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第57話 智謀の将は「カップリング厨」~白狼も黒鷹も妄想に完敗~


【ハイントランド高原戦】


僅かな雪の降り積もる高原を霧が包む。

視界が遮られ、歩兵たちは状況を見失う。


そんな中で、一人、また一人と数を減らし、ついには一大隊が姿を消した。

「な、何が起きている」

「わかりません。こう、視界が悪くては本陣との連絡も…」


白く埋め尽くされた中で、共和国の兵が消えていく……


「バルドール、戦況は?」


「はい、やはりここを選んで正解でした」

「長い行軍、兵の疲労もあります。何よりも、人が増えればその分だけ糧食を必要としますので、荷駄を引き連れてこの高原を行くのはより至難の業でしょう。そこへ、ソニアたちの働きが加われば…」


“ソニア”の出自は良くわかっていない。

ガレットと行動を共にする以前は山賊団の頭をしていた。


捨て子だったようで、それを山賊団の頭が拾い、下働きとしていた。

頭角を見せるようになり、女頭領としてまとめるようになった。


ガレットが戦場を渡り歩く中で交戦し、捕らえたことがきっかけで仲間となった。

それ以後は、山賊団だった頃からの技術を活かし、戦場を渡り歩いてきた。


家名を持たないため、彼女については“ソニア”という名しかない。

だが、人々は「レイヴン」と呼んでいる。


彼女は山賊であった頃から少ない戦力で無力化することに長けていた。

また、恐怖心をあおり、弱いものから切り崩していく用兵の基本も心得ている。


今回のような急増の人数を揃えた兵団は、連携が取り辛い。

それぞれが自己の利益を優先する烏合の衆である。

その綻びをうまくついているのだ。


そして、その一助を担っているのが隻眼の魔術師。

オウル」ことバルドール・ヨハン・メフィストである。

通り名は「辺境の魔術師」である。


もともとは偏屈で協会から追いやられたはぐれの魔術師であった。

ガレットが魔術師を仲間にしようと探し回った結果、半ば強引に引き入れたのが彼である。


霧を発生させ、視界を奪ったのは彼の魔術によるものであった。

一見地味なようだが、長時間、しかも空の様子もうかがえないほどに広がった煙。

それは、方向感覚だけではなく時間も把握しづらくなる。

このあたりが、長年傭兵団の知恵袋として働いてきた彼ならではの渋い攻め方であった。


遠くで鬨の声が上がる。

ガレットの右腕、ウルフスベイン・カイトが率いている「黒金の鷹」が突撃を始めたのだ。


傭兵団を立ち上げるにあたって、この没落貴族が加わったことでまともな人数となった。


家名通りに「カイト」と呼ばれるのは理由がある。

遠目には「ホーク」と呼ばれるガレットと似ている。

さらにその腕前もガレットに匹敵するものであるからだ。


ウルフスベイン(トリカブト)を名乗る彼の戦い方は悪辣であった。

相手の急所を突くのに長けている。

どのような大軍、どのような相手でも弱点を探り「猛毒」のように仕留める。

総大将としてガレットが動けないとき、陣頭指揮は彼が取り仕切っていた。



【クロード渓谷戦】


「バカな、奴らは自分の本隊が危険に晒されているのだぞ」

渓谷に誘い込んで挟撃をしていた。

敵軍は挟み撃ちにあって孤立している。


分断されている後続の軍が救援に向かうのが定石だ。

それを見越してハティたち伏兵が後続部隊を削る。

すなわち、本隊を餌にして救援に向かってきた後続部隊の戦力を減らす作戦だったのだ。


しかし、実際のところは後続部隊が退いていく。

そして囲まれている敵本隊はさらに前進してエーレンブルグ兵団へ攻撃を仕掛けてくる。

本隊後ろを攻めている「黒金の鷹」に対しては無防備。


「……お頭、敵後続の中隊に動きがある。迂回しているぜ」

「なに?」

ソニアの報告にガレットが訝しんだ。


「俺らを取り囲むつもりか?」

不可解な敵の動きに考えを廻らせているガレット。

そこへ、ハティが上空から降るように着地する。

「ガレット、退くぞ」

「なんだと!?」

「こちらの動きが読まれている。作戦は失敗だ、退くより他はない」

「……」

「挟撃をかけているウルフスベインが囲まれることになる。我らの描いた逆の構図だ」

「くそ、やっぱアイツか!」

「兵力は削いだ。それで良しとするしかあるまい。今は被害を最小限に留めるべきだ」



「クククク……なかなか絵になるな。この『ツンデレ・スルー展開』は!」

ティアがほくそ笑む。


戦況を見渡せる丘の上。

風を受けてマントがたなびく。

「本命をイケオジが追いかける。だが、嫉妬した『負けヒロイン』が追いかけてくると思いきや、まさかの『スルー』……ふふふ」


それから顔に己の手のひらをかざす。

「この【因果の管理者クロノ・オーサー】の手に掛かればこんなものだ」

「ふはははは」と高笑いをする。


「目に見えるようだ。イケオジが動揺し、急に意識した『負けヒロイン』の手を『……ちょっと待てよ』と掴むのがな!」


「ハーッ、ハッハッハァーーー!」

虚空にティアの笑い声が響き渡る。



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