30 魔物との相性
誤字報告いつもありがとうございます。
「ぐぬ… せっかくの格上のボスが…」
おおう、グレイにしては珍しくグズついているな… どんだけ戦いたかったんだよ。しかも自分から燃えているような蜥蜴を。
「まぁなんじゃ… 最高深度を更新するつもりなんじゃし60階層のボスを存分に叩くがよかろうよ」
「まぁなぁ、俺もまさかアレで片付くとは思わなかったもんね」
「まぁ恐らくじゃが、溶岩のようになっていた鱗が水を被せられた事で硬化し、そこに雷が良い感じに当たってしまったという事じゃろう」
「まぁ水は電気の通りを良くするものだしな、思った以上のダメージだったと。グレイ、とりあえず51階層以降の魔物で様子見をしようじゃないか」
「むぅ… 分かった」
ふぅ、ようやくグレイが立ち上がってくれたよ。でもまぁダンジョンに入って今日で7日目だ、今から60階層を目指すには10日前後の時間をみなくてはいけないだろう。クローディアはああ言ったが、俺としては60階層に行くんなら一度地上に戻って休息を挟みたいところだ。まぁグレイの様子を見ながらだな。
正確な時間はともかく、気分的には朝一番でボス部屋に入り5分も経たずに討伐してしまったので体力も気力も十分ある。だからというわけではないけど、とりあえずこのまま先に進む事にした。
「しかしクローディアよ、その雷のステッキは強すぎるのではないか? なんだったらここ一番という時のために温存すべきだと思うが」
「いやいや、ここ一番という時のためにしっかりと修練を積んでおくべきじゃろう。まぁ心配するな、ちゃんとグレイの分は残しておくようにするのでな」
あはは、グレイが遠回しにイエローサンダーステッキの使用を制限しようとしているし。まぁそれをさらりと躱すクローディアもどうかと思うが… でも練習なら仕方がないね、地球世界での戦闘も、昔は遠距離からの弓攻撃から始まるもんだったしね。
「とりあえずドロップを拾って次の階層に行こうか、ここにいてもアレだしね」
「むぅ、分かった」
よしよし、グレイも何とか動く気になってくれたようだしさっさと移動をしてしまおう。そしてドロップはっと。
「ご主人様! ドロップは革と牙だったよ! 後金貨も!」
「ええ? 革なの? すでに加工処理済みって事?」
気がつくとアイシャがドロップを拾いに行ってくれていたようだ。
「そのようじゃな。じゃがしかし、火蜥蜴の革は防具の素材になるから高級品じゃぞ? 火に耐性があるからな」
「ほほぅ、燃えにくい革って事なのね。それにしても金貨も出るんだ… 今までの魔物は出さなかったのにね」
「ダンジョンが何をドロップさせるのかは何も分かってはおらんのじゃ。じゃがこの金貨は普段私達が使っている物と同じようじゃの」
「ふむ、とりあえず儲けたってことでいいな。そんで50階層にも転移陣はあるんだろ?」
「あるはずじゃ」
よしよし、じゃあ51階層付近でグレイが満足するまで戦ったら転移陣ですぐに戻れるって事だね? まぁいつ満足してくれるかはわからんけど…
転移陣の確認後、俺達は通常の編成… グレイ─アイシャ─俺─クローディアの順で51階層を進み始めた。そしてこの階層も薄暗い迷路状の通路が続く…
「クローディア、ダンジョンっていうのはどこもこんな感じなの?」
「こんな感じとはどういう事じゃ?」
「いや… ダンジョンと言えば屋内なのに森林があったり砂漠があったりとか、そんなイメージがあったんだよね」
「何じゃその不思議空間は!? 少なくとも私が知るダンジョンとはこんなもんじゃぞ、階層を重ねていく事で変わる事と言えば迷路の順路と出没する魔物くらいかのぅ」
「なるほど…」
ふむふむ、つまりゲーム的な感覚で言えばアレか? ○○の不思議なダンジョンのように延々と似たような場所をうろつくタイプと…
まぁそうだよな、ダンジョンの内部に森とか砂漠とか、挙句に海まであったりするなんてフィクションの話だもんな。あったらあったですごいとは思うけど、そんな状況はさすがに無いよな。
「何か来るよ!」
「おう! アイシャは下がれ!」
アイシャが何かの気配を察知し、グレイが戦闘体制に入る。っておい、グレイが笑ってるんですけど? これは怖い! ただでさえ筋肉質でゴツいグレイが… そう、まさに鬼が笑っているのだ!
いやぁグレイが敵じゃなくて良かった… これじゃグレイと対峙しただけで腰が抜けそうだよ。
そして現れた魔物はゴーレムだ。ごつごつした岩が人型に模られ、重そうな体でこちらに向かって歩いてくる。
「むぅ、ゴーレムか。ゴーレムは魔法が効きにくいから嫌なんじゃがのぅ」
「うむ、剣で叩けば折れるやもしれん… 殴るか」
「マジで!?」
なんと! グレイは持っていた大剣をアイシャに渡すと素手のままゴーレムに突貫していくじゃないか! そして更にゴーレムと殴り合いを始める… あーいや、ゴーレムのパンチは全部躱しているから一方的に殴っている。だけど大丈夫なのか? 見た感じ岩を殴っているのと変わらないと思うんだが…
ハラハラして見ていると、グレイのパンチがゴーレムの胸元に良い音をさせて命中し、ゴーレムはバラバラと砕けてしまった。岩を殴って壊した!
「うーむ、これは鈍器が無いと効率が悪いな」
「そうじゃの。最高深度に到達したパーティも、このゴーレムを見て諦めて下がったのかもしれんな」
「どういう事?」
「これらのゴーレムはロックゴーレムと呼ばれるタイプなんじゃが、実はゴーレムの中ではこのロックゴーレムが最弱じゃと言われておる。上位になるとアイアンゴーレムのように強度がさらに増すタイプやシルバー、ゴールドゴーレムのように魔力を使って防御力を高めてくるタイプもおる」
「ほっほー」
これはゲームなんかで聞いた話と似ているね。シルバーやゴールドと言えば換金アイテムを落としたりするんだろ? そしてミスリルゴーレムやオリハルコンゴーレム、アダマンタイトゴーレムと続くんですよね? わかります。
「ところでグレイ、手は大丈夫なのか?」
「ああ、少し痛めたかもしれないがこの程度では俺の戦闘力は変わらない」
「いやいや、せっかくホワイトヒールステッキがあるんだから使っておくよ」
「む… ありがたい」
グレイの両手だけじゃなく、蹴りも使っていたので足もか。ええい面倒だ、全身いっちゃえ!




