁きが聞こえた。
あれ、コレットさん、ドン引きしている。
間抜けな絵面で帰ったけれど、エリーゼさんはご満悦。
「急報!全戦場に伝えなさい」と命じた。
堂々たる姿だった。
不意に「ハティには誰よりも先に『確保した』と伝えなさい」と言った。
その後は急展開だった。
雷鳴が轟いたかと思うと、わずか遅れて狼の遠吠えのようなものが聞こえた。
そして天を焦がす閃光と灼熱。
ガレットさんの砦を囲むシュバルツバルド樹海の外側が半焼してしまった。
政府軍の被害は甚大。
ほぼ壊滅状態で、数えるほうが早いほどの残りで逃げていった。
僕は、五将の強さをまざまざと見せつけられた。
ティアさまだって本気じゃない。
ものすごく手加減して殺さないようにしていた。
それでいて、瞬く間に僕らを昏倒させるだけの強さ。
知力・内政特化なんて嘘だ。
これで五人の中で最弱の武力って冗談でも笑えない。
とどめに、ハティさんの本気。
渓谷を抜けてきた3万もの兵を一瞬で蹴散らした。
結局あの人、いままで手加減していたんだ……
なんだよ、ダメ親父なんかじゃないじゃないか。
◇
「ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ」
軽快な手拍子が響く。
砦の公会堂。数千の兵士たちがひしめいている。
「お前たちぃ、ごきげんかぁい?」
「ウィィィッ」
MCの問いに野太いアンサーがある。
「生きているかぁぁい?」
「もちろんだともぉぉ」
そりゃそうだ。死んでいたら返事できないよね。
「そんなソウルブラザーたちに、ガレットのお頭からスキットがあるぜぇ」
「ウィィィィィ」
何なんだよ、このノリ。パリピかよ。
ガレットさんが壇上に現れる。
「あ~、お前ら、よく頑張ってくれた」
ガレットさんの一声にみんなが歓声を上げた。
というか、「スポ根」どこ行ったんだ?
「軟派」かよ?
「お前らのおかげで、この地は守られた。また皆でバカやれると思うと嬉しい」
観衆がさらに大きな声を上げて歓迎する。
「でもよ、俺らはワンチームだよな?」
「イエス、イエス、イエス!」
「ならわかってんだろぉ?俺らの仲間が、チーメイトがMVPだってことも!」
「ウォォッォォォォォ」
地鳴りがする。なんだろ、この熱量。
「紹介するぜ、兄弟分、ハティ・アガートラーム・マクスウェルだ」
「どもども~」
ぺこぺこしながらハティさんが出てくる。
途端にブーイングだった。
「え~、なんでぇ~」
言葉とは裏腹に嬉しそう。
「続いてエリーゼの姐さん」
「俺と結婚してぇぇぇぇ!」
野太い悲鳴が上がる。
「んで、もって、今回の主役だ!」
ガレットさんの言葉にドラムロールが鳴る。
「フェンリルナイトっ!」
「ヒュ~、イかしているぜぇぇ~」
五人もどうしていいかわからずにただ困惑したままステージに出る。
「おおっと、誰か忘れてねぇか?」
「あああ~」
この問いに合わせてみんなで悲鳴を上げる。
なんだ、この一体感。
「だよな、だよな?誰だっけ~、ええとぉ、最高にマーベラスなぁ」
そう言ってガレットさんが耳に手をあてる。
「これっちょたぁぁぁぁん!」
コールにコレットが困惑しながら手を振って現れる。
「やっべぇ、カワイイ!」
「オレの娘になってぇ」
悲鳴ともとれる声に交じって「僕の蕾だ」というハティさんの声が聞こえてくる。
どっちもどっち。
そして場内が静まり返る。
あ、終わったか。このバカ騒ぎ。
そう思っていた。
「おい、オマエら」
ガレットさんの低い声。
「トリは誰だか、分かっているよな」
途端に大爆音!っていうか堂内が震えた。
「おおおおおおおおおおお」
いや、怖いよ。
「敵主力、俺らでも手を焼いた智謀の将『神機妙道』を討ち取った英雄――――」
声が響き渡る。
「ただのジャガイモ少年が、ジャイアントキリングを成し遂げぇ、10万もの兵を震撼させたぁ」
タメをつくる。
いや、5万近くを足止めしたのはあなた達「黒金の鷹」!
そんでもって、迫ってきた3万を潰走させたのそこの魔人さんだったよね?
残り2万はスタコラさっさと逃げたしさ。
「そういうのを、なんて呼ぶんだ兄弟?!」
「ウィィッ!」
もうこの人たち戦勝に酔っておかしくなっている。
「『救世主』だ!『神』だ!」
誰かの声に合わせて「神」コールが響く。
「そうだ、トリを紹介するぜ!」
「『ポテト神』・ゴッド!ジャガーノート!ハル・ロッシェだぁぁぁぁ!」
「うぉぉぉぉっ」
僕は誰かに背を押されてステージへ出た。
◇
「うぉぉぉぉぉぉ!」
何という熱量。なんという狂態。
「ハル、みんなに一言かましてくれ!」
マイクを渡される。
言うことは一つだ。
「みんなが生きていてくれて嬉しい」
そうして続ける。
「今は居ない人もいると思うけど、そんな人にも伝えてほしい」
僕は深呼吸した。
「みんなぁ、ジャガイモは好きかぁぁぁ」
「ウィィィィィィっ」
「愛しているかぁぁぁぁぁぁ」
「イェス、イェス、イェス!」
「じゃあ、シャウトしろよっ、勝利の宴だ」
僕は息を吸って吠えた。
「僕らはジャガイモを、愛しているぅぅぅ」
『ビクトリーーーーーーーーーーー!!!』
わずかな間。
『そこ、ちがぁぁぁぁぁぁあう』
その場にいた全員がずっこけた。




