21 ダンジョン探索中 2
誤字報告いつもありがとうございます。
「む? 水を出すだけのステッキで魔物を対処できる訳がなかろう」
「いやいや、水って自然現象の中では最強の部類に入るんだぞ? 渓谷なんかは長い時間をかけて水が削った道なんだし。特にウォーターカッターというのがあって、高圧で水を噴射すると鉄だって斬れるんだ」
「ほぅほぅ! 水でそんな事も出来るのか! 水魔法と言えばどうしても飲料水の確保や洗い水なんかしか使い道は無いと思っていた」
「それに水は重いからね、高圧で更に多めの水流をぶつけるだけで人とか物を吹き飛ばす事もできるんだよ。俺は島国の生まれだから水の怖さは良く知ってるし、ただの水だと思っていると痛い目を見るぞ」
まぁさすがに津波レベルの水流を出す事はできないだろうけど、水を侮ると… ね?
とはいえ、練習も無しにいきなり実戦… というか、グレイやクローディア、アイシャを抜かれた状況での戦闘をって考えるとやっぱり多少は慣れておきたいね。
「…というわけで、戦闘が余裕の内に二手に分かれてやってみない?」
「む… まぁアイシャも経験を積ませておきたいからその方が効率が良いのは解るが、ご主人は大丈夫なのか? 人型の魔物と相対するのは」
「グレイよ、主には私がつくから大丈夫じゃ。まぁ精神的な事については慣れてもらうしかなかろうよ」
うん、初めてゴブリンを見た時ついこぼしてしまったんだよね… 魔物とはいえ人型に対して攻撃し、殺してしまうのには抵抗があるって。グレイもそれを覚えていて気にしてくれているんだろうけど、さすがにこのままだとちょっと情けないというか、まぁ緊急時に対応できるようにしたいというのは本当だしね。
「クローディアがついてきてくれるから大丈夫だよ。まぁ指導者としては厳しそうだけどね」
「まぁの。いくら主とはいえ命にかかわる事じゃ、半端な助言など意味など無いからな。やるからにはしっかりとやる… それで良いかの?」
「ああ、それで頼むよ。この3人が抜かれてしまうような相手に対処しないといけないという想定で、まぁだまし討ちみたいな事でもできれば良いと思うんだ」
「ふむ、そういうことなら俺は言う事はない。ではこの階層で1時間ほど分かれてやってみるか」
そんな訳で、グレイ達との待ち合わせ場所を下層に降りる階段に設定してからクローディアと共にダンジョンを歩く。11階層というのはまだまだ低階層の部類になるそうで、今のところトラップ関係は心配しなくてもいいそうだ。
「いきなり魔物を相手にするのも危険じゃから、ちょっとここらで試し撃ちでもやっておこうかの」
「そうだね… そう考えてみればいつだって練習はできたんだな」
「とりあえず壁に向かって魔法を放ってみてくれ、ダンジョンの壁は恐ろしく頑丈だから多少の攻撃ではビクともせん」
「よし… じゃあまずは高圧洗車機をイメージしてブシャーっと!」
ブルーウォーターステッキを振り上げ、壁の方向に向かって振り下ろす。すると予想通り、結構な圧力で押し出される水流がダンジョンの壁を洗い始めた。
「ほほぅ、確かにこれだとゴブリンや普通の人間程度だと押し留めるくらいはできそうだの。しかし水魔法にこんな使い方があるとはな… いや、川の急流や滝などを見れば思いつく事もあるか、水量は違うがの」
「まぁそうだねぇ、あれほどの水量だと簡単に流されちゃうからね。じゃあ次は… 消防車から放出される消火栓のイメージでやってみるか、うまくいけばもっと強力な水流が作れるかもしれない」
「ふむ、その消防だのいうのは良く分からんがやって見せてくれ」
よし… テレビで見た火災現場の消火活動を思い出し、腰を落として水圧による衝撃に備える。
「行くぞ! とうりゃっ!」
先ほどと同じようにブルーウォーターステッキを振り下ろす!
「え? あれれ、なんか思っていたのと違うな」
結果は先ほどやった高圧洗車機と同じような水量と圧力… うーん、こういうのはイメージが大事だってなんかのラノベで言っていたはずだけど、単純にこのステッキではできなかったという事だろうか… まぁ少ない魔力でってくらいだからリミッターとかがかかっているのかもしれないね。
「ふむ、期待しておったがなんか残念じゃったな」
「ソウデスネ…」
あれだけ大見得を切っていたのに恥ずかしいねこりゃ、でもまぁしょうがないか。
「では、次は魔物に向かって撃ってみる事にするかの。まぁ失敗したとて私がついておる、どんどん試してみるといい」
「そうだね」
その後、数体のゴブリンを見つける。ゴブリンはこちらの姿を確認すると、どうしてだか猛ダッシュで攻勢に出てくるんだが… ええ、それはもう走って向かってきているところにカウンターで高圧洗車機同等のジェット噴射を喰らえば体重の軽いゴブリンなんて吹っ飛んでいくわけで…
「おお主よ、吹っ飛ばされて壁に当たったゴブリンが死んでおるぞ! これは意外と攻撃に使えるかもしれないな」
「マジか… なんて運の悪いゴブリンなんだ」
倒せなかったゴブリンは、クローディアがすかさずマジカルビームでとどめを刺していたのですでに敵影は無い。でも緊急回避には使えそうだという結論は出たようで安心だ。
「しかしこれらのステッキは、主がスキルをたくさん使ったら出てきたのじゃろう? ここまでくると次に現れるステッキが気になってくるのぅ、ちょっと私にも使わせてはくれないか?」
「そうだな、余してても意味無いから誰がどれを持つか話し合った方が良いかもしれないな」
「まぁ現状ピンクマジカルステッキは私が預かっておるが、他はダークバリアステッキとブルーウォーターステッキ、ホワイトヒールステッキの計4本じゃ… 今は特にやらなくても良さそうじゃの」
「まぁね、バリアは今のところ寝床の確保にしか使ってないし、ホワイトヒールステッキも使うほど怪我はしてないからね。まぁ万が一使わなくちゃいけないほどの何かがあった場合、一番フリーになっている俺が使うのが理想だろうね」
「うむ。グレイもアイシャも基本は近接じゃし、アイシャは魔法も使うがファイヤーボールじゃからな… 今のところブルーウォーターステッキとは相性が悪そうじゃ」
「やっぱりそういうのってあるんだ」
「そうじゃの。やはり火と水は相いれない属性じゃからな… しかしステッキを使えば出来ない事も無いじゃろうな。どれ、合流したら一つアイシャで試してみるかの」
おおう、アイシャを使って何かの実験をしようとしているよクローディア…




