38 ギルドマスターも色々と考えているようです
誤字報告いつもありがとうございます。
休養日も終わり、早速今日からまたダンジョンアタックの始まりだ。
休養日? 俺とアイシャはずっとベッドでゴロゴロしていたけどクローディアはなんか魔力の鍛錬をしていたし、グレイはグレイで金棒を振り回して過ごしていたさ。アイシャは狐らしく丸まって、本当にコロコロと転がっていたな…
「ご主人、支度は整ったぞ」
「うむ、すぐにでも出られるの」
グレイもクローディアもやる気は満々だ、アイシャですらピョンピョン跳ねているし機嫌は良いんだろう。
冒険者ギルドでは歴代最深部到達とかって名誉があるらしいんだけど、グレイはどうやらそれを狙っているみたいだね。オーガという種族はそういった事に執着する者が多いとの事、自分もそうだと話していた。
クローディアは誰も見たことの無いであろう深部にいる魔物の観察と、それらを相手に魔法を放つ事が楽しいらしい。
アイシャ? アイシャはそれほど深い事は考えていないとの事だ。ただみんなでダンジョンに入り、全力で動き回る事が楽しいと言っていたね… つまりダンジョンでの戦闘は遊びみたいに感じているって事かな? 末恐ろしい子になりそうだな。
「そんじゃ行きますか、今回の目標は70階層という事でいい?」
「うむ、魔物の様子を見ながら進んでいくのが良いじゃろう。なんとなくじゃがそろそろ主のスキルもレベルアップしそうじゃしの」
「レベルアップー! 今度は何が増えるんだろうね、お肉がいいなぁ」
「そうだな、肉は良いものだ」
多分俺もそろそろだと思っている。前回上がってから1ヶ月は経っているし結構な量も出してるしね。とはいえレベルがある世界だ、レベルが上がっていくにつれて次のレベルまでの経験値は多くなっていくもの… ポンポン上がるとはいかないよね。
ステッキに関しても、ピンクマジカルステッキが出たのは20回目。ダークバリアステッキが50回目でブルーウォーターステッキが100回目、ここまでは倍々できていたのにホワイトヒールステッキから回数が変わってきているのだ。そのホワイトヒールステッキが250回目でイエローサンダーステッキが500回目… じゃあ次はと考えると1000回目なのか? なんて思っている。
ハンバーガークリエイターのレベルは4だけど、3から4になった時にハンバーガーは増えなかったんだよね。次は期待しているよ? 少なくともエッグチーズよりも上位というか、お高いハンバーガーが出る事を!
そんな感じでダンジョンに足を踏み入れるのだった。
1ヶ月後…
SIDE:冒険者ギルドリャンシャン支部、ギルドマスター
「ヒビキ達がこの街にやって来てもう2ヶ月… その2ヶ月で探索階層の更新を2回もやってのけるとはな」
「今日は潜っているんですか?」
「そのはずだ。今回の目標は80階層だという事だ」
「すごいですね… 長期で潜る冒険者は多々いますが、あんな軽装でどうやって補給しているんでしょうか」
「さぁな、まさかギルドマスターの俺が冒険者の秘密を探るような真似はできんだろう」
「という事は、他の誰かに依頼したんですか?」
「普通であればそうするんだがな… 70階層以降を尾行できる冒険者なんていないんだよ。すごく気になるけどな」
「でしょうね… 彼らが持ち込む魔石や素材も鞄一杯にして持ってきますからね、どこにも食糧を入れるスペースなんて無いと思うんですが気づいていないんですかね」
「どうだろうな… 参謀的な立場のエルフもいるし、どうせ細かいところは見てないとでも思ってるんじゃないのか?」
「そうかもしれませんね。まぁ食料を使い切ったから戻ってきたと考えれば、鞄に満載詰め込める理由にはなりますし。とりあえず業務に戻ります」
「ああご苦労さん」
受付嬢が執務室から出ていき、俺はナイトグリーン支部から届いた手紙を手に取る。
「チッ、なんて書いてあるか手に取るようにわかるぜ、どうせヒビキ達の噂が流れていって対魔王の戦闘要員によこせってんだろ? 確かに魔王は討伐しなければいけない。しかし魔王討伐に全てを賭けてしまったら各国の民だけが困るだろう、どうして偉い奴はそんな簡単な事が分からんのかねぇ」
どうせあれだろ? 魔王討伐に貢献出来りゃ貴族としてさらに成り上がれるからだろ?
そういえば今代の勇者はあの国… ナイトグリーン王国の王子だったな、王太子へ選ばれるために立場を盤石にしておきたいってところか。本当にいけ好かないな。
「だがまぁ確認はしないとダメだよな」
諦めて手紙を開封し、中身を取り出してみる。
ふむふむ、やはり最高到達点更新パーティを遠征させないかって話だな。本当に嫌な予想は良く当たりやがる… 俺の立場からすればヒビキ達パーティを外に出すわけ無いだろう? ただでさえ持ち込んでくる魔石や素材の供給が足りてないんだ、あいつらがいるからこそ回っているようなものだ。他のパーティに60階層いって来いなんて言えないからな。
まぁ深層部の素材が取れるなんて商人に知られたら買いが殺到するに決まってんだろ! どうしてわからんかねぇ、というか勇者がいるんだからさっさと魔王を討伐しろってんだ。
「ん? 勇者からの推薦にて最重要事項だと? 何あほなこと言ってんだよ、たとえ勇者が王子だろうと他国の王子じゃないか! このアキナイブルーで通用する訳無いだろう。特にヒビキは品の良い雰囲気を出している、まぁ精一杯強がったような態度も見せているが恐らくどこかの貴族の関係者に違いないだろう。そんな奴が他国のお願いという名の命令を聞く訳… ないだろうなぁ」
いや待て、これはもしや俺の立場も危うくなるのか? 一応ナイトグリーン支部は対魔王の最前線だ、ギルド本部もこの事を重く見ているに違いない。リャンシャン支部だってダンジョンがあるせいでそれなりに発言権は高いと思うがナイトグリーン支部には及ばない… まぁ本部から何か言って来たら考えればいいか。
「とにかくこの件は次に会った時に話してみるか、万が一対魔王の最前線に興味を持つかもしれないからな! それはそれでこの支部が大変な事になるんだが」
大体この街ではすでに40階層以降の素材が出回っているんだ、商人達はそれを見越して色々と注文を寄こしてくる。しかも60階層ボスの素材まで持ち込まれている、それらを売り捌かないとギルドの資金も危うくなるから出所をごまかすわけにもいかん… そしてまた商人達から新たな注文が殺到するのだろう。
「うん、やはりヒビキ達パーティはこの町にいてもらわないとダメだな」




