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ソーシャルな神様、始めました  作者: 九重市 九十九
第三部:強さが全てではないんです。
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狂犬です。


 えっ……え?

 いや、俺、そんなこと言ったっけ?


 いやいや、実際に最初の頃は秘書に出来たらいいなーとか思ってたけどさ。

 それも内心で思ってただけで、まだ口には出してなかったよね?

 というか、レイチェルが過激派狂信者だって分かってから、秘書にしようって気は完全に失せてたし。


 なんでレイチェルを秘書にするって話が出てるの?

 今までの流れというか空気的に、レイチェルを秘書にしたらダメでしょ。


 だってレイチェルって、どう見てもナルキアと犬猿の仲だぞ?

 更には俺もレイチェルとはちょっと距離を置きたいって感じの話をしてたでしょ?

 エーリッヒとクロードもドン引きしてたし、レイチェルを秘書にしてもこの場の誰も喜ばないと思うよ?



「え"っ……あ、いや、あの。レイチェル殿は巡回要員の多様化のテストケースとして運用される予定でしたし、巡回に回した方が宜しいのでは……。」


「ですがクロード中尉。先ずはレイチェルさんと他の英雄達との相性を確認すべきだと思います。巡回先では市民だけでなく他の英雄と出会うこともあるでしょうから。その点、秘書として執務室に勤務すれば、ジョン少佐とシュナさん以外の全ての英雄との相性を確認出来ますよ?」



 クロードよ……やっぱりお前も嫌だったのか。

 「え"っ」って何だよ、嫌がってんのバレバレじゃないかよ。


 それは置いといて。

 よくよく聞いてみると、高柳君の言うことにも一理あるな。

 というか、考えてみるとレイチェルをそのまま巡回に出すのは不味いよな。


 だって、下手したら神に対して愚痴を言った市民に、銃口向けそうな感じだし。


 それを考えると、どう考えてもレイチェルは巡回向きじゃないな。

 うん、それに気付いてくれて助かったよ。

 お陰で問題が起きる前に対処出来そうで何よりだ。

 市民が銃声とともに命を散らして、ついでに俺が得るガチャポイン……信仰が減ってしまうところだった。

 危ない危ない。




 ……でも。

 レイチェルが秘書とか、俺が嫌なんだけど。


 いや、レイチェルは美人だから、確かに職場の彩りは華やかになるとは思うよ?

 でもさ、レイチェルが執務室に居ると、君も含めて全員が俺に軽口言えなくなっちゃうんだよ?

 そんなの嫌でしょ?

 ってか、俺が嫌だよ。


 それに多分、ナルキアはレイチェルが居ようとも関係なく俺に対してバシバシ本音言ってくると思うぞ?

 そして始まる第二ラウンド。

 事務職場なのに、いつ銃声がなるか不安になる、アンタッチャブルな職場の出来上がりだ!


 嫌だよそんなの。

 マジ勘弁してくれよ。

 俺は気軽に胃薬も頼めない立場なんだぞ?

 俺の胃のことも案じてくれよ。



「……そうですわね、それしかないですわね。」



 ああ……ナルキアまでが賛同してしまった。

 いや、理屈で言えばそれしかないんだけどさ。

 天才美少女ナルキア様には、もっと別の、天啓が舞い降りた的な解決策とかを出して欲しかったよ。

 まぁ、無理なんだろうけどさ。


 ……くそ、最後の悪あがきだ。



「レイチェル。」


「ハッ。」


「事務作業の経験はあるか?」



 無いと言ってください。

 お願いなので、事務経験皆無で、事務仕事なんて自信がありませんって言ってください。


 もしも事務経験が無く、事務仕事に自信がないのなら、穏当に秘書任命を断れるのだ。

 そして何とかレイチェルを秘書室から隔離……いや、別の職場でのご健闘をお祈りしたい。



「……多くは有りませんが、半年程後方で勤務した経験があります。」



 あんのかよ。

 じゃあ、秘書に決定かよ。

 ふざけんなよ。


 ってか、レイチェルが秘書になるとか、危険過ぎるだろ。

 あいつ気に食わないことがあったら拳銃抜こうとする女だぞ?

 そんな危険な奴を執務室に置けっていうのかよ!


 と言っても、執務室以外で仕事をさせると、それはそれでマズいんだよな。

 巡回は市民に銃口向けそうでダメ。

 前線は……レイチェルは☆5英雄だから、ずっと前線で戦わせられるだけの資材供給体制が整ってないから無理だよな。

 となると、消去法で秘書に任命するしかないのか……。


 くっそ、なんだよこれ!

 女性英雄を秘書に任命出来るってのに、全然嬉しくねぇぞ!

 『神の信徒』で女性英雄って言ったら、俺を慕ってくれる子犬系のキャラが出るんじゃないのかよ!なんで狂犬系のキャラが出てるんだよ!

 柴犬系レベルの忠犬期待したら凶悪なドーベルマンが出ましたとかふざけんなよ!




 あー……くそっ、仕方ない。

 こうなったら、俺も腹を括るしかないか。

 この際、毒を食らわば皿までだ。


 どうせレイチェルを普通に秘書に任命しても、問題を起こすのは目に見えているんだ。

 となったら、この際レイチェルを俺に近い位置に配置してしまい、問題を起こしそうになったら俺がすぐ止められるようにした方がいいだろう。


 ただ、レイチェルが拳銃を抜こうとした時に、レイチェルが秘書の席に座っていた場合、一番近い席でも俺が止めるのが間に合わないかも知れないぐらいちょっと距離があるんだよな。

 だからレイチェルには、秘書より俺の近くに居てもらえるようにしないといけないんだ。




 そんな都合の良い方法があるのかって?

 ……あるんだよ、一応。


 レイチェルを俺が常に監視出来る状態な上、銃を抜きそうになったら即座に制止させることが出来る距離に居させられる役職。

 そんな、理想的なほどにこの状況にマッチングした役職を、俺は事前に考えてあったんだよ。


 本当なら、もっと別の英雄用にと考えてあった役職なんだけどなぁ。

 でもまぁ、今の状況的に、どう考えてもレイチェルをこの役職に任命するしかないか。



「……では、そうだな。秘書は現状では人数が過剰なぐらいだ。だが執務室に勤務することで英雄同士の相性を確認するというのが効率的なのも確かだ。よって、レイチェルは私の近侍に任命するとしよう。」


「……近侍、ですか?」



 そう、近侍だ。

 俺の近くに侍り、俺の指示を待つ係。

 最も俺に近い立ち位置でもある、側近に値する位置づけの役職だ。


 もしもレイチェルを普通に秘書に任命した場合、この執務室には新たにレイチェル用の席を用意しなければならない。

 そしてその席は、当然現在の秘書達と机を並べる形になる。


 だが、近侍ならば?

 そう、近侍という俺の側近の立場ならば、俺の席の真横に席を設けられるのだ。

 そうすれば、狂犬な彼女が誰かに噛み付こうとした時に、俺がすぐに止めることが出来るし、凶暴な彼女が銃を抜こうとした時にすぐ制止することが出来る。




 近侍の仕事内容については、普段は秘書の仕事をやらせといて、俺が移動する時には俺の護衛をさせておけばいい。

 そうすれば俺の目が届かない時間が減って、レイチェルの暴走を止められる機会が増えるだろうと思われる。


 普通の英雄なら、神である俺が相手とは言っても、執務時間中はずっと俺と一緒に居るとか流石に嫌がりそうなもんだが、レイチェルは狂信者なのでその問題もパス出来るだろう。


 この方法ならば。

 レイチェルの暴走を止められて。

 建前であるレイチェルと他の英雄との相性確認も行えて。

 更にレイチェルは、神の側近という立場を得て面子が立つ。


 そう、この方法を取れば。

 全て丸く収まって、みんながほんのちょっとだけ幸せな結果を迎えられるのだ。


 ……俺を除いて。




 実は言うとだ。

 この近侍って役職自体は、結構前から考えてあった役職だったんだよ。


 今後ガチャを回していって、いつか俺が気に入った女性英雄が出てきた時に、その女性英雄をこの役職に据えようと思ってたんだよ。

 秘書だと頭が良い英雄じゃないとなれないけど、近侍なら多少頭が悪くても、護衛戦力ってことで俺の傍に置いておけるだろうし。


 それがまさか、こんな狂信者を任命することになるとはな……。

 いや、レイチェルは可愛いからさ。

 見てる分にはハッピーだし、悪くはないんだけどさぁ。


 若干貧……胸が慎ましいけど。

 まぁ、可愛いしさ。



「嫌か?」


「……ハッ。その任、慎んでお受けいたします。」



 レイチェルがビシッと敬礼しながら返事を返す。

 うん、真面目だね。

 こんな生真面目な子が俺の近侍になるのか。

 明日から胃に穴が空かないか、不安で堪らないよ。



「そうか、では決定だ。ナルキア、悪いがレイチェルに宿舎の部屋を上手く案内してやってくれ。エーリッヒ、私の席の隣にレイチェルの席を配置するように手配を頼む。」


「はい、畏まりましたわ。」


「ハッ、了解しました。」



 出来ればナルキアには案内させたくなかったんだが、流石に女性用宿舎を男性英雄に案内させるわけにはいかない。

 なので、ナルキアに指示する際に「上手く」と付け加えて言っておく。

 多分ナルキアなら言葉の意味を察して、上手く喧嘩せずに案内してくれるはずだ。


 そしてエーリッヒに席の手配を頼んだのは……まぁ、言っちゃ悪いけど消去法で選んだ結果だな。

 ティトラ君は失言してから若干元気なさそうだし、高柳君には別の仕事を用意する予定だからな。

 ちょっと雑用みたいで悪い気がするけど、クロードなんかは率先して雑用受け入れてくれてるんだから、文句は出ないだろう。


 ……まぁ、アイツは逃げただけなんだが。



「高柳はレイチェルの教育係に任命。秘書の仕事を教えてやってくれ。ティトラはそのまま仕事に戻ってくれ。」


「ハッ、分かりました。」


「はい、分かりました。」




 俺の言葉を聞いた二人は、それぞれ指示された自分の仕事に移っていく。

 どさくさに紛れて高柳君をレイチェルの教育係に任命したんだけど、高柳君は徹頭徹尾ポーカーフェイスを崩さなかったな。

 高柳君の表情筋はどれだけ制御力が高いんだ……。


 まぁ、高柳君には申し訳ないけど、相手がレイチェルでなくとも上手いこと秘書教育が出来そうなのって、高柳君かナルキアしか居ないしな。

 ナルキアを選ばず高柳君を選んだ理由は、ナルキアがレイチェルと相性悪いってのもあるが、ナルキアには既にティトラ君の教育係も頼んであるから負担が大きいという理由もある。


 そう、正当な理由があるのだ。

 なので高柳君よ、すまないが諦めてレイチェルのお世話を頑張ってくれたまへ。


 そしてティトラ君は余ったので、普通に仕事に戻ってもらう。

 あんまり子どものティトラ君をバリバリ働かせるのは、俺の良心が痛いからね。


 ただ、席に戻るティトラ君が若干元気がなさそうに見えたが……。

 やっぱりさっきの失言が結構堪えてるんだろうか?


 まぁ、どうせあとでナルキアが慰めるだろうから別にいいか。

 むしろ俺が慰めたら、ナルキアのティトラ君へのアピールチャンスを奪ってしまって、恨まれそうだし。




 全ての秘書に指示を出し終わった俺は、自分の席へと座った。

 椅子に深く腰掛けた俺は背もたれに身体を預けながら、神様ネットワークの画面を開く。

 神様ネットワークの管理画面では、神様救済同盟宛てだろうメッセージが届いていた。、 だが俺はそれを無視して、全体チャットの画面を開く。


 俺は出した画面を胡乱げな目で見ながら、肺の底に沈んでいた淀んだ空気を吐き出す。

 妙に生暖かい空気が喉と口を温めて、微妙に気持ち悪くなった。

 しかし全てを吐き出したあと、新たに肺に入れた冷たく新鮮な空気は、俺の頭に爽快な気分を与えてくれる。

 そのまま何度か深呼吸を繰り返し、肺の空気を入れ替えていった。




 ……よし、少し落ち着いた。


 うん、今回のガチャは残念だったが、これはこれで思惑通りな部分もあるんだ。

 残り九個の英雄を、全て神様同盟交換用の予備に回すことが出来た。

 これは今回のガチャでの最大の戦果だ。


 なにせ、この取引用予備を上手いこと捌くことが出来たなら。

 今後は、取引用の予備英雄を出すためにガチャをする、という名目を使うことが出来るのだから。


 この名目があれば、上手くやれば特に理由がない時でもガチャが引けるかもしれない。

 もしもそう上手くいかなかったとしても、ガチャで引いた英雄が無駄にならないという前例が作れれば、それだけでガチャを引くのに有利な状況になるのだ。




 ……だから、アレだ。


 狂信者が出たけど、今回のガチャは無駄じゃなかったんだ。

 狂犬が一匹増えたけど、他にも得るものは有ったんだ。


 ……少し貧乳だけど、可愛い女性英雄が増えたんだし、悪くないんだ。

 狂信者で過激派で狂犬で微乳で美人で可愛い女性英雄が増えて……。


 ……うん。



 大変申し訳有りません。

 スランプに陥り筆が一向に進まないので、一旦当作品の更新を停止します。

 暫く間を置いてリフレッシュして、筆が進むようになってから続きを書いていこうと思います。

 更新再開宣言をして一週間と少しでこの結果となってしまい、本当に申し訳ありません。

 何とか煮詰まった頭を冷まして、出来るだけ早く続きを書いて更新したいと思っていますので、また更新を再開した際には宜しくお願いします。


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