第23話 コレットの事件簿2 【コレット・ルート】
あ~、それはうららかな日差しが注ぐ昼下がりのことでしたぁ~
「ねえねえ、コレット。これおいしいよ。食べて食べて」
そう言ってハティさんがクレープを差し出してくる。
ベリーソースのかかったクリームたっぷりのやつ。
(ふふふふ、カワイイ蕾が無邪気にクレープを食む。最高じゃないか)
心の声がダダ漏れ。
(ちょっと抱えるようにして食べるその姿、子リスのようなコレットを見たい)
ああ、ダメな人だ。見た目とスペックはレベル高いのに。
以前かわいいお洋服をプレゼントしてくれたことからもいい人だってわかる。
ちなみに、あの服は恥ずかしいのでマジックバッグに格納中。
あ、「マジックバッグ」ていうのは見た目以上に物を収納できる便利アイテム。
空間魔術を使っているのでとっても高価なんだけれど。
これもハティさんとお姉ちゃんがプレゼントしてくれたの。
差し出されたクレープはストロベリーとかラズベリーがキラキラ光っている。
私はクレープがおいしそうなので我慢できずに受け取ってしまう。
一口かじる。
あまくってちょっと酸っぱいけれどおいしい。
(ふぉぉぉ、尊い!やはり蕾たちは『国の至宝』だ)
私のビジョンでハティさんがガッツポーズしながら叫んでいるのが視える。
……よし、ちょっといたずらしてやれ。
「ハティさん、とってもおいしい。ね、ハティさんも食べて」
そう言って「あ~ん」って差し出す。
ハティさんが固まった。あれ?
ガタガタと震え出す。
「はわ、はわ、はわわわわわっ」
鼻息が荒い。まるで変質者だ。
(なんたる僥倖!これはなんだ、なんのご褒美だ?もしや僕は早晩死ぬのか?)
いや、なんでそこまで。
「で、ででででは。ハティ・アガートラーム・マクスウェル。参ります!」
というか、なんで鼻血を垂らしているの?
そうして、敬礼してから顔を寄せてくる。
私もちょっとドキドキしている。
だって、見た目は銀髪王子様系の超イケメンなんだもの。
そんな人が顔を寄せてくるんだ。
でも、それを許さない人がいた。
「キシャャャャァッ!」
怪鳥のような声を上げてダッシュしてきたお姉ちゃん。
そして獲物を攫うようにクレープを咥えていく。
「なぁ!?」
ハティさんが愕然としている。
そしてギギギギギギとぎこちない動きでお姉ちゃんを見る。
「あ、あね、姉上……なんて、ことを」
「ハティ(クッチャ)、あなたには(モグモグ)、まだ早いのです」
いや、木の上で咀嚼しながら言う事じゃないよね。
あ~、もちろん~、これはぁ現行犯逮捕が可能な事例ですぅ~
ん~、明らかに「窃盗罪」ですねぇ、禁固刑か罰金刑にぃ、相当します~
「ひ、ひどい。あんまりだ」
ハティさん、なんで血涙流しているの?
「『あ~ん』ならお姉ちゃんがしてあげます。コレットにしてもらうのは私だけです」
え……なに、それ、私への独占欲?ちょっと嬉しいかも。
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!コレットの『あ~ん』だぞぉぉぉ!」
あ、残念魔人さんがキレた。
とはいえ、最優の聖騎士長と最狂の魔人の姉弟ケンカなんて、ラグナロク級?
加害者に対して被害者がキレて暴行を行った場合……
というか、この姉弟では更地どころか世界が滅ぶっ!?
ゴゴゴゴゴゴゴ……
地響きがする。
拳を握って仁王立ちするハティさん。
なんかもう、とんでもない魔力があふれ出ている。
「くっ、ハティ、お姉ちゃんに暴言を吐くとはっ。本気ね」
一瞬お姉ちゃんがたじろいだ。
一触即発の状況。
ど、どうしよう。
私の「あ~ん」のせいで世界が滅ぶの!?
顔を伏せていたハティさんが顔を上げる。
引き結んでいた口が開いた。
「お姉ちゃんのばかぁぁぁぁっ!」
え~、何と言いますかぁ、ハティさんの外見は二十代後半ですねぇ~
そんな方がぁキレて発したセリフがぁ「お姉ちゃんのバカ」ですかぁ
一応これは「侮辱罪」ですね~、親告罪ですがぁ禁固刑や罰金刑に相当します~
あ、お姉ちゃんが固まっている。
ボロボロと涙をこぼし始めた。
「あ、ああ……ハティに『バカ』って言われた……」
それから声を上げて泣き始める。
「うええええええええん」
実の姉が泣きじゃくる様を見たハティさん。
「僕は悪くない!」
あ、魔人さんも泣いて逃走しちゃった。
…
……
ええ~、今回は被害者の泣き寝入りという、とても残念な結末でしたぁ~
ん~、犯人も相当なダメージを負っているようですぅ~
皆さんは、泣き寝入りする前にぃ、ぜひ公的機関に相談んんんをぉしてみてください。
あ~、…コレットぉ……オルレアでしたぁ~




