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1 転移した。

よくある異世界ファンタジー。

楽しんでいただけると幸いです。

少女は、独り、佇んでいた。


戦争により、周囲は完膚なきまでに破壊されていた。

かつて緑に囲まれ、人々は活気に溢れ、幸福に満ちていた世界は、今や瓦礫に囲まれ、人々は絶望に塗れ、悲鳴と呻きに満ちていた。


しかし彼女は、そんな光景は目に入らなかった。


無理もない。彼女の目の前には、頭の半分と左脚を失った、彼女の最愛の人が倒れているのだから。


少女は整った顔を絶望に歪め、独り、呟いた。


「何故、彼は死んだ?私が一体何をした?

私は何も悪くない。悪いのは……あいつらだ。

そうだ。殺そう。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。

頭を潰して、鼻から脳をくり抜いて、目玉を穿り出して、

駄馬の糞尿を舐めさせ、耳を削ぎ落とし、爪を剥いで、

指を一本ずつ切り落とそう。

脇腹の肉を削ぎ落として、生きたまま臓物を取り出して、手脚を逆向きに曲げて、腱を断ち切り、靭帯も断ち切り、

全身の骨を粉々にしてあげよう。

……全て、私が求めるままに。」


少女は、最後に死体を抱きしめて、動き出した。

その顔に、壊れた笑みを貼り付けて。


◆◇◆


「がぁ⁉︎はぁ、はぁ……何なんだ、今の夢……。

なんか、すっげー物騒なこと言って……って、時間‼︎ヤッベェ⁉︎」


俺は、ベッドから飛び起きた。時計は、朝の7時半を指している。高校にギリギリ間に合うか、と言ったところだ。

慌てて着ていたジャージを脱ぎ捨て、制服に袖を通し始める。朝から運動場10周は嫌だ。何で朝っぱらから3.5kmも走らされないといけないんだ。


「畜生、間に合えぇぇぇ‼︎‼︎」


俺は食パンを口に咥え、全力でチャリを漕ぎ始めた。


◇◇◇


「何だ、遅刻か?刀鵺。おせーぞ、コラ。」

「遅刻じゃ、ねぇよ、琥太郎……15秒、奴(始業チャイム)より、俺の方が早かった……」

「たった、15秒でしょ……。とーやは、いつまで経っても、学習しなさ過ぎ……。」

「うるせえよ、慧音……勝ちは、勝ちだ……。」


その後、美少女とぶつかったりする事も無く、俺は無事に学校に到着した。琥太郎と慧音が煩いが、奴らの言っている事に意味など無い。俺は間に合った。つまり俺の勝ちだ‼︎


キーンコーンカーンコーン


「おーい、席に着けー。ホームルームの時間だー。

あ、一原。お前、来るときに車とぶつかりかけたらしいじゃねえか。後で、職員室な。」


「 」


……こうして、俺の戦いは、終わりを告げたのだ……。

押し殺したような慧音の笑い声と、隠そうともしていない琥太郎の笑い声をバックに……。


◇◇◇


「くぅぅぅろっっっっしゃぁぁぁ‼︎‼︎飯じゃぁ‼︎」

「黙れ琥太郎。クッソうるせえ。」

昼休み。


「こたろーは、いつまで経っても、うるさ過ぎ……」

「お前が静か過ぎるんだよ‼︎‼︎飯だぜ⁉︎熱く行こうぜ⁉︎」

「やめろ、9月の屋上が更に暑くなるだろ。」

それは、高校生活における毎日の癒し。


普段どおり、俺たちは屋上に向かう。

屋上というのは、素晴らしい場所だ。

日当たり良好、周りには誰もいない、高所にある。

飯を食うのに、ここまで適した場所もないだろう。


無論、先公からのお話は済ませている。当然だ。

あいつらから呼び出されているなど、落ち着いて飯を食うのには全く不要な要素だ。


屋上の鍵は大分前にぶっ壊れて、鍵が無くても開く。

先程購買で買ってきたパン(今日発売の新作)を前に、胸の高鳴りを抑えられない。

「これが……恋?」

「なに言ってんだ戯け。」

琥太郎にスパコンされる。痛い。


「とーや、そのパン、美味しそう……。一口、ちょうだい……?」

「お前の一口は大きすぎる。却下。」

「なん、だ……と……⁉︎」

慧音の提案は却下する。こいつ、一口でパンの半分掠め取るからな。


「あぁ、美味い……。心が、満たされていく……。」

流石、売店の新作。絶品だぜ。

「……ずるい……。私にも、一口分けてくれれば良いのに……。」

誰がやるか。そもそもお前、一人でパン3つ買ってただろ。

「しっかしお前の、ホントに美味そうだな。俺もそっちにすれば良かった……」

「そうだよ……。とーや、美味しいものを見つける嗅覚は、異常に、鋭いんだから……」

そんな他愛のない会話の影に隠れて、


「後悔先に立たずって奴だ。あと、慧音はそれ以上食うとガチで太るぞ?」

「貴様、女子高生に、一番言ってはならない事を……!」

「ただの事実だろ……。」

『それ』は、不意に訪れた。


「刀鵺の言うとおりだ、慧音。太りたくないのなら少し食う量を減らせ。」

「何、バカな事、言って……⁉︎」

「「⁉︎」」

その瞬間。

突如、世界が、暗転した。

雲もなく晴れていた空が、闇に蝕まれ。

燦々と照っていた太陽は姿を消し。

建物が、ペンキで塗られたみたいに闇に沈む。


「嘘、でしょ、こんなの……」

「一体、何が……」


やがて俺たちの立っている場所も闇に沈み。

足の先から、蝕まれて。

琥太郎が。慧音が。消え、て……

(嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ‼︎死にたく無い!)

抗う間も無く、俺も呑まれた。


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