7 -魔を狩る剣-
《大戦》――そう呼ばれているのは今から百年と少し前に起こった、全世界を巻き込んだ戦争とそれに伴う混乱のこと。
世界の全てを巻き込んだ、というけれど実際戦場になったのはごく一部の地域だけだった。
当時新大陸として発見されたばかりの内海に浮かぶ島――今は|《獣島》(けもののしま)と呼ばれている島だけで、大陸には戦争による直接の被害はなかったんだって。
だけど新大陸|《獣島》(けもののしま)と《封印島》に住む二つの種族――|《獣人》(けもののひと)と|《七族》(セッテラッツァ)の存在は、大陸に住む人々にとっては衝撃的だった……と、聞いたことがある。
それがなんだったのか、今ならわかる。
大陸の人、ヒュームリアにはない力――生まれながらに魔力を持つ人たちに対する、憧れと恐れ、羨望と嫉妬と、恐怖。
だから《蛮族》や《魔族》なんて呼んで、敵対した? 人ではないとして、殺して、そして――
「アル姉たちルマソイドの血も、いっしょ。でも、《心臓石》の方がずっと運びやすいって、大陸にも近いしたくさんの人殺された……それで、島の人すごく怒って……それは、今も続いてる」
《魔石》の取引が禁じられている理由。表向きは強い魔力を持つ魔鉱石が個人の手に渡ることで無用な混乱を引き起こさないためってことになっているけれど――本当は、人を殺すことで手に入る石だから。
表向きの理由があるのは、《大戦》で自分達の国がなにを行っていたのか、万が一にも知られないための予防線で。
もしこのことが多くの人に知られるようになってしまえば、もし《魔石》の取引が行われるようになれば――|《獣人》(けもののひと)も|《七族》(セッテラッツァ)も、黙ってなんかいない。
だから大陸の国々は、《魔石》を取り扱う者を摘発し、厳しく処罰する。そうしなければその矛先が自分達に向いてしまうから。
そして榮がジークを狙った理由は――《魔石》を手に入れるためで。
自分が|《獣人》(けもののひと)だなんて知らないジークは、自分の中にそんなものがあるだなんて思ってもいない。だから無防備で警戒なんて全然していないジークを狙ったんだって、否応なしに理解させられた。
「――だったら、どうだって言うんだよ」
「そう、ね……今更よね。こんな事は」
せせら笑う榮の言葉に、アルフはついさっき見せた心の揺れを感じさせない、底冷えのする――でもまるで苦虫を噛み潰しているみたいな顔で続ける。
「あんたが何者であろうと、今更関係ない――何者だろうと、あんたがやったことは変わらない!」
「はんっ、仕事熱心なこって」
「誰かさんの、おかげでね――っ!」
言葉の応酬の間も、二人の動きはけして止まることはない。アルフが魔術によって生み出した氷の刃の数で押せば、榮はまるで全てが見えているみたいにそれらを避ける。偶に服や肌を掠めることはあるみたいだけれど、小さな切り傷はあっという間に治ってしまい、薄く滲んだ血だけがそこに傷があったことを教える。
反対に、榮が振るった拳を、蹴りを避ける時アルフは氷の刃や盾を間に挟んで、直接触れられないように立ち回っているみたいに見える。二人の体格差は明らかで、正面からの力比べになったら、線が細いアルフの不利はわたしにだって想像できる。
だから、アルフの動きはどちらかというと回避が優先になっているんだろう。
「ったく、しつこい女だな――お前はそれの相手でもしてな!」
「くっ!? まだ、隠して――何人、弄べばっ!」
だからそれが投げられた時、すぐに止めることが出来なかった。
気怠げに榮が投げつけたのは、握り拳大の石くれ。内側から沸き立つように淡い燐光を滲ませていたそれは、地面にぶつかると同時に爆発するみたいに燐光を撒き散らす。
拳大の石が、脈打つようにどくりとはねる。あっという間にその形を膨らませて、石は見ている前で異形の化け物へと姿を変えた。
赤黒い、まるで血のような色をした毛皮を纏った化け物――|《魔石獣》(ユウェルディール)は毒々しい牙を向き出しに、アルフを威嚇した。
その間に榮は、足止めのために生み出した|《魔石獣》(ユウェルディール)を振り返りもせずにジークへ向かって駆ける。
ジークもアルフと同じように足止めとして何体もの|《魔石獣》(ユウェルディール)に襲われていたけれど、そのほとんどがもうものを言わない肉塊となって転がっている。
榮の接近に気づいたジークが、威嚇するように唸り声を上げる。普通の人なら一睨みされただけで逃げ出してしまいたくなる藍色の眼光。だけど榮は気にも止めない。
まるでそよ風か何かのように素通りし、むしろその顔には獰猛な、心の底から愉しそうな笑みを浮かべていた。
「さあ――力比べといこうか!」
言葉と同時に、榮の体に変化が起こる。足や腕、体の至る所が内側から膨れあがり、着ていた衣服ははじけ飛ぶ。なにも纏っていない体を覆うのは目に突き刺さる鮮烈な赤――
目にするのは二度目になる、榮の|《変化》(へんげ)。ジークと同じか、それ以上大きな獣の姿。
その姿を見て、ようやく気づく――その身に纏う色が、|《魔石獣》(ユウェルディール)たちが纏う血のような赤色だっていうことに。
見た目からして歪な|《魔石獣》(ユウェルディール)とは違う、でも内にそれ以上の狂気を纏った巨狼。
新たに現れた赤い獣の姿を捕らえ、ジークの藍色の瞳が怒りに燃える。外連味もなにもない突進に、赤い獣はにやりと口の端を歪めたように見えた。
生暖かい、ねっとりとしたと息が肌を撫でる。この世に生み出されたばかりの|《魔石獣》(ユウェルディール)は、創主の命に忠実に、あるいは目の前にいる一見美味しそうな獲物を目にし、本能的な食欲が刺激されているようだ。酷く歪な口元から唾液を滴らせる様は、まるでなんの冗談だと言いたくなる。
ともあれ――生まれたばかりで随分空腹であるらしい|《魔石獣》(ユウェルディール)は、容易にこちらを見逃してくれはしないようで。
簡単には、いかないか。
忌々しさに、思わず舌打ちを一つ。
《魔石》を動力とした|《魔道具》(アーティファクト)の事を|《魔石兵器》(リトスポプリスマ)と呼ぶ。強大な魔力を秘めた《魔石》を力の源としているが故に、強力無比な破壊力を誇る戦略兵器。――《大戦》の時代に戦力的・精神的にアニマロイドとルマソイドを苦しめたかの兵器は、その強力さ故に様々な対抗策が生み出された。
そのセオリーのいくつかは、あたしにも出来る事であり|《魔石兵器》(リトスポプリスマ)破壊をするあたしには馴れていることだ。
だけど――これは違う。
目の前に立ち塞がる|《魔石獣》(ユウェルディール)に、背中の剣は何の反応も示さない。ただの|《魔石兵器》(リトスポプリスマ)なら、この剣――《大戦》の時代に生きた希代の魔創師(|《魔道具》(アーティファクト)など、魔力の籠もった品を生み出す職人達の総称)が作り出した対|《魔石兵器》(リトスポプリスマ)用兵器が反応し、無力化することはそこまで難しくはない。
だけど|《魔石獣》(ユウェルディール)に対し、いつも|《魔石兵器》(リトスポプリスマ)を相手にした時に感じる反応はない。
同じように《魔石》を核としていながら、なんという理不尽。なんという不条理。
悪態は心の中でついただけだったはずなのに、聞こえたのかそれとも別の理由か、|《魔石獣》(ユウェルディール)は涎を撒き散らしながら突進してくる。
【身体強化】をかけていない状況なら、避けることも一苦労だろうという速度の突撃。けれど身体能力を底上げしている現状、避けるのはさほど難し事じゃない。
むしろ速度任せのなんの捻りもない闇雲な突撃をひょいとかわし、がら空きの腹部にお返しのカウンターを入れるけれど……硬い毛皮を前に、当たり前のように弾かれてしまう。
本当に、厄介。
悪態をさらに一つ追加しつつ、視線の端でちらりと京子とリュートの様子を確かめる。ちゃんと指示したとおり簡易とはいえ結界の中に身を隠していることを確認し、あたしは手にしていた氷の剣を|《魔石獣》(ユウェルディール)に向けて投げつける。その際、構成している術式を弄ってそれ自体を投擲に適した武器へと変える事は忘れない。
渾身の力を込めて投げた杖剣、もとい氷刃の槍は丁度方向転換して再度突進を始めた|《魔石獣》(ユウェルディール)の肩にぶち当たる。毛皮を切り裂き先端が僅かに食い込んだようで、思わぬ衝撃に驚く|《魔石獣》(ユウェルディール)は濁った瞳に怒りを燃やす。
怒り任せに突撃してくる|《魔石獣》(ユウェルディール)を阻むよう、爆音。刺さったままの槍に――正確には槍の刃を形成している氷に向け、火属性の魔力を送り込むことで崩壊。所謂熱膨張を利用した魔術は、盗賊たちにも散々浴びせてやったのと同じ【一握りの氷瀑】。
氷と炎、相反する二つの属性を操れることが前提条件とやや習得条件が厳しくあるけれど、消費魔力の割に使い勝手が良いこの魔術を、あたしは何かとよく利用している。
至近距離での爆発だ、人であればただでは済まない。だけど|《魔石獣》(ユウェルディール)がこの程度の術でどうにか出来るなんて、そんなことは思っていない。言わばこれは牽制。
肩口で起こった爆発に怯んでいるであろう間に、投げつけた氷の剣の替わりに背中の剣を抜き放つ。魔術で作った即席の剣とは違う、ずしりと腕にかかる重さ。《魔力剣》特有の持ち主の意識と一体化するよう、肌に馴染むような感覚が掌から伝わる。
その感覚に逆らわず、むしろ剣から伝わる意識に従うよう、己の魔力を流し込む――
「――“《大戦》の時代を生きた創師が創りし剣よ。我が魔力を糧に、その姿を変えよ。我が前に立ちはだかるものを……眠りへ導く力となれ”」
自然と唇が紡ぎ出すのは、詠唱ではなく切なる祈り。その願いを酌んだように、対《魔石兵器》用《魔力剣》(リカオン)は受け取った魔力を元に秘めたる力を解放する。
どろりと、まるでまるで水のように溶け、形を変えるリカオン。溶け出した金属はまるで自ら意志を持つかのように形を変え、やがてそれは一本の細い棒へと変じ動きを止めた。
あたしの背を優に超える、細い棒。普段あたしがもっている杖よりも細く、表面に浮き出た凹凸が繊細な紋様を描くそれは、武器と呼ぶよりも美術品か、まるで神事に用いる神具とでも呼んだ方がしっくり来る――そんな神々しさすらあって。
けれどあたしは知っている。これが見た目通りの|美術品(観賞用)ではないと言う事を。むしろあたしが持つ武器の中で、最も高い能力を持つと言う事を。
爆風で舞い上がった土煙の中から、|《魔石獣》(ユウェルディール)がぬぅっと姿を現す。少々痛めつけられてはいるものの、まだまだ俄然余裕のある|《魔石獣》(ユウェルディール)は、あたしの姿を見つけると小賢しい真似をしてくれたとばかりに忌々しげな唸り声を上げ、痛みの代償を求めるように地面を蹴った。
「なに、あれ……」
訳もなく、体が震える。
ジークと榮がお互いに牙をむき出しにしてもみ合う中、何か嫌な気配を感じてそちらを振り返った――振り返ってしまった。
そこにいたのは|《魔石獣》(ユウェルディール)と戦うアルフ。|《魔石獣》(ユウェルディール)の歪んだ姿が見えないのは、舞い上がった土煙に隠れているからだろうか? きらきらと舞う淡い光の粒が混じった光景は、盗賊たちをあしらうためにアルフが魔術を使った時に何度も目にした光景だった。
嫌な気配は、それじゃない。|《魔石獣》(ユウェルディール)からでもない。
アルフが手にしている剣が――ううん、これはアルフ自身? とにかく土煙の場所以外にも燐光が舞っている。
今まで何度か目にした燐光は、赤かったり青みがかったりしていた。けれど、今見えているのは違う―― 一見色の薄い燐光いたいに見えるけれど、違う。
目を懲らしてよく見てみるとそれは灰色というよりは鉛色で、まるで重く垂れ込めた冬の空のような――それよりももっともっと不吉な、見てはならないもののような悪寒が消えない。
本能的なナニカが訴える。剣の中に吸い込まれていく鉛色の燐光が、恐い危険だと、関わっちゃいけないと訴える。
訳もなく震えだしそうになる体。縋るものを求めて手を伸ばせば触れるのは京子の服の端で、反射的にぎゅっと握った。
「りゅー? ……顔色わるい、どした?」
大きな瞳が心配そうにわたしを写す。京子には、あれが見えていないんだろうか? なにも感じないんだろうか? ――あんなに異常なのに。
危険を訴える思考が疑問を浮かべる。
「あれは……なに?」
「な? アル姉の剣はリカオンだから、カタチかえる、おかしないよ」
見たくない、見てはいけないと頭ではわかっているのにまるで吸い寄せられるみたいに目が離せないわたしの前で、鉛色の燐光を吸い込んでいた剣はまるで生きているみたいに蠢いて、見る見る形を変えていく。
そんなわたしをみて、京子はそのことを不思議がっているんだと勘違いしたみたいだ。
「そうじゃなくて、あれ……見えない……の?」
「??」
きょとんと首を傾げる。やっぱり、なにかがおかしい。致命的な部分が食い違っている――そう確信したのとほとんど同じに、アルフが動く。
剣から長い杖へと形を変えた武器を、土煙の中から姿を現した|《魔石獣》(ユウェルディール)に叩きつけるわけでもなく、なにもない空間を裂くように振り払う。
大振りしたそれは飛び込んできていたとはいえ|《魔石獣》(ユウェルディール)に届かなくて、むしろ大振りな武器に引きずられるみたいにアルフの体勢が崩れる。
迫ってくる|《魔石獣》(ユウェルディール)に対して構え直すには間に合わない、明らかなミス。がら空きの体勢を見逃してくれるはずもなくて、|《魔石獣》(ユウェルディール)が嘲笑うような笑みを浮かべたまま、嬉々として襲いかかる。
はず――だった。
だけど、そんな未来は訪れなかった。
血を流したのは|《魔石獣》(ユウェルディール)の方。地面を蹴る前脚の付け根から、なんの前触れもなく血を吹き出し遅れて痛みに驚く唸り声が響く。血飛沫と一緒に舞い上がるのは、何度も目にした燐光とよく似た、けれどそれらとは絶対に違うなにかをもつ煌めき。
呆然と見つめるわたしと、驚くことなく見守る京子。正反対の視線に答えることはなく、アルフは恐れるように身を引いた|《魔石獣》(ユウェルディール)に向けてさらに一回、二回と杖を振りまわす。
勿論それも|《魔石獣》(ユウェルディール)には当たっていない。でもまるで舞を舞うかのように鮮やかな弧をかくその体裁きはまるで演舞かなにかを踊っているようでつい、見とれてしまう。それにアルフの杖が踊る度に、|《魔石獣》(ユウェルディール)の体から血が噴き出し、あるいは何かに食いちぎられたみたいにごっそりと削られる。
その度に、血と一緒にあの煌めきがあふれ出して空気に混じる。
飛び散った血が杖の動きに合わせるように弧を描く。それはまるで死に神の持つという鎌みたいに見えて――ううん、違う。
みたい、じゃない。あれはそれそのものだ。死に神の鎌だと直感する。触れることの許されない、人が触れてはならないもの。
獲物の命を無慈悲に刈り取る、死に神の武器。
見えないけれど、あの血に沿うように刃があるのだと、なぜだか確信できた。
死に神の鎌はそのまま勢いを止めることなく|《魔石獣》(ユウェルディール)に襲いかかり、あっという間に体を削る。前足の二つと右の後ろ足、それから胴体の三分の一くらいが消滅した時、不意に|《魔石獣》(ユウェルディール)の動きが止まる。
ぶるり、と一際大きく震えたかと思うと、煌めきを撒き散らしながら崩れていく。まるで砂で出来たお城が波にさらわれてなくなってしまうみたいに呆気なくて、初めからそんなもの、そこには存在していなかったと言われても信じてしまうだろう。
|《魔石獣》(ユウェルディール)の恐ろしい姿からは、とてもではないけれど考えられない程呆気ない最後。
何も言うことの出来ないわたしの前に、硬い音と共に何かが転がってくる。血に濡れた石は松明の生み出す頼りない光を反射して微かに煌めいている。まとわりつくようにしてあった燐光は、いつの間にか淡い輝きに色を変えていた。
まるでありがとうと言っているみたいに、まるでさよならを言うみたいな煌めきが石から伝わってくる。それが《魔石》――《心臓石》と呼ばれる石だということに、京子が大切そうに拾い上げてようやく気が付いた。
ついさっきまで|《魔石獣》(ユウェルディール)だったもの、危なくないんだろうかという疑問は、京子がなにか石に語りかける姿を見てなくなった。大陸の言葉じゃなかったから何て言っているのかわからなかったけれど、大切そうに石を抱きしめる姿は、まるでお帰りなさいと言っているみたいに見えたからだ。
ほっとしていた時間は長く続かなかった。地獄の底から響いて来るみたいな唸り声で現実に引き戻される。
唸り声の主は二頭の獣――人の姿を捨てて、お互い獣の姿になったジークと榮。二頭の獣はあれから変わらず牙を向き出しに互いを殺そうとしていたみたいで、少し目を離していた間に体のあちこちに傷を増やしていた。
どっちが優勢かなんてわかるほど、わたしは戦いのことに詳しくなんかない。だけど見ている目の前でもつれ合っていた二つの影の内の一つが、もう一つを吹き飛ばし遠吠えをあげた。
まるで勝ち鬨の声みたいだ、そんな場違いなことを感じながら目を懲らす。嫌な予感が、最悪の展開が浮かんで胸を締め付ける。
だけどわたしの不安に反して、遠吠えをあげていたのは黒い獣――ジークの方。洞窟の壁に突き当たりぐったりと倒れ伏しているのは赤い獣で、榮だ。元々から紅かった毛並みが、さらに赤くなったように見えているのは、きっと気のせいじゃないと思う。
「……なん、で?」
口からこぼれたのは、喜ぶでもなく安堵するでもなくそんな疑問。
だって、榮はジークを殺そうって、初めからそう考えていて――あれだけ用意周到な人が、勝算もない相手に挑むなんて考えられなくて。こんなことに持ち込んだ以上勝てるって考えていたからだと思っていた。
でも蓋を開けてみれば結果は真逆で――喜びよりも、戸惑いのほうが勝ってしまった。
「……|《人喰らい》(マン・イーター)、たくさん《心臓石》食べた。でも、それあくまでも借り物の力。……自分の力、違う」
わたしの疑問に答えるように、たどたどしい大陸語で説明する京子。
「《魔石使い》の力ある人、自分いがいの力、引き出すことできる。《心臓石》の力も、普通の人よりいっぱい引き出して、操ることできる。でも、それその人の力違う。借り物の、力。どんなにいっぱい集めても、どんなにいっぱい人を食べても、ホントの意味で自分のもの、ならない。
はんたいにじーくは自分の力、使ってる。|《獣人》(みやたち)の|《変化》(へんげ)、感情でする。なれないと怒ったり悲しかったり、嬉しかったりした時に体、勝手に|《変化》(へんげ)しちゃう。……じーくは今、すっごく怒ってる、泣いてる。だから|《変化》(へんげ)とおりこして《獣化》までしちゃって……《心臓石》の力、暴走させちゃってる。
《心臓石》は|《獣人》(けもののひと)の魂、そのもの。沢山あっても、みんながみんな同じ方向、むけない同じ。生きてる人といっしょ。全部の力引き出すの、《魔石使い》でも難しい。たくさんあると、よけいに。
だから全部の力引き出したじーくと戦ったら、……こうなるのはとうぜん」
たどたどしい言葉は目の前の光景を肯定していた。ジークはそのまま榮にとどめをさそうと、動けない榮に向け飛び掛かった。




