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第34話 泥臭いジャガイモ・ヴィクトリー 【ハル・ルート】


「うぉぉおおお!」

僕は「土寄せ棒」を振り回す。


「我慢の限界でも、物を壊しちゃダメだぁ!」

そう叫びながら暴れている人たちを叩いていく。


「皆さん、『限界突破!』です。括約筋を活躍させて!」


ぽこん、ぽこん、ぽんぽこぽん……


バクス村の時のように暴れている人たちを叩きまくる。


――――スン、―――――スン、――――ススン


あのときと同じ、みんな大人しくなってくれた。


「ふぅ、きっとみんなトイレが混雑していて我慢の限界だったんだね」

僕は一息ついた。

「ぜったい違う。それ」

リムアンが呆れた顔で言う。


「うわぁ!?」

破片が飛んでくる。

巨大化したグリード。別名デカオッサンが暴れている。

そしてそれに対抗してフィジカルお化けことガレットさんが剣を振るう。

「くはははは、ぬるいな。リトルリーグのガキでももっとまともな球投げるぜ」

いや、おかしいだろ。

トゲ付き鉄球をことごとく大剣で打ち返している。

とはいえ、近づけないのも事実。

「ハル、そっち終わったんなら手伝え」

「ええ~」

あんな危ないアトラクション、入りたくないよ。

「おまえ、そこで素振り100回な」

ガレットさんなんでここでトレーニング。1000回よりはマシだけれど。

「いいからやれ!」

「やだよぉう、お家帰りたい。芋畑耕したい」

思わず愚痴がこぼれる。

「一万回にするか?」

この言葉に火が付いた。

「アニキ、僕はやるよ!」

そう言って素振りを始める。


「何が始まったんだ?」

アルセイスの回復魔術を受けているウルフスベインさんの声がする。

「いいから、いいから」

リャナンが笑っている。

「いや、お前の情緒。こんな時によく笑えるな」



僕の素振りの回数が増すごとに辺りの靄が晴れてきた。

「ハルっ、やっぱりだ」

フィンレーの声がする。

なに?どういうこと?

スイングで換気された??

「そんな、バカな!」

デカオッサンことグリードが叫ぶ。

あれ、オッサンのサイズも小さくなってきてるような。

「ははははは、お前の敗因はジャガーノートを自由にさせていたことだぜ」

ガレットさんが不敵に笑う。


「跳べっ、ハル」

ガレットさんが叫ぶ。

「道は俺がつくる。お前ならわかるはずだ!」

僕は中空に渦巻くような空気の層を見つける。

「はいっ!」

僕はそれをはしごのように駆け上げる。

一直線に、グリードへ向けて走った。

「バカが、こんなガキに何ができる」

グリードが手にしたモーニングスター(とげ付き鉄球)を振るう。

空中で身動きの取れない僕へ鉄球が飛んできた。

「できるよ。ハルは」

リムがいる。

「槍技、【パリィ(受け流し)】」

リムが鉄球を弾いた。

「行けっ」

リムの声に背中を押されるように僕は走った。

棒の効果のせいか、足場はもろくてすぐに崩壊する。

戻ることなんてできない、前に進むしかない。

でも、僕がアイツを倒せるなんて思えない。

(あれはジャガイモ、あれはジャガイモ、あれはジャガイモ……)

自分に言い聞かせる。

「わあああああああああっ!」

僕は最後の足場を蹴って叫び声を上げる。

気合とか雄たけびとかそんなカッコいいものじゃない。

落下の勢いが怖いだけだ。しかも鉄球ぶん回してるヤバい奴に落下しているんだから。

僕は目を瞑り、覚悟を決めて棒を振り下ろした。


カーンという固い音がする。

物を叩く手ごたえに、恐る恐る目を開く。

「あれ?」

「は?」

そこにグリードはいなかった。

遥か前方にいて呆けている。

や、やっちまったぁっ!あんまりに怖くて思いっきり跳ばなかったからっ。

「ぶっ、がはははははは」

あいつの爆笑が聞こえる。

は、恥ずかしいぃぃぃぃ。


「ナイス、フェイント」

風の音と共にそんな囁きが聞こえた。

「刀技、【疾風はやて】」

「っ!」

リャナンだ。

高速の抜刀術でグリードに斬りつける。

グリードがかろうじて盾で防いだ。

「おおりゃぁ!」

フィンが剣を振るう。

「剣技、【フューリー(怒り)】」

叩きつけるような剣の連撃。


「今だっ!」

声と共に後ろへ跳ぶ。

同時に僕に覆いかぶさり、姿勢を低くさせた人がいる。スヴェンだ。

「【エーテルブラスト(霊爆)】」

アルセイスの魔術放たれた。

先ほどまで斬り結んでいたグリードに逃げ場はない。

避けられずに直撃した。


爆炎が晴れる。

「がはははは、こんなんでくたばるかよ。仮にも俺は――――」

「そういうの、間に合ってんだ。本命こっちなんで」

盾を背に懐にもぐり込んだスヴェンがいる。

「やれっ!ハル」

僕はスヴェンの盾に守られながら、その下から愛用の棒を突き出した。

ここまで接近して、大柄な相手だ、目を瞑っていたって外すことはない。


―――――スン


今度こそ棒の先がグリードを捉えた。

「は?痛くもかゆく、も……」

言葉と共に膝をつく。

「お、俺の俺の力が…『恩寵』が…消えて?!」

グリードが愕然とした顔でハルを見る。

「貴様、なにを、し―――」


「うおぉぉらぁっ!」

ガレットさんだ。

大剣を振り下ろす。

ゴィィィィィンと何とも言えない音が響いた。剣の腹で殴って昏倒させたのだ。

「ほんとうならぶった切りてぇんだがな」


その向こうでリムがポーズを決めている。

「私たちの勝利。『狩りは一匹でするもんじゃない』……ハティの教え」


「どうした!?親玉は獲ったぞ!俺らのジャガーノートが獲った」

え、いやとどめはあなたが……


「コイツの圧倒的な破壊力の前では、何人たりとも無力だ。抵抗をやめろ、今なら命はとらねぇ!」


駆けつけてきたグリードの兵たちは、その言葉を聞いて武器を投じた。


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