第19話 作戦会議
村の偵察から戻ってきたリャナンは相変わらず不機嫌だった。
「ストレスで、胃に穴が開きそう」
とかのたまっている。
「んで?実際どうだった」
「クソだった」
「なんだ?それじゃあわからねぇよ。具体的にどんなクソかを言えよ」
「可憐な女の子にクソの話をさせるつもりですか?」
「じゃなきゃ偵察の意味ないだろうがよっ」
リャナンとガレットさんが言い合う。
「だから、こんなガキをあてにするなって言ったろ。お頭」
洞窟の出入り口に立つ女性。村娘の格好をしているけれど、僕はこの人を知らない。
「おお、ソニア。ナイス・マネージャー」
「アホか」
そう言ってどっかりと胡坐をかいて座る。
「村長の家に共和政府軍が駐屯している。数は56人。内、指揮官が1名。魔術師らしきヤツが5名だ。あとは兵士」
がさつそうな言葉遣いとは別に、具体的に話し始める。
「あの、あなたは?」
僕は彼女に聞いた。
「お頭から聞いてないのかい?私はソニアだ。『黒金の鷹』の古株さ」
「ソニアは最高にマーベラスなマネージャーでシーフだぜ」
ガレットさんが付け加える。
「その最高の山賊だった私をボコって従わせたのはお頭だろ」
「そうだったか?夕日の差す河川敷で、拳で語り合ったっけ?」
「話が進まないから、いいよ、そういったボケはさ」
なんだか夫婦漫才みたいだ。
「続けるぞ。村の守護結界は依然機能していない。魔物が隙間から続々と入り込んでいるけれど、これ自体が異常事態だってのはわかっているかい?」
僕以外のみんなが頷く。
「なら、話が早いな。これだけの数がいること自体がおかしい。つまり魔物を『造っている』奴がいる」
魔物を「造る」?あのデカネズミを?
「お頭の読み通りだった。アイツら生体実験をしてた」
「ちょっと待ってください、僕は話が見えていないんですけれど」
僕はどんどん進んでいく話について行けずに、口をはさんだ。
「ん?コイツだけわかってないのかい?」
ソニアさんが首を傾げた。
「まぁ、な」
ガレットさんの曖昧な返事。
「お頭は適当でいけないねぇ」
ソニアさんため息をついた。
「いいかい、ハル。今この村はね、政府の奴らの実験場になっているんだ」
へ……?
「普通魔物が発生するのは、近くのダンジョンから出てくるか、自然発生した瘴気だまりで生き物が変質してできるかぐらいしかない」
「短期間にこれだけ大量発生するのは異常事態なんだ」
「だから誰かが『造った』?」
「そういうこと。それで私が調べたらこの奥の森で動物を魔物化させる術を使った跡があった。魔術陣の跡と触媒さ」
「そんな、何のために」
「それが政府の狙いだからさ」
「政府の?」
「アイツらの目的は『人間の魔物化』。自分の眷属をつくることさ」
え?え?え?
「使えそうなのは眷属に、それ以外は餌にって魂胆だろうね」
「なに、それ……」
「信じられないだろうけれど、お頭と私たちはそれに抵抗している」
そりゃそうだろ。
というか、なんかこの国自体、ヤバいことになってるよ。
「話を戻すぞ。アイツらがここを実験場にしているのに、わざわざ村人を一か所にまとめて保護しているのはなんでかわかるか?」
「餌か実験体かを確保している」
「なんだい、バカだと思っていたけれど賢いじゃないか」
僕とソニアさんのやり取りを見ていたガレットさんが口を挟んできた。
「ま、詳しい話は後でしようぜ。今はアイツらをどう排除するかが先だ」
あまりのことに頭は追いついていない。
でも、「みんなを助けなくちゃ」って言葉が僕の口を突いて出た。
「お前、まだ言ってるのかよ」
僕の言葉にフィンが呟く。
「あたりまえだろ」
迷いない返答にフィンレーが頭を抱える。
「そうだよな、お前はそういう奴だよなぁ」
「そういえば、お頭。豚みたいな奴が頻繁に出入りしてるんだよ。ソイツを使うか?」
「ひん剥いて自白させるってか?」
「そうさ」
「やめとけ。多分ソイツは捨て駒だ。何にも教えられちゃいねぇよ」
「そうか、言われてみりゃそうだよな」




