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33 その後

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「知らない天井……」


 白い天井を認識すると私は思わずつぶやいた。しかし、周りを囲うカーテンや独特の匂いからすぐにここが病院だと気がついた。

 起き上がろうと体に力を入れるもなかなか体は動かない。そこで懸命に視線を動かすと、枕元にボタンが掛けられていた。ゆっくりゆっくり腕に力を入れて腕をボタンへと動かしていく。

 布団から出た自分の腕はまるで枯れ木のようにやせ細っていてちょっと驚いたけどどうにかボタンを押すことができた。

 するとすぐに看護師さんがやってきてくれた。そこから、お医者の先生が来るといろんな機械が持ち込まれて様々な検査をされた。

 そして、検査が一通り終わってから少しすると、お母さんやお父さんが来て泣きながら抱きしめてくれた。


「私、眠っている間長い夢を見ていて、お兄ちゃんが『いつまで寝ているんだ』って呼び戻してくれたきがするの」


 私がお兄ちゃんの話題を出すと両親の表情がみるみる曇っていった。そして、重々しく口を開いた。


「落ち着いて聞いてね、お兄ちゃんは今、行方不明なの」


 諸劇的な事実を聞かされたが、私の心はあまり動かなかった。まるでそのことを事前に知っており、覚悟を決めていたかのように。


「お兄ちゃんを信じよう。お兄ちゃんならどんな事があってもやっていってるよ」


 私はそう言いながら両親を慰めた。ふと窓から外を見ると、一羽の小鳥がチチチチと手すりから飛び立っていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 トールティアが旅立ったあと、私たちは冒険者教会に戻り、これまでの活動の報告を行った。その際、フェンリルのことは事細かく報告したが、案の定協会長は頭を抱えていた。気の毒には思うが、そこから先は協会長の仕事なので口は出さない。出しても面倒事に巻き込まれるだけだ。

 ハァと大きく息をつく協会長をしり目に私たちは部屋を出て、そのまま酒場へ向かった。

 今までは依頼任務中ということで酒を避けていたが、その依頼も無事に終えたのでその打ち上げも兼ねての飲み会だ。


「今までお疲れ様。死を覚悟したことも何度もあったがこうしてみんなが無事に依頼を終えられた。それを祝してカンパイ!」

「カンパイ!」


 声をかけて手に持ったジョッキを掲げると、他のメンバーも各々飲み物を手にとって高らかに掲げた。緊張から解き放たれた楽しい時間が過ぎていく。


「おお、そういえばカラン、街に居たときはいつもトールとなにかしていたよな?」

「ええ、何でも口ずさむ歌を楽器で演奏して、それを音取りの魔道具に保存してほしかったようね。時間がないから音の保存は後回しにして譜面起し優先させていたけど、それももうすぐ終わるよ」


 カランがそう答えると、残っていたジョッキのエールをぐいっと飲み干した。


「なんでもその音楽に合わせて体を動かすんだそうで、テンポやリズムとか細かく指示されたわ。で、出来上がったのはツリル商会に渡す手はずになっているの」

「ああ、トールが毎朝踊っていたあれか。まぁ、引き受けたんなら最後も出やりなよ」

「わかってる」


 楽しい声が酒場に満ちる。この瞬間を味わうのが冒険者としての至福で、私が冒険者で有り続ける理由である。

 たっぷり英気を養って、また明日から冒険の日々をコイツラとこなしていこう。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ここはジルジュエル王国とマリンセシア協議国の国境検問所だ。入国・出国する人たちを適切な手続きをして通すことが主な仕事だが、街道の安全確保や不審者が居ないか見回りする仕事もあるためそれなりの武力も必要になる。その武力の主力となる駐在騎士団をまとめているのが私である。

 いつもどおり見回りの報告書や、上からの指示書、下からの要望書など書類に目を通す。たまにここからそう離れていない魔の森から知能の高い氷銀狼フェンリルが解き放たれたといったような要情報が流れてくるから、気を抜けない。


 コンコン


 書類仕事をしていると、扉がノックされて部下が入ってきた。その手には小脇に抱えられる程度の箱が乗っている。


「団長宛の荷物です」

「おお、そうか。とりあえず持ってきてくれ」

「はっ」


 部下が切れの良い返事を返してとそっと箱を持ってくる間に私は書類を整理して机に空きを作っる。

 箱の中身は録音の魔道具とこれまた魔道具と思われる木製の人形、そして手紙で、その手紙には『以前注文していただいた品ができあがりました』と書いてあった。


「ああ、彼からか」


 手紙に目を通した私は一人の旅人の顔が頭に浮かぶ。彼とはちょっと前にマリンセシアに入国する際にこの地で足止めを食っていた旅人で、彼は毎朝早朝に体操をしていた。


「団長、それは?」


 部下も気になったようできいてくる。


「ほら、私が毎回歌に合わせて体操しているだろ、その体操の歌のきちっとしたやつ版だ」

「ああ、あの変な動きの」

「はは、確かに動きに変なものが多いが、実によく考えられた動きで訓練前に体をほぐすのに丁度いいんだ」


 部下とそう話しながら録音の魔道具を再生させてみる。すると、いくつもの楽器で奏でられた体操の歌が流れ始める。複数の楽器で奏でられているため音楽としての重厚感が増しつつも、主となる旋律ははっきりと聞き取りやすくて体を動かすリズムが取りやすい。さらに一つ一つの体を動かした終わりには次がどのような動きなのかの説明も入っていた。


「それでこれは何でしょう」

「ふむ……」


 部下が人形を気にしているので再び手紙に視線を落とした。


「どうやら、小型のゴーレムのようだな。録音の魔道具とつなげて使用するようだ」


 届けられた箱の奥には線が入っており、人形・録音の魔道具のどちらにもそれを差し込む穴が設けられている。手紙のとおりに線を取り付けて再び体操の歌を再生させる。

 すると、歌が始まるとともに人形が立ち上がると、歌にあわせて体操を始めた。


「なるほど、手本人形か。少し小さくて遠くからでは見にくいが、ありがたいな。よし、機を見て騎士団の朝の鍛錬前の準備に取り入れよう」

「ええぇ」


 少し先の未来、トールの残した体操がホエールの街を中心にブームを巻き起こすのだが、それはまた別のお話で……

 拙い文でしたがここまで読んでくださりありがとうございます。

 ここでキリよく完結ということにはしましたが、未だにタイトル回収すらできていないのでいずれ再開したいと構成を練りながら目論んでいます。

 これからも片砂敬人をよろしくお願いいたします。

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