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第16話 ジャガー・ノート(ジャガイモ・農家)


今日のトレーニング(マインドコントロール)を終えて食事を摂る。

「しっかしさ、ハルのジャガイモは本当に美味いな」

フィンレーがポテトサラダを食べながら言う。

「確かにそうだね、何でか魔力まで回復するし」

「だよな、筋肉痛にすらならない」

アルセイスとスヴェンも同意する。

「へへ……嘘でも嬉しい」

僕は正直に喜びを表した。

丹精込めてつくったジャガイモがみんなに認められるんだ。

しかもこだわりの一品。

あえて甘みを出すために玉ねぎと煮込んでマッシュしている。

アイスクリームみたいなドーム状にミニトマトとレタスの彩りだって完璧。

「お世辞じゃないよ、本当だって」

リャナンがポテトグラタンを食べながら言う。

「私、あんまり頭良くないからさ、よくわかんないけれど、ハルの作る野菜は他のと全然違うよ?」

そうリャナンが褒めてくれる。

ちょっと垂れてきた黒髪を手で押しやって食べる姿は美少女そのもの。

こちらも滑らかさ重視で濾したマッシュポテトとカリカリに焼いたチーズとの対比。

柔らかくてちょっと甘みのあるポテトとカリカリで塩味のあるチーズが最強コンビ。

「ね?リムもそう思うでしょ?」

リャナンが同意を求めるようにリムアンを見る。

「ん……」

リムアンは無言でこくこく頷く。

というか、リムアン猫舌なんだ。さっきからグラタンをふぅふぅ冷ましてから食べている。

ちなみにここは僕の家だ。

もはやフェンリルナイトのたまり場にもなっている。

「みんな、たくさん食べてね」

母さん、なんだか嬉しそう。

「はぁい」ってみんなが元気よく答える。リムアンですらそこはちゃんとする。

というか、基本みんな礼儀正しい。


「みんなさ、『いただきます』『ごちそうさま』とかちゃんと言うよね」

僕の言葉にみんなが顔を見合わせる。

「そんなにおかしいか?」

「いや、礼儀とかしっかりしているから」

そう言ってリムアンを見る。

「なに?リムを見て。そっちが失礼」

「ご、ごめん」

謝る僕をリムアンが小突く。

妹とじゃれているみたいな感じ。

「ウチの家訓なんだ」

スヴェンが補足してくれる。

「家訓?」

「そう、マクスウェル家の家訓だよ」

アルセイスが教えてくれる。

そういえばみんなはハティ・アガートラーム・マクスウェル。

銀の右腕の魔人、「白狼将軍」の養子だった。

「ええ、フェンリルナイト加入のハル君にもご唱和いただきます」

そう改めてフィンレーが言う。

「マクスウェル家家訓―――――」


ひとつ、「いただきます」「ごちそうさま」は必ず言え。今日のウ●コは昨日のおかげさま。

ひとつ、お前は木の股から生まれたか?父ちゃん母ちゃん恨んだってしょうがない。

ひとつ、他人がどうだとか口にするな。そんなの負け犬の遠吠えだ。

ひとつ、仲間を侮辱する奴はぶん殴っても構わない。けれど殴り返されることを忘れるな。

ひとつ、偉そうな奴はおだてておけ。財布の紐も警戒も緩くなる。

ひとつ、迷ったら自分の中の鏡に向かって聞いてみろ。そこに映った自分は誇れるのか。

ひとつ、お前は誰だ?そんなの決めるのお前だけ。誰も責任とっちゃくれない。

ひとつ、ヤバいと思ったら逃げちまえ。生きていたらどうとでも言える。


なに?この八か条。

深いような教訓なんだけれど、表現がアホっぽい。


それから、男子チームは農作業の相談。

女子チームは率先しての片付け。

「ハルはすげぇな、こんな岩ばかりの土地でジャガイモ農園つくるんだから」

「え、いやそんな……」

僕は謙遜しながらも愛用の「土寄せ棒」を見る。

こいつのおかげで土がほとんどないこの土地でも作物が作れるようになった。

岩ばかりの場所で、わずかにある土のある所はみんなで取り合いになっていた。

だから、僕たち新参者は空いた土地を探すしかなかったがダメだった。

そうしたら、フィンが「無きゃ作ればいい」って言った。

スヴェンやアルセイスも手伝って、許可を貰った土地を開墾した。

そこで活躍したのがこの棒。

元々石ばかりの場所を叩くと、「スン」って音もなくみずみずしい土になる。

「すっげぇ、何それアーティファクト?伝説の農具?」

皆で興奮するけれど、以前触ったときのダメージを思い出して遠巻きにしていた。


そんなこんなでどうにか形になり、僕の経験からジャガイモを育て始めた。

村から持ってきたジャガイモが無くなりそうだったという理由もある。

春と秋の二回植えができるから、食糧確保にもちょうどいい。

なによりも僕が中心になって、皆の役に立てていることが嬉しかった。

「とりあえず、種芋を植えればいいんだよな?」

「今の時期だと、切ったのじゃなくって丸いままの芋を植えないと弱ってしまうんだ」

そんな話をしていると、ドアをドンドンと叩く音がする。

「?」

僕は出入り口に向かう。

「どちらさま……うわっ!?」

ドアを開けた瞬間、抱き着いてきた人に驚いて転んでしまった。



「なんだ?なんだ?」

フィンレーたちがハルの悲鳴を聞いて顔をのぞかせる。

「あ……」

その状況を見て唖然とした。

大荷物を背負った女の子が、ハルを組み敷いて抱き着いている。

「ななななな……」

様子を見に来たリャナンもリムアンも絶句している。

「ハルっ、なんで出て行っちゃうのっ」

なぜか泣いている。

「え?あ、ハンナちゃん?」

母親が出てきて驚いている。

女の子の名前はハンナ。ハルがバクス村にいた頃のご近所さんだった。



なんだかとんでもない空気だ……

大荷物のハンナが飛び込んできて、僕を押し倒した。

そのあとは事情を聞くためにリビングへと迎え入れたはいいけれど。

「くっそぉ羨ましいなぁ」とフェンリルナイト男子チーム。

さらに「嫁?嫁か?」とからかっている。

そして、なぜかリャナンとリムアンが不機嫌。

何とも言えない顔でハンナを見ている。


「ハンナ、どうしたの?どうしてここがわかったの?」

「……探した」

「え?」

「出て行ってから、国中探した」

……はぁ?!

「ハル、なんにも言わないで出て行っちゃうんだもの、私、探したんだよ!」

テーブルを叩いて怒る。なんか涙を溜めている。


この様子に後ろの男子連中が「きゃぁぁぁ」と驚喜した。

いや、うるさいよ。この空気を読んでよ。

「べつにぃ、幼馴染みがぁ心配してきたってぇ、だけでしょうからぁ」

リャナンたちが呟いている。

だから、なんで怒っているの?


「村はどうしたの?おじさんとおばさんは?」

僕は強引に話題を変えた。

そこでハンナもハッとしたようで、僕の手をとった。

この様に、男子連中は「キター!」とか叫ぶ。

女子連中は「オマエ調子乗りすぎだ」とか唸るし。

そんな周囲を他所に、ハンナが僕に訴えかけてきた。


「ハルっ、村が大変なのっ、助けて!」


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