178 モンスターハウス攻略
誤字報告いつもありがとうございます。
「ぅおらぁぁぁぁ!」
一見大量の魔物に囲まれてフルボッコにされているようにしか見えないグレイだが、大きな声で気合を入れながらミスリルの大剣を振り回す。
シュンっと横薙ぎに1回転すると、グレイを囲っていた魔物の一部が半分に斬られて飛び散っていく。いかにもグレイらしい大味な戦い方だ。所々コカトリスにつ突かれてはいるようだが、どうやらグレイの筋肉の方が硬いって事なのだろう… 納得は出来ないけどね!
中心でグレイが立ちまわっているが、向かって左にアイシャが進み、右にシフが突き進んでいく。アイシャは尻尾に炎を纏い、まるで舞うかのように周囲に火を振りまいて魔物を燃やしていく。火がついて混乱した魔物をミスリルの短剣で次々と刺していき、グレイの外側から魔物の数を減らしていく。
シフも一体どこで覚えたのか、ミスリルの釘バットを持つ手をだらんと下げ、地面をこすりながらカラカラと音を立てつつ進んで行く… おい、それはまるで昭和のヤンキーがやっていた行動みたいじゃないか! まぁ俺も映画でしか見たことの無い光景だからあまり詳しくはないんだが…
接敵すると両手で釘バットを持ち、メジャーリーグのパワーヒッターかのようにフルスイング! 見た目は細いが獣人特有のパワーとレベルが相まって、一振りで3~4体の魔物がホームランされていく。そして時折槍の突きのように釘バットを前に出し、トゲトゲの部分でゴリゴリとねじ込んで… うわ怖っ! いや本当誰に教わったんだよ!
初撃のトルネードで3分の2ほどの魔物が倒されたとはいえ、グレイ達もあっという間に殲滅を進めていく。ああこれ、後数分もしたら終わっちゃうな… まぁリャンシャンのモンスターハウスに行った時よりも、確かに俺達のレベルは上がっているがこれ程圧倒するとはね。
83階層のモンスターハウスに入って10分経っただろうか… もうその程度の時間で数百はいたであろう魔物達の掃討が終わってしまったんだが…
「よし、ではアイシャとシフでドロップを拾ってきてくれ」
「わかりました」
「うん!」
グレイが前線にいたアイシャとシフに指示を出し、自分も足元に転がっているドロップを拾い出す。大量のコカトリスの肉を見ているのだろう、なんかニヤニヤしているな?
「俺達も手伝いに行くか」
「そうじゃの… 3人だけで拾うには量が多すぎるの」
5人でせっせとドロップを拾い集め、爪や羽根などの素材類は俺が持ち、肉はグレイのアイテム袋に入れていく。そろそろアイテム袋の許容量が肉だけで埋まってしまうそうだが、まぁその内グレイが消費していくから大丈夫だろう。なんならバンガードにいる者達に食べさせても良いしね。
そして30分後、ようやく俺達は隠し通路の探索に取り掛かる。
「よもや戦闘時間よりもドロップを拾う時間の方がかかってしまうとはな」
「仕方ないのじゃ、魔物の数が多すぎるのじゃから」
「いや、これはクローディアがトルネードの魔法で大量の魔物を吹き飛ばしたのが原因だろう? 他人事のように言うな」
「何を言うか、吹き飛んだと言ってもたかが知れているじゃろう!」
そしてグレイとクローディアがいつものように言い合っている…
「ご主人様見つけたよ! ここ!」
「おお! さすがはアイシャだな、こんなに早く見つけるなんて」
「えへへ!」
前回同様、アイシャが素早く壁を見て回り、あっという間に隠し通路を見つけてくる。駆け寄ってきたアイシャの頭をわしわしと撫でながら、ついでに耳をモフっておく… いいね!
「では俺が行って取ってこよう。リャンシャンと同じであれば何も無い通路の先に宝箱があるだけだからな、全員で行く必要もあるまい?」
「それもそうだね。でも一応シフを連れて行ってくれ、念のためにね」
「承知したぞ」
アイシャの見つけた隠し通路にグレイとシフが入っていく。リャンシャンと同じような感じであれば、ほんの数分で戻ってくるはずだ。俺達はただ待っていれば良い。
SIDE:エルフの組合員ジャン
「どうだ?」
「あの宿に決めたようだな、俺達も同じ宿にするか?」
「うーん… それはなんか危なくないか?」
「かもしれん」
俺達は連中を尾行してペンチャンという街に来ている、奴らがギルドや周辺の冒険者を相手に情報収集している姿を遠くから見ていたが、ようやくそれらが終わって宿に入ったという事だ。
そして連中が入ったあの宿は… ペンチーソウという宿か、割と良い宿じゃないか? いっちょ前に金を持ってやがるのか…
「よし、じゃあ俺達はその奥にあるペンサンピンという宿に入ろうか」
「おお? その宿もそこそこ良い宿じゃないか?」
「尾行しながらの野営ばかりで疲れただろう? たまには良い宿を取ってもいいんじゃないか?」
「ま、まぁそうだな」
あまり無駄使いはしたくはないが、ここはエルマンの言う通り確かに疲れてはいる… 奴らも今日くらいは大人しく疲れを取るだろうから俺達もそうするべきかもしれないな!
しかし馬車を尾行するのは本当に疲れるぜ。どうしても馬車の荷台からは後ろの方が見やすくなっているからな… 俺たちエルフの視力が良くなければあっという間に見つかってしまうところだぜ。
リャンシャンでエルマンと別れた後、俺はギルドなどで情報収集をした。得られた情報はクローディア様を含むパーティはすでにこの街から離れているようで、近頃姿が見えなくなっているとの事。俺は頭に巻いている手拭いを取り、自分がエルフである事を曝け出してまで同胞に会いたいとギルドの受付に詰め寄ったが、詳しい話を聞く事は出来なかった。人間種の癖に口が堅いじゃないかよ。
まぁその後すぐさま街を出て、先行しているエルマンと合流して今日に至ったという訳だが… だがしかし! どうやらクローディア様はここのダンジョンにいるらしいとの事だ。多くの冒険者がその姿を見たというし、今もまたダンジョンアタックをしているという。
「ジャン、あの連中… 恐らく数日は動かないと思う」
「そうだろうな。1回のアタックで25日もダンジョンに入っていたなんて話を聞けば、俺でもそうするぜ」
「あくまでもそれはクローディア様に対して何かをするという行動に対してだけどな。それ以外の… まぁダンジョンから出てきた時に動くための視察はするかもしれない」
「俺達はどうする? 奴らの行動を把握するだけか?」
「難しいところだな… まぁクローディア様がダンジョンから出てきた時に、すぐに知れるよう行動するしかないかもしれんな」
そりゃそうか、どうせ奴らも動くんならその時だろうし、クローディア様が危ない時に颯爽と俺達が駆け付けるというのも悪くないかもしれないな…




