179 やったぜ!
誤字報告いつもありがとうございます。
待つ事数分、壁の中からグレイとシフが戻ってきた。
「ご主人よ、やはり俺達の想像通りだったぞ!」
「おお? って事はつまり?」
「ああ、俺が使わせてもらっているのと同じアイテム袋だ」
「マジか! いやぁあったらいいなって思っていたけど本当にあるとはね。じゃあこれは早速クローディアが預かってくれ」
「分かったのじゃ! ではついでと言ってはなんじゃが、主が持っているステッキの方も…」
「ああ。不要だと思うステッキはあるかい?」
「む… ホワイトヒールステッキかのぅ。私は攻め手なのでの」
「分かったよ。じゃあこれはいずれシフに任せる事になるのかな?」
「うーむ… それは難しいのぅ。確かにシフにはそういった適性があると思うし、これでも毎晩修練はしているのじゃが… 獣人の血というか、やはり物理的な攻撃方法に偏る癖があるようなのじゃ」
「ええー… 見た目は大人しそうに見えるんだけどねぇ」
「獣人の見た目など当てにはならんのじゃ。アイシャとて普段は聞き分けの良い良い子じゃが、戦闘となれば違うじゃろ?」
「まぁそうかも」
しかしそうか、獣人の見た目はあてにはならないんだね。まぁそういった闘争本能とか生存本能とかがないと生き抜く事も出来ないしな、人間も見た目詐欺はままある事だし…
だがしかし! 目的だった2個目のアイテム袋ゲットだぜ! これはもうあちこちのダンジョンを荒らすしかないな! 現状この階層まで来れる冒険者はいないし、まぁぶっちゃけ早いもの勝ちだよね!
そして俺が収納していたステッキを取り出す… 俺の手元にあるのはダークバリアステッキ、ホワイトヒールステッキ、レッドファイヤステッキの3本だ。ピンクマジカルステッキとブルーウォーターステッキ、イエローサンダーステッキにグリーンウィンドステッキの4本はすでにクローディアが装備中だったからな… 1本ずつ両手に持ち、残った2本を腰に差しながらのダンジョンアタックはさぞかし大変だっただろう。まぁ本人の希望でそうしていたんだからいいんだけど。
「フフフ… これで6属性の魔法を乱れ打ちできるの!」
「いやいや、自重してよ?」
6属性というが、ピンクマジカルステッキから放たれるマジカルビームは何属性なんだろう… まぁいいか、俺が持つよりも間違いなく有効活用できるだろうからこれも戦力アップの一つだね!
「さて、じゃあ目的は果たされた訳だけどこれからどうする? 80階層に戻った方が早く帰還できるけど」
「何を言うかご主人、ここまで来たのだから最下層まで行くしかないだろう。忘れたか? ダンジョン踏破でスキルが得られた事を」
「ああそっか! あれは初回限定みたいな感じだったもんね。当時はシフがいなかったから良い機会だな」
「うむうむそうだろう。もしかすると100階層以降があるかもしれんからな」
「なるほどなるほど」
グレイの言う通りだな、ここで引き返すのは色々ともったいないのは間違いない。せっかくだから得られるスキルも同じなのか検証しないとな!
それに100階層以降があるBランクだった場合もそうだ、それほどの深層にまた隠し部屋なんかがあるとすれば… きっとすごいものが隠されているはず! まぁあくまでも希望的観測ですけどね。
「では進もうかの、私もスキルには興味があるからの。剛力スキルも活用できておるし、また別のスキル… 出来れば魔法系が出てくると良いのぅ」
「魔法系か… 普段であれば俺には関係ないと断じるところだが、身体強化につながる可能性を考えれば近接だからといって排除する訳にはいかんな」
ふむふむ、どうやらグレイとクローディアも夢を膨らませているようだね。まぁ実際前回の剛力スキルが手に入った時、非力な事を悩んでいたクローディアの生活が激変したからな。今ではグレイの大剣ですら持ち上げられるようになってるんだ! 魔法使いエルフが大剣だなんて… ギャップが良いね!
と、まぁ俺の趣味はさておき。いつも献身的に働いてくれているシフにも何かスキルをって欲が出てきたね、まぁここのダンジョンがBランク以上だった場合は長丁場になるんだろうけど。
「ご主人よ、置いていくぞ」
「おおう、今行くって!」
危ない危ない、考え事をしている最中に置いていかれるところだったよ。
「次の難所は90階層くらいか? でも対策は出来ているけどね」
「うむ、槍投げなら俺に任せてくれ。今回は核を突き刺せるよう狙ってみる」
「それなんじゃが… トルネードの魔法でどうにかなりそうではないか? まぁ先ほど自重するよう言われた後で言うのもなんじゃが」
「うーん… そういえば90階層のボス部屋って天井高かったっけ? 低い天井だとあまり効果が出なさそうに思うけど」
「いやいや、あの暴風でスライムのゼリー部分が飛び散れば核を狙いやすくならんか? それこそ投擲ではなく直接叩けるのではないかと思っておるのじゃが」
「まぁそれをやるならトルネードの魔法の射程を調べないといけないな、まぁ魔法が魔法だけに結構射程はあると思うけどね」
「そうじゃの、先ほどの戦闘でも20メートルほど先に撃てたからの」
「ん? じゃあ届きそうだな。まぁ万が一トルネードでダメだったとしても槍があるからな、今の技術であれば部屋の外からじゃなく中に入ってからでも倒せるだろう」
「うむ、任せるがいいぞ」
「よし、じゃあまずはそこまで行ってみようかね」
予定通りの大戦果を挙げ、俺達は84階層へと進みだす。すでにクローディアの腰にはアイテム袋が装備されており、時折アイテム袋に手を突っ込んで何かを確かめているような仕草をしている… さてはクローディア、浮かれてんな? きっと素早くステッキを取り出すための練習なんだろう、まぁここは突っ込まずに黙っておいてやるかね。
先頭を歩くグレイが巨躯すぎて前が見えないので、フワフワと揺れるアイシャの尻尾を眺めながら気分良く歩く俺だった。




