53 残りの休日を有益に?
誤字報告いつもありがとうございます。
「主よ、戻ったか。という事はもう昼か?」
「そうだね、グレイは?」
「朝から庭に出ておる、昼じゃというのならそろそろ戻ってくるじゃろうよ」
部屋に戻るとクローディアが1人で各種ステッキを見比べながら何かをやっていた。というか、魔法使いだとステッキを見ただけで何かわかるのか? 魔法発動の仕組みとか。
ちなみにこの世界ではハートの形に地球のような意味は無いらしく、変わった形だなと言われて終わったので説明しなくて済んだ事に安堵したものだ。
「しかしこのステッキ… 全く構造が分らぬのぅ。この世界にある属性を付与された杖ならば、どこかに魔石があるはずなのじゃが見当たらぬ」
「まぁね… 細めの持ち手に先端は加工されているけど魔石を入れるスペースは無いよな」
「うむ。これを理解できて量産が可能になれば、この世界での戦争も苛烈になってしまうから理解されぬ方が良いんじゃろうが… 私だけでも知っておきたいと思ってのぅ」
「怖い話だな、誰でも彼でもマジカルビームが撃てるとか地獄でしかないわ」
そんな世の中は断固拒否だよね… だってマジカルビームなんて多分光速に近い速度で発射されてると思うよ? 少なくとも俺の目には一瞬の間に敵に当たっているように見えるからね。
おや、ドスドスと俺達の部屋に近づく足音がするな。体重から考えてグレイだろう。
「ご主人戻っていたか、では昼飯だな?」
「ああ、お昼にしよう」
グレイはいつも通り、全種類のハンバーガーを食べつつナゲットをつまみ、アップルカスタードパイでしめる。アイシャもクローディアも完全に固定されているよね… まぁ好きな物を食えばいいとは俺も思うけど。
地味に俺も近頃食べる量が増えたんだよね! レベルが上がり、筋肉というか運動に対するエネルギーの消費量が増えたというか… はっきり言えば燃費が悪くなったと。
先ほどやった全力疾走… 体感的にはバスに乗っているよりも速かった気がする、そんな体になってしまったんだから燃費が悪くなるのも頷ける。まぁ一般大衆車がハイパワーのスポーツカーに変化したと言えば良いのかね、同じ速度で同じ距離を走っても、両車の燃費は全然違うから。
「それで主よ、自身の身体能力は理解できたかの?」
「まぁ大体はね。とりあえず俺がこの世界に来た頃とは桁違いに動けるようになっていたよ、正直驚くくらい」
「そうじゃろうのぅ。レベル1だった者が今ではレベル62じゃ、この数字は私やグレイ、アイシャを除けば最前線にいる勇者よりも高いかもしれんからの。まぁいくらレベルが高くても戦闘技術が無ければ大した脅威ではないのじゃが、逃げに徹すれば追いかけるのは難しいと思う」
「それが狙いだから良いんじゃないか? 今後もこうして外で走るようにしようと思っているよ」
「それが良いじゃろ、逃げ方にも工夫は必要じゃからな。まぁ私達がいれば逃げなければいけなくなる前に対処はできそうじゃが、安全対策はいくらやってもいいからのぅ」
食後のまったりした時間、クローディアはこう言ってくるけど俺が勇者よりもレベルが上かもしれないって? またまたぁ! さすがにそんな訳が… でもあれ? 過去の勇者が今の俺くらいだと聞いたかもしれない… マジか!? でもクローディアが言うように、戦闘技術の無い者はさほど脅威ではないというのは同感だ。力押しだけでは結局技に敗れるんだよね、そんな漫画はいっぱい見た! 俺も気をつけないとだな。
午後からは買い物に出る事になった、俺専用の鈍器を購入しにね。剣とか槍とかは当然のように技術が必要だが、鈍器であれば刃筋がどうのとか関係ないし、野球のようにフルスイングでどうにかなりそうだったから。グレイ用の金棒では俺には重すぎて俊敏に振れないんだよね… ああ非力が恨めしい。
「しかし武器屋というのは刃物しか置いていないな」
「仕方があるまい。この街がそこらにある普通の街であれば、農家でも使えそうな棍棒などがあるかもしれんがこの街はダンジョン都市だからな、当然商売相手は冒険者と言う事になる。俺の金棒のように特注するしかあるまい」
「デスヨネー。でもそうなるとどんな武器にしようかな、持ち運びの事も考えた方が良いだろうしね」
「金棒ではダメなのか? 攻撃部分にはトゲがついてるし、腕力だけでどうにかできる武器だと思うが」
「そうなんだけど持ち運びがさ、グレイのように動き慣れていないから背負うとすぐに取り出せないと思うんだ。だから剣のように腰に差せたら便利かと思ってね」
「ならば鞘に入った状態の剣のような形状にすればいいんじゃないか? それだと腰にも差せるし刃筋も気にしなくても良いだろう」
「なるほど… ああ、警棒のようにすればいいかもしれないな。70センチほどにすれば腰に差しても動きに影響は少なさそうだし、ちょっと得物としては短い気もするけど使い慣れれば大丈夫だと思うしな」
うん、そんな感じで特注する事にした。鉄のインゴットは山ほど持っているし、資材には困らないだろう。後は鍛冶屋にしっかりと警棒のイメージを伝えないとだな。
「ふむ、ただの鉄棒ではいかんのか?」
「鉄棒よりも使い勝手が良くて、取り回しが良くなると思うんだ」
「しかしこの握りの部分の『鍔』とかいう発想は面白いな、確かにこれがあれば手元の怪我もかなり減るだろう。剣ならもっと大掛かりなガードがついておるが、この作りなら槍にも応用できるだろう」
「まぁそんな感じで頼むよ、完成までどのくらいかかりそう?」
「む、まぁ作りが簡単だからそれほど時間はかからんが、この『鍔』の部分は初めてやる仕事だ、20日ほどだな」
「20日ね、了解した」
よしよし、なんとか鍛冶屋のおっちゃんにも理解してもらえたようで安心だよ。
まぁ鍔とガードは同じ目的のための装備なんだが、剣についているのは大きいんだよね。やはり日本刀とか剣道で使われている竹刀とかについている円形の鍔だとサイズも小さくて取り回しがしやすいと思う。あくまでも個人の感想だけど。
「ご主人、どうせなら盾なんかもあった方が良いのではないか? いくらバリアがあるとはいえ、咄嗟の時は自然と腕が反応してしまうものだ。バックラーのような小型の物であればさほど気にするような大きさではないはずだ」
「バックラーねぇ… 確かに腕輪よりかは守れる範囲は広いか」
「うむ。今のご主人であればバックラー程度の重さでは動きに支障が出るとは思えんからな、そうすればかなり冒険者らしくも見える」
「おお、それは重要だな!」
見た目を変える… これは舐められないために出来る一番簡単な方法だ、バックラーを買ってやろうじゃないか!




