95 新たな方向性
誤字報告いつもありがとうございます。
悩んだ顔を見せつつも、どうやら気を取り直したみたいでガラハド氏は帰っていった。
しかし何というか… 随分と壮大な話になってないかい? まぁ味方が多い分にはメリットが多いのは分かる、特に俺のスキル… 最近めっきりレベルが上がらなくなってきてるからね。人数を増やして大量消費させるという点では、俺の心に対して多大なメリットと言えよう。
だって食べ物をさ、食べないのに大量に作るとか俺には出来ないんだよ! 貧乏性なのはわかるけどね!
「それにしてもクローディア、いつからそんな事を考えてたんだ?」
「先日ギルドで話をした時からじゃの。私達3人でも正面衝突であれば対処は容易じゃが、人数を活かして撹乱してこられると面倒じゃと思ったのじゃ」
「確かにねぇ… そもそもグレイもクローディアも、最初から勇者の使いに対してやる気だったしな」
「まぁそれは勘じゃな。聞くところによると当代の勇者は王位継承権を持つ王子じゃというらしいからの、己の王位を完璧にするためには魔王討伐なんかは非常に目立つじゃろうと思っての」
「ふむふむ。つまり勇者は自分の家のお家騒動に対し、俺を使って利を得ようとしているっていうのがクローディアの推察って事だな?」
「うむ。まぁ何というかじゃな… 主には天寿を全うしてほしいと思っておるだけじゃ、それの邪魔をしそうな事柄に対処するのは主に仕えるものとして当然のことじゃな」
「天寿って… 随分と先の長い話だなぁ」
「そうでもないのじゃ。エルフにとっての人間種の寿命などあっという間じゃ。私を救ってくれた主には長生きしてもらい、ハンバーガーを食べ続けるのじゃ」
何やらそっぽを向いてそんな事を言ってくる… ちょっと臭い事を言ったから照れてるのか? まったくもう!
「まぁアレだ、とりあえず今日は詳しい話を聞かせてくれ。魔術師団を引き入れてからどうするのか… とかね」
「うむ、任せるがよい」
グレイは何でも力で解決しようとしてくれてるが、クローディアは頭を使って俺の事を気配ってくれてるんだな… アイシャはうちのマスコットだし、そこにいるだけで癒されるし何度も助けてもらっているんだよな。
とにかく俺も頑張って長生きしないとな! まだ先は長い気がするけどね!
そんな訳で部屋に戻ってきたわけだ。アイシャは相変わらずケルベロスの敷物の上に転がり、更にオルトロスの毛布にくるまったまま… グレイは鋭い目つきで何があったのかを知りたそうな顔をしている。
「つまりじゃ、リャンシャンダンジョンを攻略してしまった以上次を考えるべきなのじゃ。他の地に行き、違うダンジョンに入るもよし。魔境に行ってまだ見ぬ未知の魔物と戦うもよし。
そう考えるとどうじゃ? 私達で勇者に先んじて魔王を倒してしまってはどうかと思ったわけじゃ。幸い私達には屈強な前衛のグレイがおるし、遊撃できるアイシャもおる。主からステッキを預かる私だって相当な戦力になると思っておる。じゃが問題なのは人数なのじゃ!
ダンジョンと違い魔物の素材はドロップではなく剥ぎ取らねばいかん。4人の中で誰がそれをやるのか? 誰かが剥ぎ取りに手を割かれては防衛はどうするのか? 主の収納とてどれほど入るのかをまだ把握はできておらんのじゃろ? そうなるとパンパンになってしまう前にどこぞに持ち込む必要があるのじゃ」
「ふむふむ、つまりその辺の事を魔術師団にやらせようって魂胆なのか?」
「その通りじゃ。もちろん魔境に行ける程鍛えてやらねばいけんからのぅ… 少なくともレベル60以上にはしておかんと危険じゃろうし」
はぁなるほど… つまりさっさと世界的危機を解決して、俺の存在価値というか必要性を下げてしまおうって事なんだな。魔王がいなくなってしまえば勇者も必要無いし、力がある者は今まで通り魔物の討伐を冒険者ギルド経由でやればいいんだし。もちろんダンジョン攻略も有りだよな。でも…
「問題は魔術師団がこの案に乗るかどうかだな」
「うむ。なんだかんだと人数は揃っておるからのぅ、しかも宮廷魔術師団に所属できるほどの者じゃから鍛えれば使えるようになると思うのじゃ」
「でもそれだと近接職が足りなすぎないか?」
「レベル60を越えるようであれば大丈夫じゃ。数も十分に暴力なのじゃからな」
うーん、まぁ数の暴力は分かるよ? 日本にいた頃は動画サイトで軍隊アリとか見たことあるからね。あれほどの数の暴力は他では見られないレベルだから、非常に印象に残っている。俺が好き好んでやっていたRPGにも『\アリだー!!/』ってくらいその怖さをアピールしてたからね。
っと、これは特に関係ないか。
「しかもじゃ、奴らは国を捨ててきておるわけじゃろ? ゴーマンレッド王国が奴らの存在を知ればどういう行動に出るか、容易に想像がつくじゃろう。じゃから世界的に通用する名声を持たせてやる事を条件にすれば、案外簡単に乗ってくると思うのじゃ」
「なるほどねぇ。亡命中の元宮廷魔術師団の身の安全を報酬にしようって事か。まぁレベル60とかになれば、普通に自分達で防衛できそうなんだけどな」
「そこじゃよ、主の力が無ければ簡単にレベルアップなんかできんのじゃ。主の齎すバフの効果はそれほどのものじゃからな、詳しい話し合いの場が出来ればその辺をアピールしておきたいのぅ。そうすれば向上心のある者であれば食いついてくると思うておる」
まぁゴーマンレッド王国の王については自業自得としか言いようがない。だけどあの王に叛意を示した魔術師団は、ある意味真っ当な思考ができていると見て良いのかもしれないな。それに俺のハンバーガーが救いになるっていうのであれば… もしかして良い事かも?
「主は魔境や魔王などには興味が無いと言っておったが、憂いを残しておく方が問題ありと進言するのじゃ」
「それは良いな! 俺は戦う事しか出来ん、そしてそれでご主人の役に立てるというのであれば魔王だろうが何だろうが粉砕してみせるぞ!」
「勇者も魔王もご主人様との生活を邪魔するんなら、ボクもやっつけるよ!」
「うーん… でも危険なところなんだろう? 魔境は」
「いや、案外そうでもないじゃろう。何といっても私達はすでに前人未到のCランクダンジョンを踏破しているのじゃからな!」
「そうだぞご主人。クローディアの狙い通りに動くなら、あの魔術師共は引き入れて鍛えてやるのが近道だと思うぞ」
「よし、まぁ向こうもまだ返事はできそうにないだろうし、俺達も明日からまたダンジョンだし… 次に戻ってくるまで考えておくか」




