94 クローディアがぶっちゃけた!
誤字報告いつもありがとうございます。
「召喚する事ができるって事は、送還する事も出来るんだよね?」
「…………………」
おや? 黙ってしまったよ。
まぁ分かってはいたんだ、あんな傲慢な理由だけで異世界から召喚しようとする王が、帰り道の心配なんかする訳無いんじゃないかってね。そもそもそんな方法があるのなら、最初にやっているはずだとね。
でもそんな事をやらずに追放を宣言したのはあの王だ、最初から人としてではなくスキルを使うだけの道具としてしか見ていなかったという事は明白だった。
「すまないが、呼び出す事はできても戻す事は誰も考えていなかったのは事実だ。召喚陣も大昔に使われていたというだけで、詳細までは分かっていないものだったのだ。だからこちらとしても分の悪い賭けに出たようなものだったのだ」
「分の悪い賭けねぇ… よくそんな割に合わない事をって思うけど、あの王なら自分の身に問題が無ければ何でもやりそうだったもんね」
「ヒビキ殿の言う通りだ、返す言葉もない」
「まぁどうやって違う世界から召喚しているのか、その理屈が解らないんじゃ手の打ちようもないか。じゃあ特に俺から言う事はもう無いかな、今のところだけど」
「今のところ?」
「そう。生憎と俺の仲間には人間種というのはいないんでね、この世界の中でも人間種特有の決め事とかがあっても知りようが無くてね。まぁ今のところ困ったことは起こっていないけど、何かあれば聞きたい事ができるかもって事」
「なるほど… そういった理由であれば、我々は支援を惜しまないだろう。何でも言ってくれて構わない」
まぁこんなところかな? 特に緊急で知らなくてはいけない事もなかったと思うし、後は思いついた時に確認する方が良いだろう。
「クローディアは何かあるか?」
「物を申しても良いのか?」
「ああ、気になる事があるなら言ってくれ」
「そうじゃの… 其方ら魔術師団、主の支配下に入らんかの?」
「なんですと? それは一体どういう意味で?」
うぉぉ。クローディア、突然特大の爆弾を放り投げたな! 俺もびっくりだけど相手が一番驚いているよ。だけど俺の支配下に入れようなんてどんな理由があるんだ?
「その理由としてまず一つ。其方らは亡命して家族もろとも来ておるのじゃろ? その家族を養うためにダンジョンにアタックすると」
「そうだな、さすがに亡命したからといっても他国でいきなり職に就けるとは思えない。まぁこれまでの歴史上ゴーマンレッド王国が振舞ってきた行為のせいで信用はされないだろう」
「主は一流の支援職でな、主の配下に加わればすぐさまレベルは上がり、安全に狩りを行えるようになるじゃろう。自慢じゃが私はすでにレベル90に達しておるぞ」
「レベル90…? 英雄譚にある勇者よりもレベルが上だと?」
「もちろん其方は主が召喚された時にステータスは見ておるのじゃろ?」
「ああ」
「その主が今は…」
「レベル86だな。80階層に籠った時にまた上がってたから」
「なんと! レベル86!」
ふっふっふ。どうやら俺達のレベルは想定していた通りかなり高いという事だな。まぁこの辺はグレイやクローディアにも聞いていたから間違っていないと思っていたけど、あまりにも簡単に上がっていくものだからこれが普通なんじゃないかと疑い出していたところだ。
「主の支援を受ければ容易くレベルが上がり、より安全に稼ぐ事も出来るようになるじゃろう。もちろん今すぐに返事をせよとは言わぬ、師団長とはいえ多くの部下の命運がかかっているともなれば、即答はできぬものじゃからな」
「仮にそれを受けるとすると、そちら側にはどんなメリットがあるんだ?」
まぁ気になるよね、俺も気になるもん。
今の話を聞いただけだと、元魔術師団だけが良い思いをするかのように聞こえるしな。
「主は今、その才能故にナイトグリーン王国の勇者に目をつけられておるのじゃ。実際勇者の手の者がすでにこのリャンシャンに入り込んでいるという事じゃ。それに対抗するために頭数を揃えたい… というのが私の考えじゃの。
もちろん家族のある者を強制的に… とは言うつもりはない、主がそもそも嫌がりそうじゃからな。じゃから独身であり、向上心があって主のスキルの秘密を守れる者が欲しいと思っておるのじゃ」
「なるほど…」
いやいや! まさかクローディアがそんな事を考えていたなんて… しかも勇者に対する対応方法として。いやでも…
「でもクローディア、それがどうして勇者に対抗する手段になり得るんだ?」
「もちろんすんなり引き下がれば言う事は無いのじゃが、ギルマスから聞かされる勇者像じゃとどうにも諦めが悪そうな奴に思えての… まぁ最悪の手段として主の率いる軍団で魔王を倒せるよう、こちらもある程度の人数を鍛え上げておけば良いじゃろうなと思ったのじゃ」
「俺が魔王を?」
「もちろんアレじゃ! 主の平穏な暮らしが破られるようなことがあれば… の話じゃ。主が勇者の配下となり、そこで魔王を倒してしまえば勇者にその功を奪われ、いいようにされてしまうじゃろう。主の力は主だけのものであり、私を含む主につく者の力も主のものじゃ。それを第三者に良いようにされてしまうのは面白くないもんでな」
「まぁ言いたい事は何となくわかるけど…」
まぁね、もしも俺達が勇者の元に行って魔王討伐なんてしようものなら、その功績は間違いなく勇者のものになってしまうんだろう。それによって何かしらの権力や、王侯貴族に対する力をつけさせるとなれば… 普通に暮らしたい俺にとっては脅威になるかもしれないね。まぁ都合よく使える戦力として利用される落ちしか見えないかも…
「その件については持ち帰ってみなと相談してから決めたい。それでよろしいか?」
おっと、ガラハド氏の事を忘れてたぜ。
「もちろんじゃ。これを即答するようであれば、上司としての行動としてどうかと言わざるを得んからの。まぁレベルアップについては主について行き、80階層で1日狩れば結構なレベルになるじゃろう」
「80階層… そんな深層に行って危険はないのか? 我らはせいぜいレベル20前後の者しかいないのだが」
「それは問題無い。すでに私達で安全な方法を確立しておるからの、ただついてきて見てるだけでレベルアップじゃ! もちろんその力を使いこなせるかはその後の修練次第じゃがの」




