54 買い出し終了
誤字報告いつもありがとうございます。
バックラー… 地球世界だと西洋で使われていたとされる盾だよね。円形の中央に球を埋め込んだような形をしていて、ただ相手の攻撃を受け止めるだけではなく打ち払うなんて用途もあったとかなんとか。ゲームで良くあるシールドバッシュ的な事を現実でやっていたらしいよね… まぁ聞きかじりの知識だけど。
種類も多々あるようで、直径45センチほどで取っ手付きの物から20センチほどで腕に通す物まであるらしい。まぁ俺としては両手をフリーにさせたいから腕に通すやつが良いね、防具としての腕輪よりも守る範囲が広いし、裏拳の要領で攻撃できる武器としても扱えることができるだろう。もちろん扱うための技術は必要なんだけどね!
ともかく俺は、グレイに連れられて防具屋へと足を向けるのだった。
「グレイもあった方が良いんじゃないのか? 腕に通すタイプのバックラー。あれって攻撃にも使えるし、両手も空くから金棒の取り回しにも困らないんじゃないか?」
「ふむ、確かに深層に行くにつれて魔物は手ごわくなってきてる。あった方が良いかもしれんが俺の腕力に耐えられるバックラーがあるかどうか次第だな、当然それなりの値段もするだろうし」
「まぁ身を守るための準備であれば、多少高くたって問題無いよ。むしろ安全が買えるんなら積極的に買いたいしね」
「なるほど… 安全を買うか、この世界の偉い奴には恐らく理解できん考え方だな。奴らはどう値切ろうかとか、どれだけケチれるかを競っているかのように金を払いたがらんからな」
「ああ…」
物語の悪党に良くある話だな… 悪徳商人が護衛をケチってウルフに囲まれて殺されるとかね、実際にこの目に見たし。まぁ初期投資という考え方がそもそもないのかもしれないな、たったそれだけで効率が上がり、今よりも儲けられると言われても目先の出費を嫌ってケチる… アホだよな。
奴隷商人だってね、商品である奴隷が元気で小奇麗だったら売り値にも反映されるだろうし… ま、それができていれば奴隷に落とされて苦労をする人間も減っているか。
防具屋に着いた。並べられているのは本当にこれ着るの? ってレベルのピカピカの鎧とか、装飾がガチ盛でこんなの実戦で使えんだろって感じる盾… 入る店間違えたか?
「ご主人、それらは職人の腕を見せつけるための物で商品ではない。これだけの事ができるんだとアピールしているわけだ」
「なるほど… まぁさすがにこんな鎧や盾なんて、一番安全な場所でふんぞり返っている立場だけ偉い奴が装備するしか使い道は無いもんな」
「うむ。だが実際そういった依頼はあるらしいぞ、しかも儲かるとなればやらない手はないからな」
「なるほどねぇ。それでグレイ、これらを見て職人の腕の方はどう思う?」
「ふむ、悪くはないと思うぞ。伊達にダンジョン都市に店を構えてないと言ったところだな」
グレイがそう言うんだったら問題は無さそうだな。俺だけだったら店側の意図にも気づけず、品質なんて気にもしないで買ってしまっただろう。やはり買い物は1人で来るもんじゃないね。これが日本であれば、パチもんも結構あるけれど基本的に商品価値を売りにしている商社がほとんどだ。海外産にさえ気をつければそうそうはずれを引く事は無いからな…
そんな訳で俺のバックラーはグレイに選んでもらい、腕に装着する部分だけは特注となった。グレイ用は当然のように店には無く、持ち込んだ鉄のインゴットにてこれまた特注に。まぁグレイの腕は非常に太いし仕方ないね、人間用のバックラーなら防げる範囲が狭すぎるんだもん。
俺用のバックラーは2~3日で仕上がるとの事だったがグレイ用は15日ほどかかるとの事だ、まぁ武器の方が20日待つのだからそれほど問題ではないね。明日からまたダンジョンに潜るんだ、次に戻ってきた時に受け取れるよう調整すれば良いだろう。
「よし、とりあえず気になったものは注文できたな。最後に食品や調味料を見に行って宿に戻ろうか」
「承知したぞ。しかしご主人、料理は苦手だと言ってなかったか? なぜ調味料が必要なのだ?」
「苦手と言っても全くできないという訳じゃないんだよ。それに食べるんなら美味しい方が良いだろう? コカトリスの肉もある訳だし、どうせだから美味しく頂こうじゃないか」
「おおそうか! 確かに旨い物を食べると元気になるからな!」
やはり俺と出会うまでの長い奴隷生活、食に対する思いというのはすごいよな。特にグレイは強靭な体躯をしているため、それの維持にかなり多めの食料を必要とする。これは毎日の量を見ていればすぐに分かるよね… 中でも特に好き好んで食べようとするのは肉だ、かなり深層である80階層でドロップしたコカトリスの肉… まぁどう見ても鶏肉なので不味いわけがないと確信しているからこその調味料だと理解してくれたんだと思う。
うむ… 残念ながら塩は手に入ったが胡椒は無理だった、無念。
しっかし胡椒はアホみたいに高いな! 貴族が購入していったとかですでに品切れだったけど値段だけは聞いてみたんだよね。
昔の地球世界では金と胡椒が同等の価値が~なんて聞いた事があったが、この世界ではそれよりもっと値段が高いんじゃないかと思う。だってね、日本のスーパーで売っている一番小さい瓶の胡椒… 確か内容量は25~30グラムだったかと思うけど、大体そのくらいの量で金貨5枚って言われたぞ! ありえねーし! 確か記憶では大昔のレートは胡椒100グラムに対して日本円で28万円相当だったそうだが間違いなくそれ以上だし!
まぁそんな失意の下、宿へと戻ったわけですよ。
「主よ戻ったか、お目当ての物は見つかったかの?」
「ああ、武器は20日、防具は15日くらいだと言われたから次に戻ってきた時がちょうどいいかもしれないな」
「そうか。では次回も80階層前後でのレベル上げと言う事で良いのか?」
「まぁせっかく武器防具を頼んだんだから、先に進むのは手に入れてからの方が良いだろうね。クローディアは防具とか本当に良いのか?」
「私は問題ないのじゃ、防御系の魔法も使えるしの」
「ほほぅ、防御系の魔法ね」
やはり魔法というのは便利なんだなぁ、俺ではステッキに込められた魔法しか使う事も見る事も出来ないからとっても気になるね。
 




