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第155話 テッカテカの筋肉に「清め水」を!~暴走する推し活とキレる運営~



「もっと、もっとだぁぁぁぁ!」


観客が叫ぶ。


蒸し風呂状態の闘技場よりもスタンドの熱気の方がひどい。


「もっと、『汗と筋肉の躍動と友情』を見せろ!」


いやさ、最後の「友情」はいいんだよ?


でもね、前半二つは問題でしょうよ。


オオオオッ―――――


歓声が上がる。


僕が見ると、相手チームが二人がかりでスヴェンに攻撃している。


スヴェンはガードを固めて耐えている。


アルセイスを庇っているんだ。


「ちょっとは、スタミナつけろっ、よ……な」


「ご、ごめん。この暑さで」


「良いって良いって、気にすんな」


そう言うスヴェンもさすがに押され気味だ。


「いいぞ、そのモブゴリどもに『6ティポイント』ずつやろう!」


「ウチの筋肉ドーベルマンをもっと苛めてやれ」


ティアさま、いい加減にしなよ。


ここはなんとか役に立たなきゃ。


よし、カットだ!


僕は走って救援に向かう。


どうこうできるなんて思わないけれど、的が増えたらちょっとは混乱するでしょ?




僕はカットインするために走る。


「おおっ、良いぞっ『愛と友情』!」


愛は余計だ!


気を取られたのがまずかった。


この熱気でスタミナも削られていたんだろう。


足がもつれ、転んでしまう。


あっっつぅ!あちちちちちち。


地面がメチャクチャ熱い。


火傷するレベル。


僕はあまりの熱さに転げまわる。


「っ!?」


転がりながら勢いで相手選手の足元まで来てしまった。


そしてゴロゴロと股下を抜ける。


相手も「ポカーン」だ。


ヤッべぇっ!


このままじゃ場外の熱湯に落ちる。


「ハルっ!」


アルセイスたちの声が聞こえる。


こうなりゃぁぁ。


「ど根性」で相手の足首を掴む。


もちろん、掴まって転落を避けるためだ。


けれど、相手も相当疲労していたのか……


「うわっ!?」


なんと僕に掴まれたことによって足をとられて転んでしまう。


そして隣にいた人も巻き込んで「灼熱の地面」に―――


「ああっアッツぅぅぅぅ!」


ふたりとも悲鳴を上げて転げまわる。


それぞれが互いに絡みあうように。


ワアアアア――――


歓声が上がった。


「なんという、芸術的な『アンクルピック』だ!」


「あの子、股抜きしたぞ」


「ムクツケキ男二人が絡み合っているぅっ」


観客がどよめく。

途中、「腐」属性の誰かが言ったことは無視しよう。


「ハーッ、ハッハッーー!」


ティアさまの笑い声が響く。


「あれが、最近話題の『ジャガーノート』だ!」


会場がさらに騒然となる。


「なに!?『ジャガーノート』だと?」


「知っているぞ。共和政府軍10万を一人で退けた」


「首都を壊滅寸前まで爆破した『不可抗力の破壊者』!?」


「つい最近、共和政府本営でも大暴れしたらしいじゃないか」


「あのランドルフ将軍をも圧倒したという…」


「どうりで。あの動きは『玄人』のものだった」


「そして灼熱の地面に押し付ける『残虐ファイト』」


いや、ねつ造しないでよ!


僕は「ジャガイモ農家」なんだって!



―――――バシャッ!


水がかけられる。


転倒して背中を火傷した相手選手にだ。


「さすがに、モブゴリでも『火傷』はかわいそうだわ」


エリーゼさんがバケツを手にしている。


な、なんて慈悲深い……


「と、いうことで『良いこと』したお姉ちゃんにもう一杯お酒を……」


酔眼で言う。


台無しだよな。


うおおおおおおおおッ!


なぜか雄たけびが上がる。


小屋が震えた。


「水かけ祭りだ!」


「マッスル水かけ祭りだっっ!」


は?なんだよ、それ?


「見ろっあのスキンヘッドのモブゴリを」


いや、もう「モブゴリ」呼び定着している?


酷くないかな。


「テッカテカに輝いてるぜ!」


誰かが言った。


「いい、いいぞぉ!筋肉の隆起がハイライトで輝いているっ」


ティアさまも叫んだ。


「よぅし、私の創作意欲に火をつけたお前たちに『100ティポイント』を授けよう」


ああ……この二人、「薄い本」のネタ確定じゃないか……


「先ほどの絡みといい、もっともっとだ!もっと魅せろ」


ティアさまが手を伸ばすと、ジャンヌさんが水の入ったバケツを手渡す。


「そぉれぇっ!」


躊躇うことなくぶちまける。


それも、僕らに。


うおおおおおおおおっ


またもや歓声。


「筋肉青年っ、輝いているぞ!」


「金髪細マッチョもっ!」


「ロン毛イケメン君っ、水も滴るいい男ザマスぅ」


「ハル……やだ、ちょっとそれは刺激強すぎる」


他の観客たちが興奮を露わに叫ぶ。

ルーダ、さっきから何言ってるの?良く聞こえないんだけれど。


「そうれ!もういっちょう」


バシャー!


「おかわりザマスっ!」


バシャバシャー


「そうら、『清め水』っ!」


バシャバシャバシャ!


暴走した観客たちが「キャーキャー」喜びながら僕らに水をかける。


《 え~、運営からです。選手に水をかけないでください 》


「キャー!ムクツケキ男たちが汗と水でッ」


「これ、面白い」


リャナンとリムアンも面白がって水をかけてくる。


《 繰り返します。選手に水をかけないでください 》


「ヌルテカのモブゴリに『4ピカポイント』!」


「こっちは、金髪細マッチョくんに『6キラキラポイント』だ!」


《 勝手にポイント付与もやめてください 》


「水だ!」


「ポイント入れるぞ!」


《 ……おい 》


「筋肉青年!髪を掻き上げてくれ!おおお、いいね『10ポイント』!」


〈いいなぁ、アタシもやりたいのにぃ〉


「水のおかわり行くぞ」


《 おい……聞けよ 》


あ……なんか運営さんがお怒りだ。


《 話聞けっつってんだろぉ、コラァァァ! 》


あ~、ついに怒っちゃた。


《 現時点を持ちまして、試合続行不可能と判断し、「没収試合」といたします 》


「ええ~」

「つまんね~」

「もっと、テカテカさせたかったぁ」

「筋肉の躍動と絡みを見せろよぉ」


観客からは大ブーイングだ。


いや、運営さんの判断は正しいと思うよ?



ジャカイモ仲間の皆さんへ


最近は本当にいろいろあって落ち着かない日々ですね。


皆さんの周りはなんとか落ち着いていますか?


とにもかくにも安全第一。


明日もマイペースで、危ないことには「スン」して関わらないようにしましょうね。



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