021 決着
「ぐおおおおおおお!!」
くっ、身体が動かない!!スタン、か!?どうすれば。このままでは攻撃が避けることができない。
今にも突進して来ようと体制を整えてる。これを回避するためにはスタンが解けた後にすぐに行動しないとならない。くっそ、時間が経つのが遅い。先ほどまで時間よ経つな。と思っていたのに。
「っ……。」
「ぐるる。」
ここで仕留めるつもりか。熊公の身体に黒い魔力が纏われる。異様な迫力を身に纏った熊公は最初に見た時よりも大きく感じられ、赤く爛々と光る瞳と目が合うと、ぞくりと背筋が震える。
「ぐおおおおおおお!!」
「ぉ……“ガードスタンス”!!」
もうここまで近づかれてしまっては避けることは叶わない。なら、スタンが切れた瞬間を狙ってどうにか盾術でダメージを減らすしかない。
どんっと大木でもぶつかったのかというほどの衝撃が身体を襲う。その衝撃に身体が耐えられるはずはなく、そのまま後方に向かって弾き飛ばされて、木にぶつかりようやく身体が止まった。
木から葉が降り注いでくるが、それを振り払う気力もなく、その場にうずまる。早く立ち上がらなければならないのに、身体が重い。その身体を何とか立ち上がらせる。
「……かはっ!!」
だが、身体を持ち上げた瞬間に内臓を損傷しているのか、血反吐を地面に吐き捨てる。前世で経験しているとはいえ、身体がふらつく。まだ元気そうに荒い息を吐く熊公を見ると絶望的な状況であるのが分かる。
それでも、俺は諦めるわけにはいかない。この肉体では回復魔法を使うことができないが、痛みに耐えるのに魔法は必要ない。ただ負けない。その心が身体を持ち上げ続ける。
「ぐるる。」
「はぁ、はぁ。くそっ……。」
戦闘できる時間ももう少しだ。“英雄賛歌”が解けてしまば一層出来ることがなくなってしまう。故にここで決着をつけないといけない。
俺の体内に残っているMPもそう多くはないだろう。撃てるのはきっと一度きりだけ。その一撃にすべてのMPを注ぎ込み、そして絶対に熊公を打ち破る。
「“融合魔法”」
「ぐるっ!!」
「“旋風の大竜巻”、“爆炎球”。」
二つ以上の魔法を組み合わせる融合魔法。俺の手札の中で最高火力を叩きだせる魔法はこれだ。中級魔法までしか俺では融合できないけれど、今の状況ではそれでも十分だ。
MPももうない。でも、熊公のHPももうない。これさえ決まれば倒しきれる。
「ぐ、ぐおおおおおおお!!」
「けっ、遅ぇよ。“焦土旋風”」
「ぐ、ぐるおおおお!!」
熊公を包み込むように風は巻き上がり、その風に火が渦巻き始める。熊公を閉じ込めるように勢いが強くなり、熱風と共に生肉を焼くような匂いが辺りに漂う。
水分を含み焼けにくい樹木でさえも燃えて、一帯の体温を急速に上げていく。身体がぐらりと揺れる。確実にMP切れだ。これ以上の魔法行使は出来ない。身体がもとに戻り始め、地面に膝を付いてしまう。
「……ぐぉ、ぐぉ。」
「は、ぃっつ。まだ、生きているのか。」
視線が下がる身体に熊公の恨みの籠った瞳がぶつかる。身体の大半が焼けており、おそらく喉さえも焼けているのだろう。苦し気な唸り声をあげながらも、まだ戦意を失ってはいないようだ。
どす、どす。熊公が近づいてくる。ますます熊公から漂うオーラが強くなる。熊公が通った後にはすり足しているからか、一直線上に線が引かれている。
「く、っそ。」
「……ぐぉ。」
一歩、また一歩近づく。その一歩に合わせて俺も下がるが、どんどん熊公が近づいてくるのを止められはしない。じりじりと距離が近づいてくる。もうMPもない俺では何かをすることはできない。
……だが、ふと音が消えてる。熊公はその生命を尽きさせて、その場に崩れ落ちていたのだ。もう熊公が追ってくることはない。もう、これ以上の危機はない。
どっと疲れが押し寄せて、その場に力が抜けてしまう。へたりと身体を木にもたれかけさせて、虚ろな目で熊公の死骸を見る。
「は、はは。ざまぁ、みろ。俺の勝ちだ。」
暗くなる視線の先で誰か人が近づいてくるのが映る。それは何処か懐かしいような気がして、安心からか目を瞑り意識を手放してしまう。




