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第30話 魂(ソウル)を込めろ!レッツ・ワーク、肉・ジャガー 【ハル・ルート】


僕は給仕に扮して屋敷に潜入した。

「……どう?」

リャナンとリムアンがメイド服を見せる。

か、かわいい……

「あ、こここここ言葉がうまくでないのですが」

「反応で分かった。ありがとう」

いえ、お礼を言うのはこちらです。

今回の僕たちのミッションは屋敷内でウルフスベインさんを拘束すること。

そして彼の意図を聞き出すことだった。

ちなみにこれはフェンリルナイトと僕の独断。

ガレットさんにあれだけお世話になっているんだから、仲直りの手伝いくらいはしたい。

「で、どうするの?」

「ハルの美味しい芋料理でおびき出す」

「はぇ?」

「ちゃんと考えているんだぁ」

リムアンとリャナンが自信たっぷりに胸を反らす。

メイド服って胸が強調されるのですね……

「おい、ハル。後で一発殴らせろ」

リムが低い声で言う。

「わっ、なんかゴメン」


僕はカートを押す。

カートの上には僕特製の「肉じゃが」が載っている。

見栄えはもちろん、味にも自信がある。

ホクホクの男爵(爵位じゃないよ)は煮崩れしていない。フッ匠の技だぜ。

他の野菜だって負けてはいない。

すがすがしい緑のインゲン。情熱的な赤のニンジン。隠れた実力者の玉ねぎ。

このワンチームなら同じ「農」力者のウルフスベインさんだってイチコロだ。

「さて……」

リャナンが小瓶を取り出す。

「最後に隠し味を」

そう言ってサラサラと白い粉をふりかける。

「あああ、なにをするんだよぅっ!」

農の至宝に化学調味料だとっ!いくらリャナンでもぶっとばすぞ!

憤慨する僕にリムアンが説明する。

「ハル、おいしい料理だけでウォルフを口説けたら苦労しない」

「そうだよ。それに戦っても勝てないと思う」

え?どういうこと。

「相手はガレット並の化け物だと思って」

……勝てる気がしない。会話も成立しなさそう。

「それと、その粉となんの関係が……まさか、毒!?」

「シー、声が大きい」

ふたりに口を押えられる。

柔らかいふたりの手にちょっとドキドキした。

「毒殺なんてして、ガレットさん怒るよ」

「だろうから、これ、下剤」

下剤っすか。それもそれでえげつないですよ。

「これでお腹がピーってなって、トイレに行こうと慌てているところを捕まえる」

「そうしてね、『情報を漏らすか、実を漏らすか選べ』って脅すの」

グフフフと二人が悪い忍び笑いを漏らす。

ヤバいよコイツら。

「誰が自宅の廊下で『肥しを漏らす』んだ?」

後ろからした声に僕らはギョッとして振り返った。

即座に脳天に衝撃。

拳骨が落とされたんだ。

「いったぁぁぁ!」

あまりの痛みに三人がうめいてしゃがみ込む。

「ったく、だからハティのところのガキは面倒くせえんだよ」

ウルフスベインさんだった。



「ほ~れ、ほれ。どぉした?この程度で根を上げるのかぁ」

ウルフスベインさんの声がする。

「ぁ、いやっ、やめろ」

「いや、やめてください」

リムアンとリャナンの力ない悲鳴が上がる。

「ダメなメイドにはお仕置きをしなくちゃだなぁ」

ねっとりとしたウルフスベインさんの声。

だ、だめだ!見てられない。

アレをあんな使い方して、彼女たちを辱めるなんてっ。

……

「ギャハハハハハハ!」

ふたり同時に笑いだした。

「ほうれ、コチョコチョコチョ……」

ウルフスベインさんは穂のついた麦を使ってふたりをくすぐる。

「にゃはははは、やめ、やめろぉぉぉ、げふげふ」

「おえっ、ひゃははははは、やめてっ、うひゃひゃひゃ」

もうふたりとも限界だ。

それを見極めてウルフスベインさんは離れた。

「これに懲りたらバカな真似はするんじゃねぇぞ。クソガキども」


ウルフスベインさんが拘束した僕たちを見下ろす。

「な、なんでハルだけ……」

リャナンとリムアンが恨みがましい目を向ける。

確かに僕は罰をくらっていない。

「そりゃぁ」

ウルフスベインさんが照れくさそうに頬を掻いた。

「あんな見事な肉じゃが見たらなぁ」

そういって僕の肩に手を置いた。

「おまえの『農』力、ハンパねぇな。特に芋の煮方に『魂』を感じたぜ!」

目を輝かせている彼は少年のようだった。

「お前のその熱い『ソウル』、お頭が目をかけるのも分かる気がする」

「そ、そうですか。えへへへへ」

なにかこの人とは分かり合える気がする。

一方で拷問を受けたリャナンたちがじっとりとした目で僕たちを見ていた。


「んで、俺に何の用だったんだ?」

ウルフスベインさんが尋ねてきた。

「あ、えと。なんでガレットさんの元を離れたんですか?」

「もとからそういう約束だったからだよ。土地もらって俺の夢を叶えるって」

「『黄金の麦畑』ですか」

ウルフスベインさん、面食らったようだ。

「そうほいほい人に言うもんじゃねぇって言っただろうに。ったくよ」

「なんでですか!言いましょう、シャウトしましょうよ、最高に熱い夢じゃないですか!」

僕は叫んでいた。

「僕も協力しますよ!むしろ、負けませんから」

「は?」

「僕は大地を埋め尽くす芋畑作ってジャガイモで世界征服しますから!」

興奮して言ってしまった。

「ジャガイモで、世界征服だと?」

あ……なんか肩を震わせている。

「なんだそりゃ、最高に熱いじゃねぇえか!ソウル・ブラザー」

背中をバシバシ叩かれる。とんでもない力、めちゃくちゃ痛い。


「よぉうし、いいね。そんじゃあ、手始めにグリードの奴をボコるか」

え?どういうこと?

「グリードの手下になったんじゃないの?」

「はぁ?んなわけあるか。俺はアイツの悪行暴いて、政府共々2年前の反乱のツケを払わせるんだよ」

僕たちは絶句した。

「じゃ、じゃあ、ガレットさんたちを裏切ったってのは」

「ああ、そう思い込ませていた方が都合がいいからな。『敵を騙すにはまず味方から』って言うだろ?」


ジャガイモ仲間へ


金曜日の夜。

一週間お疲れ様でした。

土日仕事(学校)の人も、まずは「肉じゃが」で一息つきませんか?(お通じよくなる薬の入ってないやつで)

今日1日の自分に「ヴィクトリー!」

熱い「魂」で堪えた自分、「ヴィクトリー!」


次回はついに因縁の相手、グリード戦に向けてガレットたちが動き出します!

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