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英雄賛歌 ~前世の力で今世は楽しみます~  作者: 如月
第二章 英雄、冒険する
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004 魔力特性検査

「わぁ。綺麗だね。」


 アリスちゃんが声をあげる気持ちも分かる。地下に降りた先は石作りで無骨な壁ながらも、部屋の中心には台座の上に球体が嵌めてあり、その光景はどこかの神殿のようで、威厳のようなものを感じられるものだ。

 この虹色の球体は魔力特性検査に用いるためのものだ。球体はマナクリスタルといい、本来魔鉱自体が保有している魔力を持っておらず、外部・環境魔力を吸収しやすく、また放出しやすい性質を持っている。

 そのため、人が触れると固有の色・形状・発光などが現れて、魔力特性を測ることができるのだ。


「神殿みたいだ。」

「ははは。よく言われます。さて、と。やっていただくことは簡単です。円の中に入ってマナクリスタルをお持ちください。その時に他の人たちは円の中には入らないようにお願いします。」

「分かりました。どっちが先にやる?」

「イリアちゃんからでいいよ。」


 メガネをかけた猫背の女性、冒険者ギルドに派遣されているという魔力特性鑑定士の資格を持つらしい。普段は他の研究をしているようだが、俺たちみたいに魔力特性検査を受ける際には呼び出される。

 前世の時は火と風属性の適性があったが、今回は光属性が現段階で分かっている。他にも属性の適性があると便利なのだけど。


「さぁ、どうぞ。」

「はい。」


 台座の上にあるマナクリスタルを手に取ると一瞬だけ何かを吸い取られる感覚があり、倦怠感が身を襲う。だけれど、次には安定したようでマナクリスタルの形状が変化していく。

 最初に現れた変化は発光であった。魔力の大きさに呼応するように黄色っぽい白色の光、続いてその外周を覆うように青色の光が溢れ出す。また、白と青の領域を繋ぐように水色の雪の結晶で橋が出来る。

 色の濃淡としては濃すぎず、淡すぎずと言ったところ。中庸と言っていいだろうか。


「はぅ、綺麗……」


 アリスちゃんは思わずという風に感嘆のため息を漏らす。それもそうだろう。天井、床、壁。部屋一帯を白と青のグラデーションで照らされており、まるで海の中にいるかのような光景なのだ。

 発光の変化が止まった頃には白の割合3割、青の割合2割、水色の割合2割、その他の無色などが二割の構成で止まった。発光量も目を瞑るほどではないが、少ないと言われるほどでもない。平均より少しばかり上くらいだろうか。


「うわっ……!!」


 次の変化は何度経験しても慣れるものではない。マナクリスタルが球体を崩して、ぐにゃりと変化していく。球体から出る針は球体の面を沿うように飛び出し、リング状に二つ弧を描く。針本体は凹凸なく平面で構成されており、針先だけが鋭く角が出ている。

 一方で球体は表面上を覆いつくすように凹凸が散りばめられており、岩のような質感が手を通して伝えてくる。ごつごつした感触の中に時折滑らかな球体の感触があり、感触としてもとても面白いものだった。

 そして、全体の二割程度に順転の渦が出来て、また二割に逆転の渦が出来ている。順転の渦はリングの平面が多く占められており、逆転の渦は全体的に分布しているだろうか。


「変化が終わりましたね。マナクリスタルは台座に置いてもらって結構です。」

「ありがとうございました。」

「どうですか?」


 マナクリスタルを台座に置くと、徐々に形が球体に戻る。色彩もすぐに元に戻って、変化が起こる前のマナクリスタルになってしまった。いつもながら、すぐに元に戻るのは便利であるけれど、不思議な光景だ。

 それよりも検査を受けた本人でなく、アリスちゃんが一番目を輝かせているのが面白い。この場で一番テンションが高いのではないだろうか。いつもは前髪に隠れたきらきらした目を職員に向けているのを見ると、可愛らしい。


「結果はですね。物理・魔法の両方をこなせるバランスタイプ。属性は光、氷、水の順に強く、無属性や火、風と言った要素も見えました。」

「わ~、イリアちゃんにぴったりだね。」

「また、攻撃、防御、回復、支援、妨害も出来るオールラウンダーでしょうか。その中でも特に防御、回復、支援に強いように見えました。」


 ははは。アリスちゃんが一番喜んでいる。本来なら俺が楽しみ所なんだけれど、前世で繰り返し見た分、アリスちゃんの反応が懐かしくて、ほっこりする。

 氷と水を使えるのは有難いことだな。基本的にバランスのいい属性と言われているから、オールラウンダーという特性と合致している。前世が攻撃に割り振っていた分、動き方に多少変化がありそうだな。


「ははは。ありがとうございました。次はアリスちゃんだね。」

「うん。楽しみ。スラちゃんをお願いね。」

「ああ。預かっておくよ。」




「……わっ!!」


 アリスちゃんがマナクリスタルの表面をつんつんと指で突いている。さっき危険がないことは分かったはずだけれど、不安なのかもしれない。

 でも、指で突くたびに魔力を吸われるから、持った方が倦怠感を受ける頻度が少なくなるんだよな。でも、面白いから見ておこう。


「……よしっ。」


 アリスちゃんがマナクリスタルを手に取ると俺と同じように変化が訪れる。まず全体を覆ったのは黒色の魔力。続いて、その合間合間から転々と黄色と赤色の光が漏れ出す。割合としては6:2:2といったところだろうか。

 天井を揺らす黒とその中で瞬く光はまるで夜空に浮かぶ星のようで、部屋全体を一瞬にして時間を超越したかのように錯覚させる。


「はう……」


 暗闇に質量が出現する。ただ辺りを揺らす黒だったものが、場所ごとで濃淡ができ、そして、筋状の流れが見えだす。それは流星群のようで、球体の表面に凹凸ができてきたことで起こった変化だ。

 ただ点の星ではなく、凹凸ができることで見上げた時のぼやけが完全に再現されていた。ふと球体を見ると全面が凹凸で覆われており、丸の面が見えない。また、平面もなく、ただただ凹凸が地続きになっている。

 そして、順転と逆転の渦が1割程度ずつ表面全体を覆っているのが分かる。密集性がない代わりに、幅が広く渦の数が少ないという感じだ。


「変化が終わりましたね。マナクリスタルは台座に置いてもらって結構です。」

「ありがとうございます!!」

「結果はですね。色の濃淡が濃い典型的な魔法タイプ。属性は闇、火、雷の順に強く見えました。他の属性は見られませんでした。」


 アリスちゃんは手の平を身体の前で合わせながら、きらきらとした目で職員さんを見ている。

 しかし、その可愛さからは想像できないが、完全に攻撃に特化しているという。見た目に反して恐ろしい、かもしれない。


「また、攻撃に割り振ったアタッカータイプ。その中でもダメージに貢献する純粋なアタッカーですね。支援と妨害も使えますが、攻撃方面には敵わないでしょう。」

「わ~、ありがとうございました。」

「よかったね。」


 よかったのだろうか。その内アリスちゃんから攻撃が飛んでくるかもしれないと考えると、身体が震えてくるのだけれど。ま、まぁ、敵対することもないから、そんな事起きやしないけれどね。

 ……経験値がっぽがっぽ計画は頓挫だな。あれ、結局自分にマナポーションを使って戦闘する方が効率がいいという本末転倒な事態になっているからね。


「よし、そろそろ宿屋探しに行こうか。」

「うん。」


 こうして魔力特性検査を終わらせた俺とアリスちゃんは宿屋を求めて、冒険者ギルドから退却したのだ。

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