71 そしてまた潜ります
誤字報告いつもありがとうございます。
夜が明け、今日もこれからダンジョンへと突入する。転移陣で行けるのは80階層までだから、またしても10日前後かけて90階層へと移動しなければいけない。そして道中ダンジョン内でグレイが槍投げの練習し、クローディアが投げた槍に雷撃を当てる練習をしなければいけない… 練習で槍が壊れなければいいんだけどね。
理想としてはグレイが投擲をして、インパクトの瞬間に雷撃が当たるようになればいいなと思っている。相手がスライムだから、グレイが本気で投げたらあっさりと貫通しそうだしね… でも貫通するのならば、雷撃を纏ってダメージを与えながら突き抜けてもらいたいんだ。まぁうまい具合に核の付近に留めて置けるんならそれが一番なんだけど、それの練習をするには実際にスライムを相手にしないとデータというか、どの程度の力で投げれば良いかなんて分からないだろう。まぁ超大型のスライムだし、貫通しないよう手加減したとしても回避するとは思えないからやっても良いとは思うんだけどそこは現地で考えよう。
「よし、じゃあ攻略を開始するかね」
「うむ。じゃがグレイよ、今回は急ぐからモンスターハウスでの戦闘は無しじゃぞ」
「仕方ないな… 確かにまともに戦えば時間がかかるし納得しよう」
うんうん、やっぱりアレだけの数の魔物を目にするとテンションが上がってしまうんだよねグレイは… 前回の帰り道でも暴れまわっていたし。
しかし今回は速度を重視するという事で、放水+雷撃のコンボでサクッと終わらせるつもりだ。クローディア1人に働かせすぎかと思ったが、本人はそんな事ちっとも思っていないのが救いだ。
今回は2度目という事もあり、アイシャに先行させないで普通に歩いて進んでいく。先頭はグレイでその脇にアイシャ、次に俺が続いて最後尾にクローディアという隊列だ。まぁいつものパターンだね! グレイの横で聞き耳を立てながら進み、何者かの気配があれば対処するという作戦だ。進行の邪魔にならない魔物はスルーだね。
ルートは分かっているのでサクサクと進んでいく、出る魔物もこの辺はコカトリスのみなので特に問題もない。問題があるとすればモンスターハウス以降だね… なんせコカトリスの他に空を飛ぶ魔物がいるから、それらの対処はクローディア1人がする事になる。まぁマジカルビームで一撃なんだけど、魔力的な負担が気になるところだ。
そして83階層に到着、モンスターハウスのある階層だ。速攻で片を付けるべく作戦を練る。
「そうじゃの… 主に放水を任せて私は雷撃とマジカルビームに集中しようかの」
「じゃあそれで行くか。中に入ったら放水で魔物を濡らしつつ水圧で追いやるから、クローディアは空中にいるやつを先に頼む」
「良いじゃろ。上が片付く頃には地上にいるコカトリスも大方濡れておるじゃろ、雷撃でイチコロじゃな」
「グレイとアイシャは… 万が一接近してくる奴がいたら対処してもらうって事でいいか?」
「うむ、承知したぞ」
「分かったー!」
よし! なんというか超大雑把だけど作戦はこれでいいな、うん。
「よし、じゃあ突撃!」
俺の合図とともにモンスターハウスへと侵入し、クローディアが天井付近にいる魔物を撃ち落としにかかる。俺もせっかくの出番だから頑張らないとな!
いつものように消防士をイメージし、直径10センチ程の水流を高圧で放水開始。俺に気づいたコカトリスがドスドスと足音を立てながら迫ってくるのでそれらを押し返す。
「ご主人、左から来てるぞ!」
「あいよ!」
グレイが戦況を見ながら俺に指示を出してくる、今の俺には全体を見通せるほど余裕は無いからありがたいね。
ジャバジャバと床の上が水に覆われ始め、魔物達のいるところの大半は濡れたんじゃなかろうか。そろそろクローディアに雷撃を撃ってもらわないと水がこっちにまでやってきちゃうぞ…
「うむ、上は完了じゃ。雷撃を撃つので放水を止めるのじゃ!」
「おう! 後は任した!」
さすがのタイミングでクローディアが上を片付け、イエローサンダーステッキをコカトリスの集団に向ける。それを見てから放水を止め、一歩下がって待機する。
「雷撃じゃ!」
雷鳴のような音が複数回響き渡り、地面に出来上がっていた水たまりの上にコカトリス達が倒れていく… うーん、それほど攻撃力はなかったはずだけど、やはり濡らしてからの雷撃は何かしらの相乗効果でもついているのかもしれないね。
「うむ、一掃じゃ!」
大満足な顔のクローディア、そして悔しそうに見ているグレイ… まぁグレイの出番はちゃんとあるからそこは堪えような。
ったく、広範囲に攻撃できる魔法に対してはすぐ対抗心を燃やすんだから…
「よーし、今日はここまでにしようか。そろそろ夕食の時間だろ?」
「うん! お腹がすいてきたよ!」
「じゃあいつものように階段の近くで休もうか」
今日は3階層進めたので本日の営業は終了だ。焦っても仕方がないし俺達には安全地帯が作れるからね、しっかりと休んで明日の探索も万全の体調で… だな。
そしていつものようにしっかりと全種類のハンバーガーを食べたのに、さらに自分でコカトリスの肉を焼いて食べるグレイ… まさか今まで足りてなかったって事なのか!? 恐るべしオーガの胃袋!
「ん? よく言うだろう、別腹だと」
「別腹なの? 俺が良く聞くのは甘いものに限定されてたはずなんだが?」
「ご主人のハンバーガーは確かに旨い。しかしコカトリスの肉もシンプルな味付けだがなんというか… まさに肉を食っているという気になるのだ」
「あーなるほどね。確かにハンバーガーの肉はミンチにしてから調理されてるから歯ごたえは確かに無いかもな」
「そうそれだ! 歯ごたえだ!」
言われて確かになるほどと納得してしまった。それを別腹と称するのはどうかと思うが、確かに食感は違い過ぎるもんな。
ま、食べすぎて動けなくならなければ好きにすればいいさ。食べる事は生きる事だからな、なるべくなら美味しいものだけ食べていたいもんだ… だが野菜も食えよ。




